学校法人
認定こども園 聖愛幼稚園

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Last Update: 20/07/12

赤鬼からの手紙・・・1978年から1981年までのたった3年間、甲府の中心地に児童書専門店『赤鬼』と いう小さな本屋さんがありました。当時は希少な絵本中心の児童書専門ということで、地元山梨のみならず 全国にファンが広がっていた素敵な本屋さんでした。その後、一男二女の母となった赤鬼は子育ての大事業を 志し、後に東京都練馬区教育委員会の教育委員を務める等、常に母親の立場から目覚ましい活躍をしてきました。 今も文部科学省委託事業『新教育システム開発プログラム』作成に参画して日本国中を東奔西走しています。 赤鬼と小学校以来の幼馴染の私は、3年ほど前から故郷山梨の子どもたちのために絵本の紹介を 書いてくれるようお願いしてきました。やっとこの2007年5月から毎月お手紙をもらえることになりました。 赤鬼おススメの絵本は、聖愛幼稚園の子育て支援センター『あんぱんくらぶ』の本棚でいつでもご覧いただけます。 なんたって『赤鬼からの手紙』です。どうぞ、お楽しみに。(園長 鈴木)




赤鬼からの手紙(2020年7月号)



『 よだかの星 』

宮澤賢治 作
工藤甲人 絵

福武書店

   だんだん熱気を帯びた空気が辺りを包み始めました。夏本番です。 いつもとは違う夏になるかもしれませんが、季節は当たり前の様に巡ってきます。 入道雲はもくもくと立ち上り、ひまわりもぐんぐん伸びてきます。 そうそう、朝顔も色とりどりの姿を見せてくれます。 まわりを見回すと、季節の変わり目を教えてくれるものがたくさんあります。 うっかりしているのと見そびれてしまうかもしれませんね。

   7月は星を思う季節でもあります、今回は悲しく美しい星の話をしましょう。

よだかは、実にみにくい鳥です。
ところどころに味噌をつけたような顔、くちばしは耳までさけています。
ほかの鳥は、よだかをみただけでいやになってしまう、というありさま。
よだかは、鷹といっても本当は鷹の兄弟でも親類ではありません。
それでも、鳴き声が鋭くて、風を切って翔けるところは鷹に似ているためなのか、鷹は、それが気に入らず、名前をあらためろとよだかにいうのです。
神さまが下さった名前なのだからと訴えますが、鷹は
「おれがいい名を教えてやろう。市蔵とな。首へ市蔵と名札をぶらさげて、私は以来市蔵と申しますと、口上を言って、みんなの所をおじぎしてまわるのだ。 そうしなかったら、つかみ殺してしまうから、そうおもえ。」
「そんなことはとてもできません。そんなことをする位なら、私はもう死んだ方がましです。いますぐ殺してください」
よだかは口を大きくひらいて、はねをまっすぐに張って、矢のように空を横切りました。
ちいさな羽虫が幾匹も幾匹もその咽喉に入りました。
一匹の甲虫が、咽喉にはいって、ひどくもがきました。
よだかはそれを呑み込みましたが、何だか背中がぞっとしたように思いました。
(ああ、かぶとむしや、たくさんの羽虫が、毎晩僕に殺される。そしてそのただ一つの僕がこんどは鷹に殺される。それがこんなにつらいのだ。ああ、つらい、つらい。僕はもう虫を食べないで飢えて死のう。いやその前にもう鷹が僕を殺すだろう。いや、その前に、僕は遠くの遠くの空の向こうに行ってしまおう。)
よだかは、弟の川せみに、遠くへ行くから、もうあわない、はちすずめにもよろしくと、わかれのあいさつをしました。
霧がはれて、お日さまが上りました。よだかは、お日さまに向かって矢のように飛んで行きました。
「お日さん、お日さん。どうぞ私をあなたの所へ連れていってください。」
「お前はよだかだな。なるほど、ずいぶんつらかろう。星にそうたのんでごらん。お前はひるの鳥ではないのだからな。」
よだかは、思い切って西のそらのあの美しいオリオンの星の方に、まっすぐに飛びながら叫びました。
「お星さん。どうか私をあなたのところへ連れていってください。やけて死んでもかまいません。」
オリオンは相手にしません。南の大犬座、北の大熊星、天の川の向こう岸の鷲の星にもお願いしました。
「いいや、とてもとても、星になるにはそれ相応の身分でなくちゃいかん。またよほど金もいるのだ。」
よだかは、すっかり力を落としてしまいましたが、キシキシキシキシキシッと叫ぶと、どこまでもどこまでも、まっすぐに空にのぼって行きました。
よだかは、自分のからだがいま燐の火のような青い美しい光になって燃えているのを見ました。
そして、よだかの星は燃え続けました。今でもまだ燃えています。

   宮澤賢治の代表作です。私にとっても賢治作品の中でも最も好きな作品です。 童話としての読み物ですが、絵本の形になっているものもたくさんあります。 どれをといっても選べないくらい多くの画家によって表現されています。 この題材が画家の表現にどれほど刺激を与えるものかがよく伝わります。 冒頭の「よだかは、じつにみにくい鳥です」の言葉の強さから、よだかという鳥をどう表すのかが画家の腕の見せ所かもしれません。 この絵本では、全体的には淡い色調で描かれ、よだかを醜いというよりは可愛らしい鳥に見せてくれています。 画家のよだかに対する愛情を感じます。

   もって生まれてきた姿は自分ではどうにもならないことです。 それを理不尽にもまわりから疎まれてしまう、その悲しみを抱えながらも、自分は自分の命を長らえるために虫たちを食べてしまう、よだかの辛さもどうにもならないことです。 ふと気が付くと私たちのまわりにもこんなことは沢山あるように思います。

   今世界はウイルスの脅威にさらされて、社会は人と人とが分断されねばならない状態を継続しています。 悲しみや不安や苦しみの中にあります。 でも、こういう中で大事なことは、人の気持ちは分断してはならない、ともに繋がる方法を考えねばならないということの様に思います。 よだかは星になってしまったけれど、どうしたら、よだかに寄り添うことが出来ただろうかと、読むたびに考えます。

   こんな時だからこそ、大事な人のことを思いつつ、そばにいるよって声をかけてみませんか。

(赤鬼こと山ア祐美子)


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赤鬼からの手紙(2020年6月号)



『 か さ 』

作・絵/太田大八


文研出版


   6月になりました。入園式や入学式だけで、幼稚園、学校に行かれなかったお友達もたくさんいたと思います。ステイホームと言われて、家に居なければなりませんでした。でも、やっと、待ちに待った幼稚園、学校に行かれるようになりました。まだまだ心配なことや、気をつけなければならないこともありますが、一人一人が約束を守って、家族や先生、友達と相談して協力しながら過ごしていきましょう。あたりを見回すと、葉っぱの緑も深く濃くなっています。知らないうちに雨の季節もやって来そうですね…もしかしたら、あっという間に傘の出番がくるかもしれません。

   黒い傘の中に真っ赤な傘が一つだけ、これがこの絵本の表紙の絵です。 文字はひとつもありません。真っ赤な傘だけが目に飛び込んできます。 降りしきる雨の中を赤い傘をさした女の子が歩いています。手には、長くて黒い傘を持っています。 どこへ行くのでしょうか・・・

公園のそばを通ったり、お友達にあったり、犬に雨のしぶきをかけられたり、ケーキ屋さんのウインドウをのぞいたり、、、歩道橋もわたります。
あっ、お人形・・・信号待ちをします。
雨はなかなかやまないようです、、、赤い傘が向かうのは・・・

   この絵本について、太田さんはこう語っています。
「絵本作家となってしばらくは絵のみを描いていましたが、70年代に入って作絵の両方を手がける作品を出すようになりました。 『かさ』はそんな初期の作品です。 大人用の黒い傘の中を女の子の赤い傘が動いていく、というイメージ。それが最初にありました。 レオ・レオニの『あおくんときいろちゃん』ってあるでしょう。 ほとんど色が使われていない、ああいう本を作りたかった。 それで色数を抑えたんです。絵だけで文字のない作品です。 子どもが自分で絵本を見て、何かを発見する、自分で物語を作る。 そういう意図があったんですよ。絵本を作る側は言葉をしゃべらず、子どもの言葉を待つということです。」
主人公の女の子のモデルは太田さんの娘さんだそうです。
実際に駅まで迎えてきてくれた思い出が形になりました。

   絵本について語る太田さんの言葉にある〜子どもの言葉を待つ〜ということが、とても印象に残りました。 この絵本は年齢問わずに人気があります。主人公は女の子ですが、案外男の子も好きなのです。 繰り返し繰り返しせがまれる一冊でもあり、一人でも、親子でも、友達同士でも、読み聞かせをしても、いろんな読み方ができる普遍的な可能性を持っています。 一人一人にとっての大事な傘になることが太田さんにはわかっていたのでしょうね。

   「いい絵本で感動することこそ子供を育てる最良の薬」という持論のもとに、太田さんが立ち上げられたのが「こどもの本WAVE」という活動です。

〜絵本というのは、広げていかないと意味がない、と思っているんです。絵本は、せっかくの子どもの文化でしょう。ではどうするか、と考えて、2003年に「こどもの本WAVE」という活動を始めました。立ち上げの際には、「子どもの本の好きな人たちが手に手を取って大きな波を起こそう」と呼びかけました。絵本とは、コミュニケーションです。描きっぱなし、本屋に置きっぱなしではしょうがない。それだけではものたりないから、もっと積極的に本をすすめたいと思ってるんですよ〜

   太田さんは名誉会長としても活躍されていました。2016年8月にご逝去されましたが、活動は今も継続され、様々な発信をされています。

   思いもよらないことが起きて、今世界中は命を守るために手を結ぼうとしています。 ことに子供たちの安全は大人が守らねばなりません。 肉体的な安全は言うまでもないことですが、こんな未曽有な状況を乗り越えるためには子供たちの心を守らねばと思います。 絵本一冊も子供たちに寄り添うことが出来ると信じています。太田さんからの大事な薬をお届けします。

(赤鬼こと山ア祐美子)


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赤鬼からの手紙(2020年5月号)



『パナンぺ ペナンペ むかしがたり』

中村欣一・作
西山三郎・絵

童 心 社


   今、世界は未曽有の出来事に見舞われています。ウイルス感染が世界中に広まって、日本もたくさんの感染者が増大しつつあります。亡くなってしまう方も増えてきました。誰も予想できなかったことが起きて日々の生活が変わってしまいました。不安や戸惑いに囲まれる日々ですが、自分達のできることを精一杯頑張って、みんなで乗り越えていきましょう。

   こんな時こそ、ちょっと変わったこんな絵本はいかがですか。今まで知らなかった人にであえるかもしれません。

アイヌモシリとは 人間らしい人間のくに。アイヌの自由な天地のことだ。 そのゆたかなくにに、パナンぺとペナンぺという、ふたりのじいさまがすんでいた。 パナンぺは川下のもの、ペナンぺは川上のものといういみだ。 ふたりともに おなじアイヌだ。

あるひ、パナンぺじいさんは、かわへ さかなを とりにでかけた。「かわのかみさま、これから、わしはサケをとらせていただきます」といのりを ささげると みるまに かごは サケでいっぱいになった。すると、どこからか やせこけたいぬが あらわれて キュンキュンとないたので、まるまるとふとったサケをいっぴき、わけてあげた。
パナンぺが かえろうとあるきだすと、金と銀のこいぬが とびだしてきた。こいぬのあとをついていくと、大きないえがあらわれた。「よく、おいでくだされた。ここは、いぬのむら。それがしは、いぬのむらのエカシでござる」サケをあげた いぬは このむらおさの むすめだった。「さあ、みなのしゅう、うたげじゃ、おどりじゃ」みたこともない ごちそうがならび、おおぜいいのむらびとたちが、うたいおどってくれた。パナンぺは銀のこいぬを おみやげにもらった。〜アンナホーレ ホレホレ おわかれはつらいけど また おめにかかります〜いえにかえると、こいぬは〜わたしの あたま 三どたたいて ヒオーイオイ〜と、うたった。「おや、まあ」ばあさまが やさしく ゆびで ポンポンポンと、たたくと…みごとな かたなにかわって、へやには、たくさんのたからものが、かがやいている。これをかくれてみていたペナンぺが、いえにとびこんできた。
「おめえばかりが いいめにあうとは、きにいらねえ」と、おおごえでどなると、ペナンぺは とぐちに おしっこをひかけて、パナンぺからきいたとおりに、かわへと はしった。やっとこさ、サケをとって、「これでもくらえ」とサケのしっぽをちょんぎって、あらわれたやせこけたいぬに、なげてやった。にげるこいぬをおいかけ、いぬのむらのいえまでくると「くうものをくい、もらうものをもらわねば、かえるわけにはゆかねえ!」ペナンぺは、てあたりしだい ごちそうをくいあらし、しこたま さけをのみまくった。いやがるこいぬを ひきずってかえると、ばあさまが、まきのぼうで こいぬのあたまをぶちのめした。
とたんに、ガラガラドシン!ペナンぺとばあさまは、いぬのくそや、たべかすや、ちりや、あくたのごみのやまに、ずっぽり くびまでうまっておったと。

いまいる人びとよ、いかなるものにも れいぎただしく まことをつくさねばならぬ

   「ウポポイ」という言葉を知っていますか?アイヌ語で「みんなで歌う」という言葉だそうです。 アイヌ民族とは、元々北海道にいた先住民族です。 「ウポポイ」の愛称がついた施設が北海道で4月にオープン予定でしたが、5月末に延期になりました。 正式名称は、「民族共生象徴空間」といいます。 アイヌの文化を国内外に紹介する拠点として国が整備を進めてきた施設です。 この話もアイヌ民族に伝わる民話の一つです。 伝え方は口承で語り継がれてきました。 「ウポポイ」の施設の中にも、民話のみならず音楽や風習、食べ物など様々なものが伝えられているそうです。

   絵本「パナンぺ ペナンぺ」には、一冊の中に二つのお話がつながって描かれています。 今回は前半部分をご紹介しています。 後半部分のお話も二人のじいさんが巻き起こすことは、それぞれ面白くて愉しくて、くさ〜〜いおならもでてきます。 こんな風に、放屁や大便にちなむ笑い話はアイヌ独特のものではなく、日本を含む東アジアに似たようなお話がたくさんあるようです。 話のところどころに、いかにも口伝えで歌われたような言葉がでてきますので、調子をつけながら読み進めると、より味わいがあります。 裏表紙には、譜面もありますので、楽器のできる方は是非奏でてみてほしいですね。

   パナンぺ、ペナンぺにまつわるお話は、滑稽話が多いのですが、実は人間の祖のように表現されるお話もあるそうです。この絵本の最後には,こんな言葉が書かれています。

パナンぺもアイヌ、ペナンぺもアイヌ、たったパとペのちがいだけ。
ふたりはともに、おなじ、アイヌだ。
ゆたかで、自由な、アイヌモシリの、
ほこりたかい人間なのだ。


(*残念ながら、現在絶版中です、図書館等でぜひ出会ってください)

(赤鬼こと山ア祐美子)

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