学校法人
認定こども園 聖愛幼稚園

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Last Update: 21/04/06

赤鬼からの手紙・・・1978年から1981年までのたった3年間、甲府の中心地に児童書専門店『赤鬼』と いう小さな本屋さんがありました。当時は希少な絵本中心の児童書専門ということで、地元山梨のみならず 全国にファンが広がっていた素敵な本屋さんでした。その後、一男二女の母となった赤鬼は子育ての大事業を 志し、後に東京都練馬区教育委員会の教育委員を務める等、常に母親の立場から目覚ましい活躍をしてきました。 今も文部科学省委託事業『新教育システム開発プログラム』作成に参画して日本国中を東奔西走しています。 赤鬼と小学校以来の幼馴染の私は、3年ほど前から故郷山梨の子どもたちのために絵本の紹介を 書いてくれるようお願いしてきました。やっとこの2007年5月から毎月お手紙をもらえることになりました。 赤鬼おススメの絵本は、聖愛幼稚園の子育て支援センター『あんぱんくらぶ』の本棚でいつでもご覧いただけます。 なんたって『赤鬼からの手紙』です。どうぞ、お楽しみに。(園長 鈴木)




赤鬼からの手紙(2021年4月号)



『 クマとこぐまのコンサート 』

作 デイビッド・リッチフィールド
訳 俵 万智

ポプラ社

   暖かな陽射しが眩しく感じられるようになってきました。 1年で一番輝かしい季節の到来です。 硬い蕾もほころんで様々な花々が咲き誇り、木々の緑は新しい芽吹きを迎えています。 どんなことがあろうと、いつものように春を告げる美しさは格別です。 自由に友達と会っておしゃべりができなくても、大きな声で一緒に歌うことが出来なくても、春を伝えてくれるものは沢山あります。 うぐいすやひばりなど、春告げ鳥も賑やかになっています。 そんなさえずりに耳を澄ませていると・・・どこからか不思議な音色が聞こえて来ました。 これはピアノかしら・・・でもピアノだけではなさそうです・・・

 クマのブラウンは、小さいときからピアノがだいすき。大スターになって、なかまと世界中を回りコンサート、夢のような日々がすぎていきました。
 けれど時はながれ、ブラウンはとしをとりました。観客は、だんだん少なくなり、とうとうだれも拍手してくれなくなりました。もう、しおどきです。ブラウンは森へ帰ることにしました。かがやかしい日々を思い出し、街がなつかしくなることもありました。そんなとき、こぐまがやってきたのです。パパになったブラウンは、こぐまといつもいっしょです。なかなかおてんばさんのこぐま、ブラウンはついていくのがやっとです。
 ある日こぐまは、森でへんてこなものをみつけました。それはピアノ。ポスターやCDを見て、パパが街で活やくしていたことを知りました。
「もうピアノひかないの?」ときくと、パパは、とたんにかなしい顔になりました。
「おいで。もう忘れてしまいたいんだ」
こぐまは、パパの活やくを知って、とてもほこらしく思いました。そして、パパのつらそうなようすを思いだすと、いてもたってもいられません。こぐまはひらめきました。
「そうだ、このバイオリンひきのヒューゴさんを森に招待しよう。」さっそく手紙をかきましたが、なかなか返事がきません。こぐまは待ちつづけました。もっと、もっと日がたって、こぐまが、とうとうあきらめていた、ある朝のことです。森の奥から、これまで耳にしたことのないなにかがきこえてきました。
「これはなに?」こぐまはパパといっしょに音に近づいていきました。
「音楽だよ。ああ、なんてすばらしい」
奥へ進むほど、音楽はにぎやかになっていきました。
そこでふたりが目にしたものは、なんだったでしょう。
 あつまったのは、ブラウン楽団で夢をかなえた動物たち。ブラウンはピアノに近づくと、なつかしい鍵盤にそっとふれました。やっぱり、ぼくは、ひきたかったんだ!
こぐまのコンサートは、最高でした。たった一晩の奇跡です。
この日の音楽は、いつまでもみんなの心のおみやげになりました。


   久しぶりに立ち寄った書店でこの絵本に出会いました。「クマと森のピアノ」シリーズの最新版、とありました。前作はまだ手に取ったこともなかったのですが、この最新作の見開きを見ただけで、この絵本の中身が見えてきたように思いました。手に入れてゆっくりと読み返し、眺めているうちに、ぜひ皆さんに紹介したいという思いがわいてきました。

   描かれた作者にとっては、初の絵本作品シリーズだそうです。訳は歌人の俵万智さん。 俵さんの作品は、歌人としての歌集のみならず、絵本の翻訳としても、何度か出会いがありますが、俵さんは翻訳するうえでの心持をこんな風に語っておられます。

   「私はプロの翻訳家ではないので、まず自分自身が読者としてその作品に愛情を持てるかどうかが、すごく大事で。そういう気持ちがあればこそ、この絵本を日本の子どもたちにも日本語で届けたい気持ちになれると思うんです。あと、読む人は原文の英語と日本語を見比べるわけではありません。私が訳した日本語を通して世界観が伝わるように、日本語として美しく心地よい言葉でありたいな、と常に思っています。絵をじゃましたり、絵を説明することは、したくないなと思います。絵に語ってもらって、それを言葉でアシストしていく感じで。言葉の使い手としては、制約があればあるほど燃えるというか(笑)、やりがいがあって楽しいですね。」(withnewsより引用)何度も読んでいると、俵さんの選び抜いた一つ一つの言葉にその思いが伝わってきます。

   また、この絵本の中で興味深いことは、クマとこぐまの関係を新しい家族の関わり合いとして表しています。パパとしてこぐまに寄り添うブラウンと、そのパパを喜ばせようとする、こぐまの気持ちのやり取りが描かれ、互いに相手を思いやり、支え合うことの大切さを教えてくれています。多種多様な世界を認め合い、分かち合う思いが流れています。

   そして、ふたりを囲み、みんなを繋ぐのが音楽だということに気づかされます。 どんな困難な状況であろうと、素敵な音楽を共有できる場に”繋がり”が生まれていることを伝えてくれる大事な一冊です。

(赤鬼こと山ア祐美子)


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赤鬼からの手紙(2021年3月号)



『太陽をかこう』

ブルーノ・ムナーリ 著
須 賀 敦 子  訳

至 光 社

   「三寒四温」の言葉通りに、ぽかぽかの暖かい日が続いたと思うと、きゅっと冷たい北風が吹いたりしています。こんな日々を何度か過ごしながら、本当の春がやって来ます。もわっとした空気が漂うと、温かい陽射しが辺りを包み、お日様もなんだか笑っているようです。人の知恵は火星にまでたどり着く時代がやって来ました。宇宙の秘密がまた、少し解き明かされるかもしれません。でもそんななかでも、人間にとって一番のエネルギーの源は、やはり太陽です。私たちを包んでくれる光に感謝しながら、太陽を思い描いてみませんか?

風がやさしくふくと、雲はゆっくりとうごいて、空にすきまができる。
太陽がでてきて、あたたかくなる。
ちいさな このくろい点が地球、このうえに、みんながすんでいる。
わたしたちの地球から、太陽がみえないとき、それは、宇宙にぽつんとうかんだ地球の、むこうがわを太陽がてらしているときだ。
朝はやく、太陽が地平線にのぼってくると、いちめん、バラ色になる。
太陽がしずむとき、空はミカン色。
霧のなかの太陽は、しろっぽい。灰いろの空に、あながあいたみたいだ。
スモッグがひどいと、太陽はほとんどみえなくなる。
たまに、月が太陽にかぶさってしまうことがある。
宇宙飛行士がとんでいく、くらい宇宙では、太陽のほのおは、こんなにおおきくみえる。
太陽のほのおのなかには、黒点というしみがある。
それでは、芸術家の太陽はどんなか。
アルトゥーロ・トレド・ピサ、アンドレ・マッソン、ミロ、勅使河原蒼風、
アントニオ・フラスコ―ニ、デルコッサ、ロバート・サリバン、トム・ウォルセイ、
むかしの版画、夕日の写真、日本のはた、原始人がのこした太陽のしるし、
太陽はどうかけばいいのか。
テンペラとふで、パステル、ゆびでかく、クレヨン、フェルトペン、てんてんでかく、
太陽のかきかたはいくつあるか。
ボールペンでもよいか、はりがみはどうか。きいろとあかのパステルはどうだろうか。
おとなしそうな太陽も、つよそうな太陽もある。
3月のやさしい太陽。7月のあらあらしい太陽。
たいていのこどもは、山のむこうにしずむ太陽をかくけれど、
太陽はほかのばしょにもしずむよ。まちの太陽は、ビルや工場のうしろにしずむ。
木のむこうにもしずむ。くさのむこうに日がしずむ。ブラインドのむこうにしずむ太陽。
画家たちも、じつにいろいろな太陽をかいているけれど、ほんとうは、きみのすきなようにするのが、いい。
ミカンのわぎりだって、いいじゃないか。

   ブルーノ・ムナーリ!! 閉店間近の古本屋さんで出会った絵本です。思わず手が伸びました。原本よりも高値になっていたけれど、これは店主の思いが込められていると思い、手に入れました。「ポラン書房」という名前の付いた古本屋さんの棚には宮沢賢治作品をはじめ、厳選された本たちがところ狭しと並んでいました。「太陽をかこう」は、店の看板の下にあるガラス戸の棚に一冊だけ表紙を道路側に向けて飾られていました。見つけたことがなんだかうれしくて、レジに向かうと、老婦人が眼鏡の奥から「あっ」と小さく声を漏らして、こちらを見上げました。「ムナーリ…ね、、、」買い主を確認するようにじっくり見てから、電卓を打ち始めていました。婦人のこの絵本への思いが伝わりました。手に入れてよかった・・・。

   ムナーリの絵本の入り口は、わが子への思いからでした。第二次大戦後の混乱期に息子のために数冊の仕掛け絵本を作りました。アート作家としても様々な顔を持つ彼は、スイミーでお馴染みのレオ・レオニとも深い交流を持っていたそうです。その繋がりによるものなのかもしれませんが、レオニ絵本翻訳の谷川俊太郎さんが文章を描いた作品もあります。ムナーリは日本の伝統的な美意識にもひかれ、しばしば来日したようです。日本の代表的な作曲家、武満徹とも親交を深めていました。武満はムナーリから贈られたオブジェをモチーフにして、「ムナーリ・バイ・ムナーリ」を作曲しました。作品との出会いは多くの翼をもって広がっていきます。ここに紹介した一文は、ほんの少しです。翻訳された須賀敦子さんの言葉も巧みな表現でムナーリの"描く"と言うことを的確に伝えています。「太陽をかこう」をながめていると、勝手に頭の中でいろんな太陽が浮かんできます。さて、あなたも描いてみませんか?あなたの心の中にある太陽を・・・。

(赤鬼こと山ア祐美子)

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赤鬼からの手紙(2021年2月号)



『 鬼 学 』

松岡 義和 著

今人舎


   今年もこの季節がやって来ました。去年のこの時期を思い返すと、”コロナウイルス”という言葉を耳にすることが多くなってきたなあ、気をつけなくては・・・と感じるくらいでした。 そんな日々から1年、世界は一変してしまいました。 マスクをつけなければ外出はできません。 手洗いや消毒をかかさず行います。 友達と普通に話したり、飲んだり食べたり、一緒に遊んだり、運動したり、歌うことも、自由にはできなくなってしまいました。 これからいったいどうなってしまうのでしょうか・・・不安は尽きません。

   こんな日々の人間たちを、鬼たちはどんな風に眺めているんでしょうか・・・。

鬼はどこにいるのか?鬼のすみかは?鬼は何を食べているのか?
鬼は恐ろしいものなのか?

昔話に出てくる鬼 「桃太郎」「一寸法師」「酒呑童子」
鬼の出番     「年越しに現れる鬼」「節分」「お盆」
百鬼夜行     「恐ろしい集団」
春をよぶ鬼    「鬼剣舞」「奥三河の花まつり」「弘前の鬼神社」
         「なまはげ」「修生鬼絵」
鬼の服装     「パンツのなぞ」「鬼門」
鬼のすみか    「盗賊の鬼のすみか」「鬼ヶ城」「鬼ノ城」
         「神さまの鬼のすみか」
鬼の食事     「鬼の実図鑑」
鬼の製鉄
鬼の学校     「鬼文字」「鬼ごっこ」「絵描きうた」
絵本のなかの鬼  「鬼の図書室」
天をかける鬼   「鬼子母神」
風神と雷神
鬼の呪宝     「死活棒」「打ち出の小槌」「空を飛ぶ鞭」
         「隠れ蓑に隠れ笠」「川を渡る金の靴」
大津絵の鬼
鬼学ノート    「鬼のつく言葉」「鬼のつく語句」
鬼の祭り
鬼文字の読み方

鬼の後ろには人間がいる。鬼の向こうに歴史が見える。

   2020年「鬼滅の刃」という漫画が空前の大ヒットとなり、アニメが映画となって、興行成績もあのジブリ作品を抜いたという話題が世間を賑わせました。 私自身は、漫画もTVアニメも映画も見ていないのですが、、、にわかに鬼ブーム?!という噂に聞き捨てならない気分になりました。 あれよあれよのままに「鬼学」という題名をつけた絵本に出会いました。

   絵本冒頭にある「鬼学発刊にあたって」との記述にドキリとしました。 なんと、作者の松岡義和さんが、”なんでも学オロジーズシリーズ”を手掛ける今人舎に出版をお願いしたいという手紙を出したと記されていました。 編集者の想いと共に、その手紙文まで添付されていました。 出版界では、なかなか実現されるには珍しいことだったかもしれませんが、この出版社ならではの流れだったのかもしれません。 担当編集の女性は、松岡さんが記した「鬼文字」の解読に興味をそそられたとか・・・作者と編集者の熱意が形になった絵本です。 美術教師も歴任されたという松岡さんの描く鬼たちは、愛嬌のある温かさを感じます。 様々な分野に広げられた鬼の探求も身近なものから芸術の域に達する内容まで豊かに伝わってきます。 もちろん、日本中には私の知る限りでも、もっとたくさんの鬼についての記述はあるでしょうが、鬼を知る入り口として楽しめるものになっています。

   未曽有の危機に見舞われて弱っている人間たちのこの世界に、もしかしたら、鬼たちが手を差し伸べてくれるかもしれません。

(赤鬼こと山ア祐美子)

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