学校法人
認定こども園 聖愛幼稚園

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Last Update: 18/06/14

赤鬼からの手紙・・・1978年から1981年までのたった3年間、甲府の中心地に児童書専門店『赤鬼』と いう小さな本屋さんがありました。当時は希少な絵本中心の児童書専門ということで、地元山梨のみならず 全国にファンが広がっていた素敵な本屋さんでした。その後、一男二女の母となった赤鬼は子育ての大事業を 志し、後に東京都練馬区教育委員会の教育委員を務める等、常に母親の立場から目覚ましい活躍をしてきました。 今も文部科学省委託事業『新教育システム開発プログラム』作成に参画して日本国中を東奔西走しています。 赤鬼と小学校以来の幼馴染の私は、3年ほど前から故郷山梨の子どもたちのために絵本の紹介を 書いてくれるようお願いしてきました。やっとこの2007年5月から毎月お手紙をもらえることになりました。 赤鬼おススメの絵本は、聖愛幼稚園の子育て支援センター『あんぱんくらぶ』の本棚でいつでもご覧いただけます。 なんたって『赤鬼からの手紙』です。どうぞ、お楽しみに。(園長 鈴木)




赤鬼からの手紙(2018年6月号)



『だむの おじさんたち』

加古里子 さく・え

ブッキング


   今年の梅雨いりは、いつごろになるでしょうか。南の地方では、すでに雨の季節になっているかもしれませんね。四季折々の中でも、この梅雨の季節は少しうっとおしくも感じますが、自然界にとっては、成長を助ける大事な命の水です。ところが時として、多すぎる雨に見舞われることがあります。まるで津波の様に、道路にも水があふれたり、山が崩れて土砂となり、家も人の命までも飲み込んでしまうことがあります。このように水の力はとても大きいのです。この水の力を利用した施設がダムです。私たちの周りにはたくさんのダムがあります。そのダムがどうやって作られたかを、このおじさんたちに聞いてみましょう。

やまおくの たにがわを、おじさんたちがのぼっていきます。
「なんだ、なにしてるんだ?」やまのけものやとりたちが、しんぱいそうにみています。
そのおじさんたちは、はつでんしょをつくるためにしらべていたのです。かわのみずをせきとめて、だむをつくることになりました。

だんぷとらっく、ぶるとーざー、ぱわーしょべる、こんくりーとみきさーしゃ、くれーんとらっく、いろんなくるまがやってきます。ひやけしたおじさん、はちまきのおにいさん、がっしりしたおじさん、せいたかのっぽのおにいさん、たくさんのひとがきて、いよいよこうじがはじまりました。おひるやすみには、たくわんをかじるおじさん、ひるねをするおじさん、はーもにかをふいているおにいさん、てがみをかいているおにいさんもいます。こうじは よるもひるも、こうたいでつづきます。
「おつかれさん」「あと、たのんます」「ごくろうさん」
やまのけものが ねているあいだもよなかも おじさんたちは ねむらない。おきています。うごいています。はたらいています。
だだだだだだ がらがらがら ういんういん こんくりーとがつぎからつぎへとはこばれてきます。ぴぴいー ぴいっ ふえとてで あいずしながら おじさんたちはすこしずつ だむをつくっていきます。こうじは なんねんも なつもふゆもつづきます。「おーい、えらくふってきたぞ」「すべって おちたら いのちがないぞ」おじさんたちのことばはらんぼうでこわいです。
「くにのおっかさん、なかせないように きをつけろ」―――でも、やさしいです。ゆきにもかぜにも、ふぶきにも、あらしにも、はたらくおじさんたちは まけません。

とうとう、だむができました。おじさんは、じっとだむをみています。おじさんはわらっています。ばんざーい、だむのおじさんたち!


   2018年5月2日 加古里子さんが天に召されてしまいました。この場でも加古さんの絵本を紹介してきました。本当に残念でなりません。今回は膨大な加古さんの絵本の中から、記念すべきデビュー作品をご紹介します。

   「だむのおじさんたち」は1959年「こどものとも」で発表されました。絶版になってから、2007年に復刊されました。再刊に向けての加古さんからのメッセージです。
「この絵本は、工場の研究所勤務の昭和30年代、休日は工員住宅の中の子ども舎の世話をしていた私が、福音館書店編集長の松居さんの依頼ではじめて描いた作品。時代にふさわしいものという大きなテーマなので、停電が頻発する当時ゆえ、水力発電のダム建設を題材とした。半世紀を経て、絶版だった本書が再刊されるに当り、種々の感慨と共に、この安定完成された水力発電の建設技術が、再び政治とカネに乱されぬよう希求している所である。」


   加古さんの工学博士、技術士という肩書や、研究所勤務という経験から、多くの取材を経てダムがどのように作られ、人々に役立つものかを伝えてくれました。絵本の中身は、そんなお堅い感じとは全く違っていて、どのページも細やかな加古さんの絵が踊っています。働く車たちの動きが細密に描かれ、工事には動物たちも参加しています。生き生きと楽しそうに手伝う動物たちが微笑ましくて、おもわずにっこりしてしまいます。一方おじさんやお兄さんたちの働く姿、昼休みの様子まで伝わってきて、当時の雰囲気が目に浮かんできます。最後のページのおじさんの表情でダム完成の苦労と喜びが湧き上がります。そして、だむのおじさんたちへの加古さんの愛情と温かな敬意が溢れています。

   復刊絵本への思いを語る最後に、加古さんはこう結びました。2007年のことです。
「原子力発電の絵本は何度もオファーをいただいたが、納得できる数字の根拠を用意してもらえなかったので、全て断りました。」

   子どもの日を前に天に昇られた加古さん、 雲の上のかみなりちゃんには、もう会えましたか?

(赤鬼こと山ア祐美子)


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赤鬼からの手紙(2018年5月号)



『ボイジャーくん』

作 遠藤賢司
絵 荒井良二

白水社


   急に気温が上がったり、ちょっと肌寒かったり、でも確実にあたりの緑は鮮やかになっています。 太陽がやけに眩しく、刺す光が白く感じられるのもこの季節ですね。 ”爽やか”という言葉がぴったりな毎日がきました。太陽が昇ったら外に出てみましょう。 今まで気づかない花々や鳥のさえずりにも出会うことがあるかもしれません。 そして、日が落ちて夜になったら、空を見上げてみましょう。 もしかしたら、私たちの知らないところで、宇宙の内緒話が聞こえるかもしれませんよ。

きみが とてもかなしくて ねむれない夜には
目をとじて じっと胸のおくを すましてごらん
そしたら ぼくのよぶ声  ホラネ きこえてくるだろう?

やあ、ぼくはボイジャーくんだよ
ほんとうのなまえは  ソウ・・・・・・
「太陽系惑星探査宇宙船 ボイジャーくん」っていうんだよ

どうしたんだい いっしょに ならんで およごうよ
宇宙の海を 犬かきおよぎ

ひとりぼっちのこの海は どんなにさけんでも
こだまは ドンドン 遠ざかる
宇宙の波は 大波小波

エッ ぼくのはなしを 絵本にしたいって!
はりきって ドンドン はなしちゃうぞ

「ボイジャーくん」 遠藤賢司&荒井良二

   不覚にも、私はこの絵本に出会う機会を逸していました。 今月号の絵本選びをしながら、ふとある日の新聞記事に目が留まり、この絵本にたどり着きました。 ”たからもの”というコラムの記事で、〜荒井良二さん「エンケン」さんのハーモニカホルダー〜という内容でした。

   荒井良二さんはリンドグレーン記念文学賞を日本人で初めて受賞なさったという力のある絵本作家です。 子どもたちの目線から描く独特の絵の世界が豊かな気持ちにさせてくれます。 「エンケン」さんは、個性派シンガーソングライターの遠藤賢司さん。 昨年10月25日に70歳で旅立たれてしまったばかりです。 自分の世界を「純音楽」と称して様々な活動をしていました。 今も「エンケンさん」を慕い、目標にする若者も少なくありません。 この二人がタッグを組んだ絵本ができていたのを知って、居ても立っても居られない気持ちになりました。

   記事の中で、荒井さんは「全身全霊をかけて音楽と対峙する姿に、自分の絵本や創作活動に通じるものがある」と語っています。 そして、忘れられないライブ、2008年9月3日、吉祥寺で行われた絵本出版記念イベントでのこと、遠藤さんがギターとハーモニカで熱唱する後ろで絵を描いた荒井さん。 「エンケンさんはいつも通り真剣そのもの。生半可な気持ちじゃいけないと必死でした」と語る。 ライブ終了後に、首にかけていたハーモニカホルダーを外すと「これあげるよ」とエンケンさんが手渡してくれたそうです。 中学生の頃からのファンだった荒井さんにとって、それが”たからもの”になった、という内容でした。

   絵本「ボイジャーくん」についているCDを聴きながら、ページをめくると、「エンケンさん」の囁くような、呟くような声がほんとに宇宙からの呼び声のように聞こえてきて、その浮遊感が絵本の中に溶け込んでいくような気持になります。 あの絶叫するようなロックの声の人がこんなにも優しくこんなにも温かく呼びかけてくれる、一人じゃないんだって思えて、なんだか涙が出てきました。 荒井さんの絵は、エンケンさんの詩の世界を見事に描き切っています。 遥かに笑顔のボイジャーくんがぐるぐるしている、今もどこかにいてこちらに話しかけていてくれる、幼ければ幼いほど、この中に入り込むことが出来るでしょう。

   出版社の白泉社から「遠藤さんが作った曲を絵本にしたい」との依頼で出会った二人、その出会いは私たちに大きな”たからもの”を届けてくれました。

(赤鬼こと山ア祐美子)

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赤鬼からの手紙(2018年4月号)



『ふうと はなと たんぽぽ』

いわむらかずお
童心社

   あんなに厳しい寒さの冬が一気に去ってしまいました。 何もかもが輝いて新しい命がたくさん生まれる季節です。 鮮やかな緑の木々の陰で鳥のさえずりが聞こえてきます。 色とりどりの花々のまわりには、蝶たちが舞い踊っています。 春の訪れは、私たちだけでなく生き物たちすべてにとっての喜びです。 そうっと、野原をのぞいてみましょう、 きっと、小さな生き物たちのお喋りが聞こえてきますよ。

「のはらで あそんでくる」 ふうと はなが いいました。
「きをつけて、だれかが きたら、くさのかげで じっとしているんだよ」と おかあさんがいいました。のはらには、あおいそらが ひろがっていました。
きいろい はなが、さいていました。
「こんにちは。わたしの なまえは はな。あなたの なまえは?」
はなが いうと、「たんぽぽ」 どこかで こえがしました。 
「だれか いる。じっとしていよう」ふうは うずくまりました。
「はなって、すてきな なまえ」かおを だしたのは てんとうむし。「ぼくは、たんぽぽの きいろい はなが すき」すると、べにしじみが とんできました。
「だれか きた、じっとしていよう」はなも うずくまりました。
「ぼくは たんぽぽの あまい みつが すき」すると、みつばちが とんできました。「わたしは たんぽぽの、かふんが すき」
「はなは たねを みのらせ、あたらしい いのちを うむんだよ」てんとうむしが いいました。「あたらしい いのち?」
「たんぽぽ ぽぽぽ、ぽ ぽ ぽ」かぜがふいて わたげが くずれました。「かぜが たねを はこんでくんだ」
「ぼくの なまえは ふう。かぜのことだよ。」ふうが いうと、「いなまえだね。かぜは いのちを はこぶんだ」てんとうむしは くるくると まわりました。
「ぼくは かぜ。いのちを はこぶんだ。」 「たんぽぽ ぽぽぽ、ぽ ぽ ぽ」
ふうは かぜに、 はなは わたげに なりました。
うちにかえると ふうと はなは、おかあさんに、たんぽぽの はなしをしました。
「そうよ、ふうは げんきな かぜのこと。はなは、きれいな はなのこと。 あたらしい いのちを うみ、 そだてるの」 おかあさんは いいました。


   ネズミの大家族を主人公にした「14ひきシリーズ」でお馴染みのいわむらかずおさんの待望の新シリーズが2010年にだされました。これは、その2作目になります。今度の主人公は2匹の野うさぎです。1作目の「ふうと はなと うし」も、2匹の出会う様々な生き物たちとの驚きや喜びで溢れていました。何よりも”いのち”について大切な言葉で埋め尽くされていました。この2作目「ふうと はなと たんぽぽ」では、2匹の名前にこめられた意味が伝えられていきます。自分の名前の意味に気づく2匹の驚きと、たくさんの出会いの中で気づくことが出来た2匹のわが子へのお母さんの喜びがひしひしと届きました。そして最後に、おっぱいを飲んでぐっすり眠る2匹は、まだまだ赤ちゃんなんだって思います。そのお母さんの胸のあたたかさが絵本全体を温かくしてくれています。絵本を抱いて、眠りたくなりますね。 栃木県那須郡那珂川町にある「いわむらかずお絵本美術館」通称「えほんの丘」は雑木林や田んぼ、小川やため池などに囲まれた里山にあります。いわむらさんのねずみたちや野うさぎたちは、そんな豊かな自然の中で生まれています。いわむらさんは握りこぶしほどのちいさな野うさぎと出会い、うさぎたちの動きや親うさぎとの様子など日がな一日、這いつくばって、じっと見つめていたそうです。そうやって、この絵本になったのですね。

   もう一人の主人公「たんぽぽ」についていわむらさんはこういっています。
<日本のタンポポを、さがしてみよう>
日本には大きくわけて、日本のタンポポとセイヨウタンポポがあります。 セイヨウタンポポは1年じゅうみられますが、日本のタンポポは春にだけ咲きます。 そして、日本のタンポポの花がセイヨウタンポポと大きく違うのは、 虫たちの助けを借りて受粉する必要があるということです。 ふうとはなが出会うのは、日本のタンポポです。 みなさんも、探しにでかけてみてください。


   いわむらさんの絵本についてのメッセージです。
「絵本と子どもの出会いはいろんな意味で増えていると思いますけれど、なんといっても親子の結びつきが、絵本のもつ役割としてはいちばん大きいんじゃないでしょうか。お母さんやお父さんがだっこして、肌がふれあうような、ぬくもりが伝わる距離で読んであげるということが。その時間が素晴らしい時間なんだと思います。親子ともに至福の時間だと。私のように、かつて子どもとそういう時間を持った世代からすると、そんな幸せな時間、あっという間に終わってしまう。今の時代、いろんな種類の、たのしくてうつくしい絵本がいっぱいあるんだから、お母さんやお父さんの目で自分の子どもたちに選ぶところから、愛情なんじゃないですか。ほんとうに好きな絵に出会ったら、ほれぼれとしてそこから動けなくなってしまう…。それが絵ですから!自分で選ばないなんてもったいない。最初はわからないと思っても、美術館などで絵を見ることを重ねていくと、だんだんこれはいい絵だなあとか、絵本を味わえるようになってくると思いますよ。」

(赤鬼こと山ア祐美子)

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