学校法人
認定こども園 聖愛幼稚園

〒400-0071
山梨県甲府市羽黒町618(地図
TEL 055-253-7788
mail@seiai.net


Last Update: 20/04/20

赤鬼からの手紙・・・1978年から1981年までのたった3年間、甲府の中心地に児童書専門店『赤鬼』と いう小さな本屋さんがありました。当時は希少な絵本中心の児童書専門ということで、地元山梨のみならず 全国にファンが広がっていた素敵な本屋さんでした。その後、一男二女の母となった赤鬼は子育ての大事業を 志し、後に東京都練馬区教育委員会の教育委員を務める等、常に母親の立場から目覚ましい活躍をしてきました。 今も文部科学省委託事業『新教育システム開発プログラム』作成に参画して日本国中を東奔西走しています。 赤鬼と小学校以来の幼馴染の私は、3年ほど前から故郷山梨の子どもたちのために絵本の紹介を 書いてくれるようお願いしてきました。やっとこの2007年5月から毎月お手紙をもらえることになりました。 赤鬼おススメの絵本は、聖愛幼稚園の子育て支援センター『あんぱんくらぶ』の本棚でいつでもご覧いただけます。 なんたって『赤鬼からの手紙』です。どうぞ、お楽しみに。(園長 鈴木)




赤鬼からの手紙(2020年5月号)



『パナンぺ ペナンペ むかしがたり』

中村欣一・作
西山三郎・絵

童 心 社


   今、世界は未曽有の出来事に見舞われています。ウイルス感染が世界中に広まって、日本もたくさんの感染者が増大しつつあります。亡くなってしまう方も増えてきました。誰も予想できなかったことが起きて日々の生活が変わってしまいました。不安や戸惑いに囲まれる日々ですが、自分達のできることを精一杯頑張って、みんなで乗り越えていきましょう。

   こんな時こそ、ちょっと変わったこんな絵本はいかがですか。今まで知らなかった人にであえるかもしれません。

アイヌモシリとは 人間らしい人間のくに。アイヌの自由な天地のことだ。 そのゆたかなくにに、パナンぺとペナンぺという、ふたりのじいさまがすんでいた。 パナンぺは川下のもの、ペナンぺは川上のものといういみだ。 ふたりともに おなじアイヌだ。

あるひ、パナンぺじいさんは、かわへ さかなを とりにでかけた。「かわのかみさま、これから、わしはサケをとらせていただきます」といのりを ささげると みるまに かごは サケでいっぱいになった。すると、どこからか やせこけたいぬが あらわれて キュンキュンとないたので、まるまるとふとったサケをいっぴき、わけてあげた。
パナンぺが かえろうとあるきだすと、金と銀のこいぬが とびだしてきた。こいぬのあとをついていくと、大きないえがあらわれた。「よく、おいでくだされた。ここは、いぬのむら。それがしは、いぬのむらのエカシでござる」サケをあげた いぬは このむらおさの むすめだった。「さあ、みなのしゅう、うたげじゃ、おどりじゃ」みたこともない ごちそうがならび、おおぜいいのむらびとたちが、うたいおどってくれた。パナンぺは銀のこいぬを おみやげにもらった。〜アンナホーレ ホレホレ おわかれはつらいけど また おめにかかります〜いえにかえると、こいぬは〜わたしの あたま 三どたたいて ヒオーイオイ〜と、うたった。「おや、まあ」ばあさまが やさしく ゆびで ポンポンポンと、たたくと…みごとな かたなにかわって、へやには、たくさんのたからものが、かがやいている。これをかくれてみていたペナンぺが、いえにとびこんできた。
「おめえばかりが いいめにあうとは、きにいらねえ」と、おおごえでどなると、ペナンぺは とぐちに おしっこをひかけて、パナンぺからきいたとおりに、かわへと はしった。やっとこさ、サケをとって、「これでもくらえ」とサケのしっぽをちょんぎって、あらわれたやせこけたいぬに、なげてやった。にげるこいぬをおいかけ、いぬのむらのいえまでくると「くうものをくい、もらうものをもらわねば、かえるわけにはゆかねえ!」ペナンぺは、てあたりしだい ごちそうをくいあらし、しこたま さけをのみまくった。いやがるこいぬを ひきずってかえると、ばあさまが、まきのぼうで こいぬのあたまをぶちのめした。
とたんに、ガラガラドシン!ペナンぺとばあさまは、いぬのくそや、たべかすや、ちりや、あくたのごみのやまに、ずっぽり くびまでうまっておったと。

いまいる人びとよ、いかなるものにも れいぎただしく まことをつくさねばならぬ

   「ウポポイ」という言葉を知っていますか?アイヌ語で「みんなで歌う」という言葉だそうです。 アイヌ民族とは、元々北海道にいた先住民族です。 「ウポポイ」の愛称がついた施設が北海道で4月にオープン予定でしたが、5月末に延期になりました。 正式名称は、「民族共生象徴空間」といいます。 アイヌの文化を国内外に紹介する拠点として国が整備を進めてきた施設です。 この話もアイヌ民族に伝わる民話の一つです。 伝え方は口承で語り継がれてきました。 「ウポポイ」の施設の中にも、民話のみならず音楽や風習、食べ物など様々なものが伝えられているそうです。

   絵本「パナンぺ ペナンぺ」には、一冊の中に二つのお話がつながって描かれています。 今回は前半部分をご紹介しています。 後半部分のお話も二人のじいさんが巻き起こすことは、それぞれ面白くて愉しくて、くさ〜〜いおならもでてきます。 こんな風に、放屁や大便にちなむ笑い話はアイヌ独特のものではなく、日本を含む東アジアに似たようなお話がたくさんあるようです。 話のところどころに、いかにも口伝えで歌われたような言葉がでてきますので、調子をつけながら読み進めると、より味わいがあります。 裏表紙には、譜面もありますので、楽器のできる方は是非奏でてみてほしいですね。

   パナンぺ、ペナンぺにまつわるお話は、滑稽話が多いのですが、実は人間の祖のように表現されるお話もあるそうです。この絵本の最後には,こんな言葉が書かれています。

パナンぺもアイヌ、ペナンぺもアイヌ、たったパとペのちがいだけ。
ふたりはともに、おなじ、アイヌだ。
ゆたかで、自由な、アイヌモシリの、
ほこりたかい人間なのだ。


(*残念ながら、現在絶版中です、図書館等でぜひ出会ってください)

(赤鬼こと山ア祐美子)

戻る


赤鬼からの手紙(2020年4月号)



『 1ねん1くみペット大会 』

アンドリュー&ダイアナ・デイビス 作
ホール・トーリング 絵
おか せいこ訳

岩崎書店

   せっかくの春なのに、コロナウイルス感染で学校が休みになったり、様々な施設も休館になったりしています。病気になってしまった時の治療は医学にお任せするしかないのですが、普段からの私たちの姿勢や努力で防ぐことも可能と言われています。家族や身近な人たち、お友達などと知恵を絞って向かっていかれるといいですね。とはいえ、あたりはすっかり明るい春の装いです。新しい気持ちで迎えることもたくさんありますね。新入学、新学期、わくわくすることも待っています。小さな小さな子が大きな大きなこともできるんです!

 プーナンは 1ねん1くみ。いちばん小さくて、いちばんおとなしい女の子。口のそばまで みみをちかづけないと こえもきこえないくらい。
 ある日、ウイッグ先生がいいました。「ペット大会をひらきます。みなさんのペットを学校につれてきてください。ペットをかっている人は、手をあげて」クラスじゅうの子が手をあげました。「では どんなペットを かっているのかな?」
イヌ、ネコ、キンギョ、ウサギ、キリン・・・ぜんぶに手をあげたのはランジーブだけ。
プーナンは ぜんぜん手をあげません。「プーナン、あなたはどんなペットをかっているの?」ウイッグ先生が ききました。先生がプーナンの口のちかくに みみをもっていくと、プーナンは なにかささやきました。「ブーナンは ライオンをかっているんですって」先生がみんなにいいました。ブーナンは、ほんのちょっぴり にこっとしました。
 金よう日、いろんなペットがあつまりました。くるまにのったり、はこにいれられたり、こやごとはこばれてきたり、とりかごにはいっていたり―――いろいろです。
 もう そろそろ 大会をはじめるじかん。プーナンだけが まだきません。ウイッグ先生は、とけいを見ながら「さあ、じかんですよ。しずかにならびましょう。イヌはひだりのれつ、ネコはみぎですよ」やっと、みんなは たいいくかんに むかいました。たいいくかんの中では、イヌが かたがわに、ネコは はんたいがわに、きれいにならびました。
 キンギョはとてもおとなしいので どこにいてもだいじょうぶです。ほかのクラスのこどもたちが見ているので、1くみのせいとは、とってもうれしくて はなたかだか。でも、プーナンは まだきません。ウイッグ先生がたいいくかんのいりぐちに たちました。
 「おはようございます、みなさん。1くみの 大ペット大会へ ようこそ」
そのときです。
プーナンが入ってきました。そして、そのうしろから とってもしずかに きちんとならんで はいってきたのは・・・・・6ぴきの 大きな ライオンでした!
 イヌやネコ、ほかのペットたちはふるえています。子どもたちもこわくて、おもわずにげだそうとしました。プーナンは先生に、なにかささやきながら、みんなにライオンのげいを みせてあげました。子どもたちは、大よろこびで、大はくしゅ。プーナンが、またなにか 先生にささやきました。「じぶんで みんなに きいてごらんなさい」と先生がこたえると、プーナンはくるりとふりむいて、それはそれは、おおきな こえでいました。
「だれか、わたしのライオンに のってみたい人は いませんか?」
 プーナンと6ぴきのライオンは、一日じゅう みんなとあそびました。プーナンは いまでも やっぱり いちばんちいさくて おとなしい女の子です。でも、だいじなことをいうときには、ちゃんと いえるようになりました。ペット大会がおわって、そのあと プーナンのライオンを見た人は、だれもいません。

   みなさんは、どんなペットを飼っていますか? 我が家には、熱帯魚、鳥たちがいます。以前は、犬、猫、フクロモモンガなども飼ったことがあります。子どもたちがハムスターを育てていたこともありました。ペットは、かわいがるだけではなく、ちゃんと世話をしなければなりません、命を預かる責任がありますね。

   それにしても、このウイッグ先生の提案は大胆です。学校でペット大会なんて…みんな自分の自慢のペットを連れてくることに胸を張っている様子は、どの子もどの子も見ていて楽しくなります。いちばんちいさいプーナンのペットが、まさか6匹のライオンとは!大会を企画した先生もさぞ、驚いたことでしょうが、プーナンの様子をしっかり見据えています。いつもなら、声も出せないくらいのプーナンは、自慢のライオンの芸をみんなに披露することで、大きな自信がついたのかもしれません。

   作者のダイアナ・デイビスは約20年間小学校の教師をしていたそうです。子どもたちへのまなざしにも、そんな経験からの思いが絵本の中に細やかに表現されています。いつも声を出せないプーナンのことがダイアナさんは、気がかりであったのでしょう、そしてきっと、教師生活の中でそんな子供たちにたくさん出会ってきたのでしょう。こんな絵本を描くダイアナさんは、どんな先生だったのか、当時の生徒たちに聞いてみたくなりました。

   4月は、新しい出会いがたくさん待っています。今年度も楽しい1年になりますように!

(赤鬼こと山ア祐美子)


戻る


赤鬼からの手紙(2020年3月号)



『おかあさんの紙びな』

作/長崎源之助
絵/山中冬児


岩崎書店


   早々と春一番が吹いて、今年の春は駆け足ですぐそこまで来ています。梅の花はもう満開になって、いい香りがしています。桃の花も咲き始めました。穏やかな風が運ばれて、暖かいのは有難いですが、年ごとに冬らしい寒さが遠のいているのも実感します。南極大陸の温度も上昇しているというニュースも聞きました。異常気象の葉歯止めがきかない世界は季節も様変わりさせていってしまいそうです。そんな中でも季節にまつわる行事は、人々の力で守られ続けています。桃の花と共にやってくるのは「ひな祭り」女の子にとっては大事なお祭りです。

さて、どんなお雛様でしょうか・・・

ここを こうおって、うらがえしに こうたたんで、はい、女びなのできあがり。 おばさんは 折り紙がじょうずね、、、そりゃ、もう何百もおってるんだもの、、、
わたしがこどもだったころ、せんそうがあってね、てきのひこうきが まいにちのように ばくだんをおとしたの。だから、おひなまつりどころではなかったの。
おひなさまは、くうしゅうから まもるために いなかにあずけちゃったのよ。それで、わたしのいえは、やけてしまったけれど、おひなさまだけは たすかったというわけ。
せんそうが おわると、たべものがなくなって、日本人は、おなかをすかしていたの。
「なにか たべたいよう。」
ちいさいわたしは、ないてばかりいた。
ある日、おかあさんは どっさり しろいごはんをたべさせてくれた。
わたしは むちゅうで たべちゃった。
「まいにち、おなかいっぱい たべさせて あげたいわね。」
と、おかあさんは さびしそうに ためいきをついた。
三月になって、そのおこめは、おひなさまととりかえたのだと、しって一日じゅうなきどうしないちゃった。
そのとき、おかあさんがつくってくれたのが、紙の おひなさまなのよ。
「こんなのいやだ、ほんとのおひなさまでなけりゃ」
と、わたしは、だだをこねた。でも、おかあさんは だまって 紙のおひなさまを おっていたわ。おかあさんは 声をかみころし、かたをふるわせ、なきながら、それでも こんきよく つくりつづけてくれたっけ。
おかあさんのなみだを みたら、わたしは、とってもわるいことをしたようなきがして、かなしくなっちゃったわ。
そのご、三月になると、いつも おかあさんといっしょに おひなさまを おるようになったの。
わたしは、どんなりっぱなおひなさまより、紙のおひなさまが すきになったわ。
さあ、あなたたちも おぼえてちょうだいね。ここを こうおって こうたたんで・・・・・。

   最近のおひな様事情は、目を見張るようなものが次々に生まれています。 時代に合わせたものや時代を先取りしたものなど、目にも鮮やかなものがたくさん飛び込んできます。 そもそも、ひなまつりの由来はどんなものだったのでしょうか、こんなことが書かれています。
〜ひな祭りの起源は中国までさかのぼれるとされています。昔、漢の時代の徐肇(じょちょう)という男おり、3人の女児をもうけたにも関わらず、3人とも3日以内に死んでしまいました。その嘆き悲しむ様子を見た同じ村の人たちが酒を持ち、3人の女児の亡骸を清めて水葬したことに由来しているとされています。それが平安時代になると、「上巳の祓い」といって、3月3日に陰陽師を呼びお祓いをさせ、自分の身に降りかかる災難を自分の生年月日を書いた紙の人形(ひとがた)に移らせて川に流しました。この厄払い様子は今でも下鴨神社で行われる「流しびな」の行事に再現されています。〜
   「流しびな」の映像は何度かTVなどで見たことがあります。元々のお雛様は紙のお人形だったのですね。今も女の子の健康と幸福を祈る気持ちには変わりがありません。この絵本のお話では、折り紙上手なおばさんの戦争中の出来事として話されていますが、お雛様を白米に変えても娘に食べさせたかった母の思いと、それにもましてお雛様を見せてやりたい母の思いとが重なって紙のお雛様に描かれています。ちいさかったおばさんのお母さんが、懸命に泣きながら折り紙を折る姿は、思い浮かべるだけで胸が痛くなります。
   今年は紙びなをおって、「ひな祭り」のお祝いをしてみませんか?

(赤鬼こと山ア祐美子)


戻る






Copyright © 2019, SEIAI Yochien.
本ページと付随するページの内容の一部または全部について聖愛幼稚園の許諾を得ずに、
いかなる方法においても無断で複写、複製する事は禁じられています。
mail@seiai.net