学校法人
認定こども園 聖愛幼稚園

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Last Update: 18/12/08

赤鬼からの手紙・・・1978年から1981年までのたった3年間、甲府の中心地に児童書専門店『赤鬼』と いう小さな本屋さんがありました。当時は希少な絵本中心の児童書専門ということで、地元山梨のみならず 全国にファンが広がっていた素敵な本屋さんでした。その後、一男二女の母となった赤鬼は子育ての大事業を 志し、後に東京都練馬区教育委員会の教育委員を務める等、常に母親の立場から目覚ましい活躍をしてきました。 今も文部科学省委託事業『新教育システム開発プログラム』作成に参画して日本国中を東奔西走しています。 赤鬼と小学校以来の幼馴染の私は、3年ほど前から故郷山梨の子どもたちのために絵本の紹介を 書いてくれるようお願いしてきました。やっとこの2007年5月から毎月お手紙をもらえることになりました。 赤鬼おススメの絵本は、聖愛幼稚園の子育て支援センター『あんぱんくらぶ』の本棚でいつでもご覧いただけます。 なんたって『赤鬼からの手紙』です。どうぞ、お楽しみに。(園長 鈴木)




赤鬼からの手紙(2018年12月号)



『イエス』

藤城清治 著

日本基督教団出版局


   1年の締めくくりの季節がやってきました。12月の声を聞くと、なんとなくそわそわしてしまいます。今年中にやっておきたいことや、やっておかなければならないことなどが頭に浮かんできます。でも、こんなときこそ、慌てずにゆっくり1年を思い返すことも大切なことかもしれません。振り返ると今年だけでも様々な災害に遭われた方々が沢山います。その方々が普段の生活を取り戻すにはまだまだ困難なことがあることも忘れてはならないことです。冷え込んだ街中は、もうすっかりクリスマスを迎える装いになっています。キラキラしたイルミネーションばかりが目に飛び込んできますが、そんな中でもじっと一つの灯りを見つめ、その影を芸術に高めた作品をご紹介します。

天使のお告げ ルカ1:24〜38 マタイ1:18〜25
イエスの誕生 マタイ2:1〜12 ルカ2:1〜20
少年イエス  ルカ2:41〜50
イエスの受洗 マタイ3:13〜17 マルコ1:9〜11 ルカ3:21〜22 ヨハネ1:29〜34
荒野の試み  マタイ4:1〜11 マルコ1:12〜13 ルカ4:1〜13
弟子を招くイエス マタイ4:18〜22 マルコ1:16〜20 ルカ5:1〜11(ヨハネ21:1〜11)
カナの結婚式 ヨハネ2:1〜11
山上の説教 マタイ5:1〜7:28(ルカ6:17〜49)
ガリラヤ湖の嵐 マタイ8:23〜27 マルコ4:35〜41 ルカ8:22〜25
旅人を助けるサマリア人 ルカ10:25〜37(マタイ22:34〜40 マルコ12:28〜31)
迷子の羊 マタイ18:12〜13 ルカ15:3〜7
イエスと子供たち マタイ19:13〜15 マルコ10:13〜16 ルカ18:15〜17
イエスとザアカイ ルカ19:1〜10
病人のいやし ルカ5:17〜26 マルコ2:1〜12(マタイ9:1〜8)
山上の変容 マタイ17:1〜8 マルコ9:2〜8 ルカ9:28〜36
エルサレム入城 マタイ21:1〜11 マルコ11:1〜10 ルカ19:29〜40 ヨハネ12:12〜19
宮きよめ マタイ21:12〜17 マルコ11:15〜17 ルカ19:45〜46 ヨハネ2:13〜17
ナルドの香油を注ぐ女 マタイ26:6〜13 マルコ14:3〜9 ルカ7:36〜50 ヨハネ12:1〜8
最後の晩餐 マタイ26:17〜35 マルコ14:12〜31 ルカ22:7〜38(ヨハネ13:1〜30)
ゲッセマネの祈り マタイ26:36〜46 マルコ14:32〜42 ルカ22:40〜46(ヨハネ18:1)
十字架 マタイ27:32〜44 マルコ15:21〜32 ルカ23:26〜43 ヨハネ19:16〜37
復活 マタイ28:1〜10 マルコ16:1〜8 ルカ24:1〜12 ヨハネ20:1〜18


   94歳の現役影絵作家、藤城清治さんの「イエス」。 この絵本をどこかで見かけた方もたくさんおられるかもしれませんね。昇仙峡には藤城清治美術館もありますから、行かれた方もいるでしょう。 この絵本にはお話はありません。巻末に、影絵の画題と、それにちなんだ聖句の個所が丁寧に掲載されています。お馴染みの聖書のお話ばかりですが、作品としてこの影絵にたどり着くまで大変なご苦労があったと藤城さんは語られています。

   「ぼくは、はじめこの本にとりかかったとき、半年くらいでできるだろうと思っていた…あらためて聖書に関しての資料をいろいろ読んだりみたりしていくうちに、聖書の持つ壮大さ、崇高さというものは、1週間で1枚つくりあげてゆくようなことでは、到底できないことだと分かった。…とうとう足掛け3年たってしまった。」
そして、聖書画の世界と影絵の世界は、共通しているものがあると・・・それは”光”というものである・・・光に照らし出された影絵の世界には、何か清らかな透明感や神秘性があって、それはまた、キリストの世界にも通じていくような気がする・・・とも語っています。 この絵本の1枚1枚を見つめていくと、紙面ではありますが光の温かさが伝わってくるような気がします。 ご本人が言うように、聖書物語の表現は影絵がぴったりなように思えてきます。

   藤城さんは、常に新しい挑戦をなさっています。 ずっと描いてきたメルヘンの世界から、今伝えなければならないと、ヒロシマの原爆ドームや東日本大震災の悲しさ、辛さ、乗り越えようとする人々の力なども描き続けています。 藤城さんのアトリエには、いろんな生き物たちが同居しているTV画面を見たことがあります。 制作中の影絵の上を猫が歩き回っても、追い払うことなどまったくありません。 藤城さんは平気な顔で作業を続けています。 それは、藤城さんのテーマの一つには、「生命の大切さ」があるからだと思います。 たとえ、どんなに哀しく辛い画面にも、あの大きな目をした、とんがり帽子の小人がいるのは、命の輝きの象徴なのだと・・・。

   今年のクリスマスを思うとき、この絵本のページを開いて"光"を感じていただけたらと思います。
  〜地には平和、人には喜びを〜
”Joy to the World! Happy Merry Christmas to You! ”


(赤鬼こと山ア祐美子)


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赤鬼からの手紙(2018年11月号)



『なかなおり NAKANAORI』

カピリナ 著
井之上 喬・長深田 悟 監修

朝日学生新聞社


   秋も深まり、吹く風もほほに冷たく感じるようになってきました。今年は台風がたくさんやって来ました。その傷跡が残る場所もありますが、空を見上げると、いつも通りに一年中で一番美しい季節が私たちの目や耳を楽しませてくれています。お弁当をもって、みんなで出かけるのもいいですね、ワイワイガヤガヤ楽しい一日が待っています。 あらっ、ちょっと待って・・・みんなの笑い声がこだましているはずなのに、どこかで誰かと誰かが、ケンカしているような・・・いったいどうしたのでしょうか・・・

 きょうはいいてんき、ほらあなからでてきたクマくんが、もりをあるいていると、ビーバーが、きのおうちをつくっています。「いいなあ。ぼくも おおきな うちを つくろう!」
クマくんは、きをきろうとしましたが、うまくいきません。めのまえに、きれいにきったきがありました。「いいのが あった。これをつかおう。」
クマくんが、おうちをつくっていると、ビーバーがきて「クマくん、そのきは ぼくのだよ、かえして!」
クマくんはびっくりしたけれど、「しらないよ。すててあったんだもん。」といってしまいました。

 ビーバーがこまっていると、もりのみんながやってきました。
「そのきは、ビーバーくんのだよ。ビーバーくんがきっているのをみたよ!」とカラスくんがさけびます。
「かえてしてあげて。」とうさぎちゃんはやさしくいいます。それでも、クマくんは しらんぷり。みんなは おこってかえってしまいました。
「ふーんだ!ビーバーくんのことなんてしらないよ。」と、おうちをつくりますが、うまくつくれません。クマくんは、なきだしてしまいました。
「わたしは もりのリスおばあちゃん。クマくん、どうしたんじゃ?」
「おうちがつくれない、みんなとけんかしちゃった。どうしたらいいか、わからないよー!」
「よーし、なかなおりのうたを おしえてあげよう。」

 ♪あのこの きもちを かんがえよう ♪ゆうきを だして はなそうよ
 ♪わるいと おもえば ごめんなさい ♪そしたら ふたりは なかなおり

リスおばあちゃんはクマくんのとなりにすわって、しずかにたずねました。
「クマくん、ビーバーくんのきもちをかんがえてごらん。」
「ぼくはおうちがつくりたいんだ。ビーバーくんのきもちなんて、しらないよ!」
クマくんのめは、なみだでいっぱいです。
「ビーバーくんも、きがないと おうちが つくれないよね。」リスおばあちゃんがいいました。クマくんは、ビーバーくんのきもちを かんがえました。 きがなくて、こまっているビーバーくんのすがたが おもいうかびました。

 さて、クマくんはどうしたでしょうか・・・。

   きずな絵本シリーズ第1弾として出版され、今、話題になっている絵本です。 絵本の作者の「カピリナ」は、ふたりの作家によるユニット名です。 これは、ハワイ語で”きずな”を意味しています。 監修の井之上喬さんは、早稲田大学生時代に、「ナレオハワイアンズ」というハワイアンバンドでビブラフォンを担当されていたそうです。 卒業後、日本楽器製造(現・ヤマハ)で働かれ、現在のパブリックリレーションズという会社を設立されています。 「ハワイ島のボンダンス」の絵本の時にもお伝えしましたが、日本とハワイには深いつながりがあります。 音楽にも憧憬の深い井之上さんは、ハワイの音楽から学ばれたこともあったかもしれません。 絵本の中に、「なかなおり」の歌が添えてあるのも、”きずな”を音楽の力で伝えようとしたのではないでしょうか、そんな気がしてきます。

   井之上さんは絵本の最後にこう書いています。
〜人はひとりでは生きていくことはできません。本質的に”かかわり、かかわられる”存在といえます。 グローバル社会では、多様な文化や価値観を持った存在との、かかわりあいが求められます。 私たちは子どもたちが他者とのかかわりを通じて、豊かな人生を形作っていけるように支援します。〜

   この絵本の「なかなおり」では”相手の気持ちをかんがえる”ということを主題にしています。 クマくんはお家を作る、という同じ目的を通して、ビーバーくんの気持ちを理解しようとします。 お家を作りたい気持ちに自分が触れることによって寄り添うことが出来てきます。 でも、私たちの日常には、目的が違うときも、場面が違うことの中でも寄り添わなければならないこともあります。 どんな状況に置かれても、今一番大事なことは何かをお互いに思いあえることが必要なことのように思います。 なかなおりは、簡単ではないかもしれません。 絵本の中の歌の歌詞にあるように、自分が悪いと認めることも並大抵なことではありません。 クマくんは勇気を出しました。でも勇気を出したのはクマくんだけではありません。 クマくんを”許す”ビーバーくんの勇気も素敵なことだと思います。

あなたはケンカしている人はいませんか?
あなたはなかなおりできましたか?

(赤鬼こと山ア祐美子)

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赤鬼からの手紙(2018年10月号)



『ピエールくんは黒がすき!』

ミッシェル・パストウロー/著
ローランス・ル・ショー/イラスト
松村恵理・訳

白水社

   とても暑かった夏が過ぎて、一年中で一番美しい季節になってきました。 山々をこんもりと青々とさせていた緑たちが姿を変えていきます。 赤や黄色だけではなく、その微妙な色模様は私たちの目を楽しませてくれますね。 そんな私たちの目をもっと豊かにしてくれる場所が、美術館です。 芸術の秋には、様々な展覧会が待っています。あなたの住む街にもきっと、素敵な作品が紹介されていることでしょう。 あれ?!ちょっと待って・・・ここは、なんだか、真っ黒ばかり・・・いったい何の展覧会でしょう・・・。

ピエールくんはベッドのなかで、おびえています。だって、あたりはまっくらだから。 ピエールくんは不安でいっぱい、本の中の夜は、黒というより紺色だったから、「なんで今夜の外はまっ黒なの?」「青い夜なら、こんなにこわくないのに」 ピエールくんは、きょうぼうなオオカミにおいかけられる夢を見ました。動物園で見たオオカミは黒ではなく灰色や茶色で、赤い毛のオオカミさえいました。あれはたぶん本物じゃなかったんだ、本物は、まさにピエールくんをたべようとしているどうもうでまっ黒い、黄色い目をしたオオカミです。ピエールくんはベッドの中で悲鳴をあげました。
「ママ、ぼく、夢ではぜんぶの色があるといいな。だけど、黒だけはいやだ」 朝起きてパパに話します。「パパ、どうして黒なんてあるの?ほかの色みたいに黒も色なの?」「もちろん、黒だって色だし、きれいな色でもあるんだよ。おしゃれなパーティには,黒い服を着るんだ…長いこと黒と白はほかの色とはちがう、とくべつな色って考えられていたんだよ。つまりね、黒と白は、赤や青や黄色や緑と同じように本物の色って言われるようになったんだ・・・」でも、ピエールくんはパパの言う通りには思えませんでした。
 今日の学校の先生のお話は、すごくこわい"青ひげ"です。ピエールくんはふしぎに思います。「どうして黒いひげが黒すぎると青く見えるんだろう?」ピエールくんは友達とも遊ばずに自分にたずねます。「・・・青はぼくにとって最高にきれいな色だし、ママがいちばん気にいってる色なのに。青が黒みたいであるはずがないよ。そんなのありえない。」
 おじいちゃんがお迎えに来ています。公園に行くとカラスがちかづいてきました。「カラスの羽や尾っぽをよくみてごらん」とおじいちゃんが教えます。「とっても黒くて輝いている、紺色にも見えるよ」ピエールくんはさけびます。「まるで青ひげの男のひげみたい!」
 カラスにチョコレートをひとかけ投げるとカラスはくちばしでくわえとります。おじいちゃんが「ふしぎだね。まっ黒なくちばしの中では、チョコレートの茶色がなんだかあかるく見えるよね」「茶色と黒ってぜんぜんちがうね。つまりさ、チョコレートは大好きだけど、茶色より黒の方がきれいだとおもうんだ」とピエールくんは答えます。
 土曜日、パパはピエールくんをつれて、ピエール・スーラ―ジュという画家の作品を観に行きます。スーラ―ジュの絵は遠くから見るとまっ黒です。けれど、近づいてみると「パパ、黒の中にたくさんの色が見えるよ!・・・」「そのとおり。・・・光がふりそそぐと・・・あたらしい色になるんだ」それは、ほんとうにきれいで、まるでそれぞれの絵から色のついた音楽が小さくきこえてくるようです。
「パパ、今じゃぼく、黒が大好きだよ。だって黒ってほかのぜんぶの色になれるから。」


   ”子どもに美術作品を見せながら自発的に何かを学び取らせるという教育法は、フランスでは古くからある慣習です。たとえば、パリの美術館で小中学生たちが課外授業を受けているのは日常的な光景です。”と訳者の松村さんは述べています。日本でも、そんな光景に出くわすことがあります。中学生などが懸命にメモを取りながら鑑賞していたり、ギャラリートークやワークショップなども盛んになってきたように思います。この絵本では、ことさら色彩にこだわって描かれています。ミシェル・パストゥローはフランスの歴史人類学者です。専門的な多くの著作がある中で、今回初めて子供向けに描かれました。

   ミシェルさんのメッセージの中で”〜「黒と白は色ではない」という間違った見方が広く行きわたっている〜”とありました。私は有難いことに、今までそんな考えは思いもしない中で過ごしてきましたが、歴史をひも解くとそういう見方があるのだということもわかりました。というのも、私のワードロープの中ではなんと黒が多いことか・・・私は、特に黒が好きです。とはいえ、ピエールくんの様に闇の黒は怖いに決まっています。そんな怖い黒が大好きになるまでの、家族の導きが素敵です。日常の中に色を見つけることで学んでいきます。おじいちゃんがカラスを通して、孫のピエールくんに黒を伝えるのはすごいなあって思います。なかなか親子で美術館に行く機会は少ないかもしれませんが、絵本のパパの様に一緒に楽しみ共に学ぶことが出来るといいですね。スーラ―ジュ作品は日本でもいくつかの美術館で収蔵されています。この絵本に出会って、ぜひ鮮やかな黒を感じに行くことにしようと思います。絵本にある〜まるでそれぞれの絵から色のついた音楽が小さくきこえてくるようです〜が心に残ります。黒だからこそ聞こえる音があるのかもしれませんね。

   「眼で聴く、耳で見る」この絵本の大事なメッセージのように思います。

(赤鬼こと山ア祐美子)


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