学校法人
認定こども園 聖愛幼稚園

〒400-0071
山梨県甲府市羽黒町618(地図
TEL 055-253-7788
mail@seiai.net


Last Update: 22/05/02

赤鬼からの手紙・・・1978年から1981年までのたった3年間、甲府の中心地に児童書専門店『赤鬼』と いう小さな本屋さんがありました。当時は希少な絵本中心の児童書専門ということで、地元山梨のみならず 全国にファンが広がっていた素敵な本屋さんでした。その後、一男二女の母となった赤鬼は子育ての大事業を 志し、後に東京都練馬区教育委員会の教育委員を務める等、常に母親の立場から目覚ましい活躍をしてきました。 今も文部科学省委託事業『新教育システム開発プログラム』作成に参画して日本国中を東奔西走しています。 赤鬼と小学校以来の幼馴染の私は、3年ほど前から故郷山梨の子どもたちのために絵本の紹介を 書いてくれるようお願いしてきました。やっとこの2007年5月から毎月お手紙をもらえることになりました。 赤鬼おススメの絵本は、聖愛幼稚園の子育て支援センター『あんぱんくらぶ』の本棚でいつでもご覧いただけます。 なんたって『赤鬼からの手紙』です。どうぞ、お楽しみに。(園長 鈴木)




赤鬼からの手紙(2022年5月号)



『野の花 えほん 春と夏の花』

前田まゆみ 作


   ほわっとした空気に包まれると、いっきにすべての草木や花々が芽吹き、顔を出してくれます。どんなことがあっても、前を向きたくなる季節がやって来ました。真新しい出会いや真新しい出来事も待っています。さあ、コートを脱いで、散歩に出かけましょう!遠くに出かけなくても、玄関の扉を開けて、深呼吸したら、足の向く方へ歩いてみませんか? きっと、あなただけの「春」が見つかるかもしれません。

「すみれ」
*すみれのなかま *特徴を観察しましょう *名前の由来
*パンジー、ヴィオラの祖先 *すみれのサラダ *においすみれにはこんなものにも
*すみれずもうで遊びましょう

「はこべ」
*はこべのなかま *特徴を観察しましょう *名前の由来
*花から実へのうつりかわり *はこべのふりかけ

「なずな」
*なずなのなかま *特徴を観察しましょう *名前の由来
*アブラナ科の野菜 *なずなのさやで、かわいい手作りカード

「ははこぐさ」
*ははこぐさのなかま *特徴を観察しましょう *名前の由来
*春の七草 *七草がゆを作ってみよう *ははこぐさのはちみつティー

「きゅうりぐさ」
*きゅうりぐさのなかま *特徴を観察しましょう *名前の由来
*きゅうりぐさのブーケ *わすれなぐさの詩と伝説

「せいようたんぽぽ」
*せいようたんぽぽのなかま *特徴を観察しましょう *名前の由来
*たんぽぽのアクセサリー *たんぽぽサラダ
*たんぽぽコーヒー *たんぽぽコーヒーの作り方

「からすのえんどう」
*からすのえんどうのなかま *特徴を観察しましょう *名前の由来
*からすのえんどうの笛遊び *からすのえんどうクッキング

「おおいぬのふぐり」 「ひめうず」 「むらさきごけ」 「むらさきけまん」  「へびいちご」 「くさいちご」 「れんげそう」 「しろつめくさ」 「のびる」 「はるじおん」 「きんぽうげ」 「おどりこそう」 「ながみひなげし」  「にわぜきしょう」 「のいばら」 「どくだみ」 「ねじばな」 「いぬたで」 「げんのしょうこ」 「かたばみ」
「えのころぐさ」
*えのころぐさのなかま *特徴を観察しましょう *名前の由来
*犬と猫の野菜 *粟の先祖、えのころぐさ *小鳥のレストラン

   あなたの知っている花はどれくらいありましたか? ここでは、28種の花々が紹介されています。 ちょっとした裏山や道端にあるような、見かけても記憶にも残らないような花々たちに こんなにも豊かなお話がつまっているなんて、驚くことばかりです。作者の前田まゆみさんの描く色鉛筆の柔らかな線と色使いが、花々たちをいっそう愛らしいものにしています。ページをめくるごとに、心の中までほっこりして、思わず笑顔になってしまいます。

   まるで図鑑のようだと思いがちですが、あの分厚い図鑑ではない、この絵本の形がより花々たちを身近に感じさせてくれます。実は一般的な図鑑よりももっと、教えてくれることがたくさんあるのです。もちろん、生物としての確かな知識に基づいた記述も、わかりやすく説明されていますが、歴史、文学、芸術、習慣、食べ方、遊び方、楽しみ方…初めて目にすることもたくさんあります。前田さんの生物に対する視点には、知識だけではなく、生き物すべてへの愛情の様なものが溢れていることが伝わってきます。一つ一つに向き合いながら描かれている果てしない時間と深い洞察の眼が、豊かさを増しています。

   例えば、花たちの名前の由来も、日本語ならではの表現の巧みさが語られています。
〜「すみれ」むかしの大工さんが、線を引くのに使っていた「墨入れ」につぼみの形が似ているから、この名がついたともいわれます。〜
まさか、あの紫色の可愛いすみれが、真っ黒な線を引くための墨入れが由来とは、思いもよりませんでした。 また、子供の頃、あたりにたくさんあった「のびる」、味噌をつけて食べたことがありますが、ほかにもレシピが紹介されています。 虫さされのぬり薬にも使われるとありました。昔の人の知恵には、こんなことがたくさんあったのでしょう。 外国のエピソードもあります。「きゅうりぐさ」という名は初めて出会いましたが、わすれなぐさの仲間だそうです。ここでは、ヨーロッパの詩が紹介されています。
わすれなぐさ
ながれのきしの ひともとは、
みそらのいろの みづあさぎ
なみ、ことごとく、くちづけし
はた、ことごとく、わすれゆく
詩の内容についても、詳しく記されています。日本文学においても、花の表現は古代から現代にいたるまで多彩なものがあるのは、多くの方がご存知なことでしょう。

   今世界中が、大きな脅威に脅かされています。ウイルスの猛威のみならず、暴力による幼い命までもが奪われる悲しいことが増え続けています。私たちにできることは、命を思い続けることではないでしょうか。近場にあるあらゆる生き物に、心寄せることからでも伝えることが出来るかもしれません。あなたの傍にある、小さな命に思いを馳せ、日々感じていかれたらと思いつつ、平和を願いつつ、この絵本を送ります。

(赤鬼こと山ア祐美子)

戻る


赤鬼からの手紙(2022年4月号)



『なぞなぞ100このほん』

M・プラートフ 採集
M・ミトゥリチ  絵

福音館書店

   気持ちのいい季節になってきました。山々の緑はだんだん深い色に変わり、花々もあたり一面に咲き誇っています。そんな植物たちの生き生きとした姿に出会うと、もっともっと伸びていこうという気持ちになります。木々の間には鳥たちも囀り、花の香りに誘われた蝶や蜂たちも蜜を目指して飛び交います。私たちの毎日は、こんな生き物たちに囲まれた豊かな日々です。でも、こうした私たちの生活のたったこの今も、悲惨な戦争が続く中を生きる人たちがいます。たくさんの命が奪われ続けています。その命のために、私たちには、いったい何ができるでしょうか。

ロシア
・わたしは たたかれたり なぐられたり ひっくりかえされたり きられたり
 でも じっと がまんして みなさんの おやくににたちます
カレリア
・十にんの きょうだいが ぜんぶの おもさを ささえてる
エヴァンク
・十にんの おとこのこたち みんな せなかに こおりの かけらを しょっている
ベロルシア
・いくら はねを まわしても とびたつことは できません
カザフ
・しろい テントの いえ まども ドアも ありません
ナナイ
・よるになると とんでくる きんいろの ことり いえじゅうを あかるく てらす
ブリャ―ト
・あるかないし はしらない とびはねるだけです
チュヴァシ
・なつは ふくを きていて ふゆになると ぬいでしまう
ヤク―ト
・もりのなかに こどもたちが たっている うさぎのけがわの ぼうしを かぶって
ウドムルト
・もりのなかで うまれて みずのなかで くらしてるもの なあに?
ウズベク
・いつも すすんでいきます けっして ふりむきません
ハカス
・あしが ないのに やってきて くちが ないのに はなしをする
ラトヴィア
・いえじゅう おどりまわってから すみっこに かくれた
バシキ―ル
・四にんの わかものが ひとつの ぼうしを かぶってる
アブハジア
・どこへ いくにも きみと いっしょ きみのすることは なんでも します
 でも たすけてはくれません てつだっては くれません
アルメニア
・ちいさな ペチカ あかい すみびが ぎっしり
コミ
・一ねんに いちどだけ おしゃれするのは だれ?
トルクメン
・とおくから みると くろいものが 一ぽん ちかづいて みると
 くろいものが 千ぼん
カルムイク
・しろい はらっぱに くろい ひつじたちが いっぱい
モルドヴァ
・ふたつの ちいさな たる ひるまは いっぱい よるは からっぽ
ウクライナ
・ふたりの きょうだいが みちを へだてて くらしてる
 でも おたがいに いちども みたことはありません
・おひゃくしょうさんの にばしゃから えんどうまめが いっぱい こぼれた
 よが あけてから ひろいにいったけど もう ひとつぶも みつからなかった

   100個のなぞなぞの絵本です。 様々な歴史の中で、翻弄された国々。それぞれの国には独自の文化・芸術があり、伝承された言葉もあります。なぞなぞもその一つかもしれません。採集された多くの言葉を松谷さやかさんは、こんなにも美しい詩のような言葉に表されました。自然・生き物・生活・宇宙・人・命・様々な想いが詰まっています。子どもたちはなぞなぞが大好きです。不思議な答えにはっとしたり、おやっと思ったりするかもしれません。イラストもヒントになっています。

   「Over The Wall」を知っていますか?活動の紹介には、こう記されています。
〜Over the Wallとは、アーティスト・ミヤザキケンスケを中心にしたメンバーで世界中に壁画を残す活動です。現地に壁画を残すだけでなく日本の子供たちと現地の子供たちの交流やワークショップなど、絵を通して世界を繋げることを目的としています。〜

   2017年ウクライナのマリウポリで描かれた壁画は、絵本「てぶくろ」をモチーフにしたものです。平和を願い、現地の子どもたちも手伝って描かれました。その絵が爆撃を受けた映像が飛び込んできました。一瞬で平和が砕かれました。 ウクライナもロシアも絵本の宝庫です。美しく愉しく心が豊かになる絵本たちです。 探してみましょう、出会ってみましょう。 戦争を始めるのは人間です。止めることが出来るのも人間です。平和を祈る毎日に。

(赤鬼こと山ア祐美子)

戻る


赤鬼からの手紙(2022年3月号)



『 くまとやまねこ 』

湯本香樹実 ぶん
酒井駒子 え

河出書房新社

   だんだん日差しの温かさが眩しく感じられる時間が多くなってきました。温暖化の脅威が叫ばれ、暖冬という言葉も聞かれましたが、今冬は雪の出番も多く、思いのほか寒さも厳しい日々でした。数年ぶりの豪雪というニュースも飛び込んできました。備えがあっても、不安が付きまとう地域も多かったと思います。こういう時こそ待ち遠しい春です。気持ちがうきうきしてしまう春ですが、別れの季節でもあります。そして、3月は悲しい別れをした方がたくさんおられました。その静かな流れを考えたいと思います。

 ある朝、くまは ないていました。なかよしのことりが、しんでしまったのです。
小さな箱を作って、ことりをそっといれました。ことりは、ちょっとひるねでもしてるみたいです。くまは、きのうの朝 ことりと話したことを思い出しました。
「ねえ、ことり。きょうも『きょうの朝』だね。きのうの朝も、おとといの朝も、『きょうの朝』って思ってたのに、ふしぎだね。でもみんな『きょうの朝』になるんだろうな。ぼくたち、いつも『きょうの朝』にいるんだ。ずっとずっと、いっしょにね」
すると、ことりは首をかしげていいました。「そうだよ、くま。ぼくはきのうの朝より、あしたの朝より、きょうの朝がいちばんすきさ」って。
でも、もうことりはいないのです。くまは、どこへいくにも、ことりをいれた箱をもってあるくようになりました。けれど、くまが箱をあけると、みんなこまった顔をして、だまってしまいます。それから、きまっていうのでした。
「くまくん、ことりはもうかえってこないんだ。つらいだろうけど、わすれなくちゃ」
くまは じぶんの家のとびらに、なかからかぎをかけました。くまはいすにすわったまま、すっかりつかれきって、うつらうつらするのでした。

 ある日のことです。ひさしぶりに まどをあけてみると・・・
なんていいおてんきなんでしょう!風が、草のにおいをはこんできます。
くまは、あるきだしました。おや?みなれないやまねこが、ひるねをしています。おかしなかたちの箱が、草の上になげだされています。
「きみ・・・」くまのこえはかすれていました。「きみのもってる箱、みせてほしいんだ」
「くまくん、きみのもってるきれいな箱のなかをみせてくれたら、ぼくもみせてあげるよ」
くまは箱を開けました。やまねこは ことりをじっとみつめていました。
「きみは このことりと、ほんとうになかがよかったんだね。」
やまねこが箱をあけると、なかからでてきたのはバイオリンでした。
「きみとことりのために 一曲えんそうさせてくれよ」やまねこが バイオリンをひいています。くまは目をとじていました。すると、いろいろなことがおもいだされるのでした。
バイオリンのおんがくは、ゆっくりとなめらかに、つづいていきます。ことりとの日々を、くまはなにもかもぜんぶ、思いだしました。くまは 森のなかのひのあたるばしょにことりをうめました。「ぼく、もうめそめそしないよ。だって、ぼくとことりは ずっとずっとともだちなんだ」
やまねこは、空をみあげました。「町から町へと旅をして、バイオリンをきいてもらうのがぼくのしごとなんだ。きみもいっしょにくるかい?」「おいでよ、くまくん」
やまねこは、そういって タンバリンをとりだしました。手のあとがたくさんついて、茶色によごれた、ずいぶんふるいタンバリンでした。だれがたたいていたのでしょう。
「ぼく、れんしゅうするよ、おどりながら、タンバリンをたたけるようになりたいな」
それから、ふたりはいっしょに旅をつづけています。
「くまとやまねこ音楽団」は大人気。こんどはあなたの町にやってくるかもしれませんよ。

   全国の絵本屋さん1000人に聞いた、「絵本屋さん大賞」で1位になった作品です。 酒井駒子さんのモノクロのやわらかな絵が印象的で、その後も酒井さんの絵本は多くの支持を受けています。キラキラした季節を迎えるはずのこの時期に、あえてこの絵本をお勧めしたのは、やはり、2011・3・11の東日本大震災のことを忘れないようにしたいと思いました。あれほどの多くの悲しみに向かい、受け止めてこられた日々があります。でもその悲しみは、たとえ一瞬の災害であっても、一人一人がそれぞれに別の形を持っています。この絵本は、そのひとつの大切な悲しみに寄り添うことを教えてくれました。

   今も人々はウイルス感染の猛威に揺れ続けています。コミュニケーションも取りにくく、マスク越しに語るのみでは伝わらないこともたくさんありますが、それでも、お互いに寄り添う方法はあるはずです。 小鳥を失った熊は、山猫に出会うことで、また小鳥に出会えます。どんなに大事な存在だったのかを知ることで、山猫の悲しみにも熊は寄り添っていかれることでしょう。

   春、桜の木の下で「くまとやまねこ音楽団」の音楽にであってみたいです。

(赤鬼こと山ア祐美子)

戻る






Copyright © 2021, SEIAI Yochien.
本ページと付随するページの内容の一部または全部について聖愛幼稚園の許諾を得ずに、
いかなる方法においても無断で複写、複製する事は禁じられています。
mail@seiai.net