学校法人
認定こども園 聖愛幼稚園

〒400-0071
山梨県甲府市羽黒町618(地図
TEL 055-253-7788
mail@seiai.net


Last Update: 19/04/16

赤鬼からの手紙・・・1978年から1981年までのたった3年間、甲府の中心地に児童書専門店『赤鬼』と いう小さな本屋さんがありました。当時は希少な絵本中心の児童書専門ということで、地元山梨のみならず 全国にファンが広がっていた素敵な本屋さんでした。その後、一男二女の母となった赤鬼は子育ての大事業を 志し、後に東京都練馬区教育委員会の教育委員を務める等、常に母親の立場から目覚ましい活躍をしてきました。 今も文部科学省委託事業『新教育システム開発プログラム』作成に参画して日本国中を東奔西走しています。 赤鬼と小学校以来の幼馴染の私は、3年ほど前から故郷山梨の子どもたちのために絵本の紹介を 書いてくれるようお願いしてきました。やっとこの2007年5月から毎月お手紙をもらえることになりました。 赤鬼おススメの絵本は、聖愛幼稚園の子育て支援センター『あんぱんくらぶ』の本棚でいつでもご覧いただけます。 なんたって『赤鬼からの手紙』です。どうぞ、お楽しみに。(園長 鈴木)




赤鬼からの手紙(2019年4月号)



『 せ ん せ い 』

大場 牧夫 著
長 新太 絵

福音館書店

   暖冬といわれた日々でしたが、一気に春めいてきました。4月は新しいことがたくさん始まる季節です。桜をはじめとする花々も咲き誇って、1年中でも一番ワクワクした気分になります。そんな華やかな風に囲まれて入園式、入学式を迎えた人もたくさんいますね。新しい友達、新しい先生たちに出会うことは嬉しくて楽しみですが、ちょっとドキドキすることもあります。特に初めての先生に出会うのは、不安な気持ちになることもありますね。だって、毎日一緒に過ごす人ですから…でも、先生って、ほんとはこんな人なんですって!

ねえ、みんな しっている?
せんせいって、ときどき うまだよ
せんせいって、ときどき オニだよ
せんせいって、ときどき おすもうさんだよ
せんせいって、ときどき おおかみだよ
せんせいって、ときどき おきゃくさんだよ

せんせいは かんごふさんだよ
せんせいは おとうさんだよ
せんせいは おかあさんだよ
せんせいは ほんとうの おかあさんだよ
せんせいは こどもだよ
せんせいは ほんとうの こどもだよ

せんせいはね、こぶたの せんせいだよ  うそじゃないよ
そして・・・わたしたちの せんせい!


   「かがくのとも」50周年、おめでとうございます。 絵本を見ながら、思わずそんな言葉が口から飛び出してしまいました。 1969年に、世界で初めての月刊科学絵本として誕生した「かがくのとも」が、2019年3月号で創刊から50年を迎えるそうです。通巻600冊にもなるという「かがくのとも」は、私自身も大変お世話になりました。 < かがく >という言葉で想像すると、教科書の〈理科〉の分野のように思えますが、それは違います。 この「せんせい」にも表現されているように、”見たい、聴きたい、触りたい、感じたい・・・なぜ?どうして?何だろう・・・”という、子どもたちのまっすぐな好奇心に支えられてきたように思います。 「せんせい」の中に描かれるのは、子どもたちの目線を通しながら、先生への溢れる思いです。 初めて出会う先生をどんな風に受け止めながら子どもたちを送り出そうかと、、、そんな親たちの不安を吹き飛ばしてくれます。 やっぱり、長新太さんの魔法の力も大きいですね。

   「かがくのとも」の特色として、このようなことが言われています。

  • 物語絵本と同じように、まずは読んだ子どもたちに「楽しい!」「おもしろい!」と感じてもらうことを大切に作られています。
  • 断片的な知識や情報でなく、じっくり科学する心を育てることを大切に考え、1冊1テーマの絵本作品を毎月お届けする月刊絵本です。
  • 子どもたちを取り巻く社会全体に幅広くテーマを決め、その分野の第一線で活躍する研究者や絵本作家が心を込めて作品に仕上げています。
  • これまでに海外でもおよそ30言語、247タイトルの「かがくのとも」が翻訳出版されています。


   我が家にも、月刊としての薄さの絵本が書棚を埋めています。 大人の私たちも改めて気づかされるようなテーマがあって、何度も驚かされながら子どもたちと楽しみました。全部集めると、まるで百科事典のようにも思えてきます。こんなに長い間そばに置いて、何度読み返しても、「かがくのとも」には、まだまだ新たな発見がありそうです。

(赤鬼こと山ア祐美子)


戻る


赤鬼からの手紙(2019年3月号)



『ばあばはだいじょうぶ』

楠 章子 著
いしいつとむ 絵         

童心社


   3月の声を聞くと、気分も軽くなってくるような気がします。春の訪れを間近に感じられる出会いもたくさんありますね。木の芽のふくらみや、花のつぼみ、足元の緑も少しずつ伸びてきています。お日様の温かさも一気に増してきますが、寒さが舞い戻るのもこの季節の特徴です。特にお年寄りと一緒に暮らしている方は気になりますね、日々の生活の中でも油断は禁物です。そんな風に、注意深くみんなで見守りながら過ごしている家族のお話です。

つばさは、がっこうからかえると、まず、ばあばのへやにいく。ばあばに いろんなことをしゃべると、ばあばは「うんうん」きいてくれる。そして、いってくれるんだ。
「つばさは、だいじょうぶだよ」
ママにしかられたときも、なきやむまで、ばあばは、「だいじょうぶだよ」って、あたまをなでてくれる。ばあばのこと、だいすき。
 はじまりは、犬のココのおやつ。「ばあばったら、一日になんかいも、あげちゃうのよ」
ママはくびをかしげていた。
「つばさ、きょうは学校、おやすみなの?」
「だって、日よう日だもん」「ああ、そうか。日よう日か」と、はなした すぐあとに、
ばあばばが またきいてきた。おかしいなと おもいながら、ぼくは こたえた。
「だって、日よう日だもん」「ああ、そうか。日よう日か」
秋になると、まいとし、ばあばは あみものをはじめる。ことしは、なかなかすすまない。
あんでは ほどく。 あんでは ほどく。
「いろいろ、わかんなくなっちゃって・・・」ばあばは、ためいきをつく。
ぼく、どうして わからなくなっちゃうのか、しってる。
ばあばは「わすれてしまう」びょうきなんだって。ママとパパが、おしえてくれた。
春。パパもぼくも、だいじにすこしずつたべていたイチゴジャムを、ばあばが ぜんぶ たべた。「ひどいよ!」
夏。となりのいえのおじさんが、どなりこんできた。「ちょっと、きてくれ!」おじさんのにわの花がおられ、土がほりかえされている。ばあばのへやには、花と土がちらばっていた。
「花、すきだもんねえ」ママは やさしく、ぬれたタオルで、ばあばのかおをふいてあげる。
ぼくは、だまって みていた。
秋。「おちゃ、いれるね」ゆのみをみて、ぼくは ぎょっとした。きゅうすにはいっているのは、おちゃのはじゃなくて、かれはだ。
「さあ、どうぞ」かれはのおちゃを、ばあばがすすめてくれる。
「いらない!」ぼくは、へやから にげだした。
「なるべく、ばあばと いっしょに いてね」ママに そう いわれるけど・・・。
秋がおわるころ。ぼくは ばあばのへやを のぞかなくなった。
にわの水たまりに、こおりが はった日。ばあばが、いなくなった。
ばあばが、いえに いない よる。ぼくは、いつまでも あしが つめたくて ねむれなかった。朝日がのぼると、ばあばは、となりのいえの おじさんとかえってきた。
げんかんに たっている、はだしのばあば。とても たよりなく みえる。
いえが わからなくなって、ずっと くらいみちを あるきまわっていたの?
「ごめんね」ぼくは つめたいばあばのあしに、くつしたをはかせてあげた。
すると ばあばは、「だいじょうぶだよ」そういって ぼくのあたまを なでてくれた。

   この絵本の著者 楠章子さんの実体験から描かれた作品です。楠さんのお母さんが若年性認知症を発症して15年以上が過ぎようとしていること、その介護を通しての思いであることが巻末に記されています。最初は別人のようになっていく母を見て見ぬふりをした…絵本の主人公つばさが、ばあばにやさしくできなくなっていくようすは、そのままのわたしであり、そしてそれが変わっていく様子も自分に重ねて書いたとのことです。

〜「えらいわねえ」という言葉と同じくらい、「大変ねえ」といわれる。介護をするというのはたしかに大変だが、学ぶことも多く、心が満たされることも多い。母は病気のせいでだんだん表情がうしなわれつつあるが、わたしがしんどい顔をしていると、にこっとわらいかけてくれることがある。〜守っているつもりで、じつはいまも守られているのかもしれない。うん、だいじょうぶ。きょうもわらっていこう。〜

   楠さんのこの言葉は同じ立場におられる方には、特に印象深く届くのではないでしょうか。国民の半分が高齢者になるという現実も、あながちまやかしではなくなってきた今日、共に考えていかねばならないことだと実感できる作品です。 この作品は映画化され、4月に公開とのことですが、つばさを演じた”寺田心”君は大きな賞をいただいたそうです。絵本とはまた違うつばさ君とばあばに出会えることでしょう。

(赤鬼こと山ア祐美子)


戻る


赤鬼からの手紙(2019年2月号)



落語絵本五『おにのめん』

川端 誠 著

クレヨンハウス


   この冬は、西高東低の気圧配置が続いています。 太平洋側はカラカラ陽気で雨が欲しいくらいですが、日本海側や北海道は強い寒気と共に大雪に見舞われています。 細長い日本の自然現象は、こんなにも違うものなのだと実感します。 雪による大きな被害が起こらないようにと願うばかりですが、この寒さはまだまだ続きそうです。 待ち遠しい春に思いを寄せながら、「笑い」で寒さを吹き飛ばすのはいかがでしょう。 おやおや、こんなところに「おにのめん」が・・・

お春は親もとをはなれて、河内屋という荒物問屋に「奉公」にでてはたらいておりました。
しごとはそうじ、せんたく、子守りなど…きょうも赤ん坊をおぶって、いつものように道具屋のまえにやってきました。
「おじょうちゃん。まいにちこのおめんをじーっとみとるけど、なんかあるのんか」
「このおめんの顔、あたいのおかんに、そっくりなんや。おかんをおもいだすんや。」
「それやったら、こうていったらええやないかあ」
「お金あらへん」
道具屋のおっちゃん、しばらくかんがえこんでおりましたが・・・
「・・・ほんなら、このおめん、おじょうちゃんに、やるさかい、もっていき」
「おっちゃん、ほんまか…おおきに」
お春はじぶんのへやのたんすのひきだしにしまいました。
暮れもおしせまったある日のこと、若だんなの徳兵衛はたんすのなかをみつめるお春をみつけました。お春がいなくなるのをまって、ひきだしをあけてみました。
「ありゃりゃ、このおめんは―――、お春のおかんにそっくりやんか。お春のやつ、さびしなったら、このおめんにあいにきたっとんや。かわいやっちゃなあ。」
ところが、なにをおもったか・・・お春のおめんをとりだすと、かわりにおにのめんをさしいれました。徳兵衛、年がいもないいたずらをかんがえたもんで・・・。
ひとしごとをおえて、たんすのひきだしをあけたお春はびっくりぎょうてん。 「おかんの顔がおにの顔になっとる!!」
お春はおかんにたいへんなことがおこったとおもいこみ、おにもめんを手にとると、とるものもとりあえず、お店をとびだしてわが家にむかいました。
「おーい、お春はどこや」
ご主人の善右衛門さん、番頭の喜助も女中のお松も、お竹も、丁稚の梅吉もしらないようで、
「おかしいなあ、徳兵衛、おまえしらへんか」
「あっ!」おめんのことをおもいだし、「しりまへんが、ただ、ちょっと・・・」
徳兵衛がじぶんのやったことを善右衛門にはなすと、
「なんやてえ!あほなことしよって」「・・・こりゃあ、えらいこっちゃ」
「お春をさがせ!」店のものをよびあつめ、さがしますがみつかりません。
徳兵衛は、まっさお。
お春の家は、河内屋のお店からおとなの足でも半日かかる田舎、道をいそぐお春。
・・・さてさて、お春はどうなったでしょうねえ。

   2月は、いつものように鬼のお話ですが、今回はちょっと変わったお話です。 「おにのめん」は落語で語られるお話です。 川端誠さんがライフワークとして掲げている落語絵本シリーズの一冊、ほかにもお馴染みの「じゅげむ」「まんじゅうこわい」「めぐろのさんま」などをはじめ、すでに15の落語が絵本として出版されています。

   子供の頃にラジオで落語を聞いてから、筋金入りの落語好きという川端さんは、落語と絵本との関わりをこんな風に話されています。
「うまい噺家にかかると、何度おなじ噺を聞いてもおもしろい。 ストーリーもオチもよく知っていても、聞けば聞くほど、おもしろい。 ちょうど、子どもが同じ絵本を何度でもくりかえし読むのと同じなのかな。 絵本と落語とは、けっこう近く、落語を聞いていると、これは絵本になりそうだというものが、いくらでもありますよ。」

   このシリーズを一冊でも手に取ると、一人で面と向かっても、読み聞かせの会でも、また、お芝居の様に掛け合いしながら読み合わせても楽しむことが出来ます。 いろんな読み方をしてみたくなるのも大きな魅力です。 そしていつの間にか、どんどん次のお話を手に取りたくなってきます。 登場人物の表情や仕草だけでなく、絵の中にある背景や小道具たちを、一つ一つ見ていくと、まるで映画でも見ているように話の筋がより際立って聞こえてきてワクワクしてきます。

   川端さんは「落語絵本は、江戸の暮らしを伝える図鑑でもある。 時代のなかで消えてしまう言葉や風俗・文化があれば、時代を越えても変わらない人情や生き方などもある・・・。 おおいに笑って絵本をたのしみながらも、なにかを感じとったり、知らないうちに記憶に刻まれていくことがあるはず。」とも話されます。 ページをめくっていくと、確かな時代考証に裏付けされたきめ細やかな表現がされていることに気づきます。 今の私たちの暮らしのもとには、こんな日本の歴史があるんだと思うこともしばしばあります。

   落語なんて聞いたこともないし・・・ちょっと難しいと思う方がいるかもしれません、いえいえ、必ず見合う内容の落語がありますので、手に取ってみてください。 きっと、この寒さを吹き飛ばしてくれるはず・・・「笑う門には福来る」

(赤鬼こと山ア祐美子)

戻る






Copyright © 2019, SEIAI Yochien.
本ページと付随するページの内容の一部または全部について聖愛幼稚園の許諾を得ずに、
いかなる方法においても無断で複写、複製する事は禁じられています。
mail@seiai.net