学校法人
認定こども園 聖愛幼稚園

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Last Update: 19/02/15

赤鬼からの手紙・・・1978年から1981年までのたった3年間、甲府の中心地に児童書専門店『赤鬼』と いう小さな本屋さんがありました。当時は希少な絵本中心の児童書専門ということで、地元山梨のみならず 全国にファンが広がっていた素敵な本屋さんでした。その後、一男二女の母となった赤鬼は子育ての大事業を 志し、後に東京都練馬区教育委員会の教育委員を務める等、常に母親の立場から目覚ましい活躍をしてきました。 今も文部科学省委託事業『新教育システム開発プログラム』作成に参画して日本国中を東奔西走しています。 赤鬼と小学校以来の幼馴染の私は、3年ほど前から故郷山梨の子どもたちのために絵本の紹介を 書いてくれるようお願いしてきました。やっとこの2007年5月から毎月お手紙をもらえることになりました。 赤鬼おススメの絵本は、聖愛幼稚園の子育て支援センター『あんぱんくらぶ』の本棚でいつでもご覧いただけます。 なんたって『赤鬼からの手紙』です。どうぞ、お楽しみに。(園長 鈴木)




赤鬼からの手紙(2019年2月号)



落語絵本五『おにのめん』

川端 誠 著

クレヨンハウス


   この冬は、西高東低の気圧配置が続いています。 太平洋側はカラカラ陽気で雨が欲しいくらいですが、日本海側や北海道は強い寒気と共に大雪に見舞われています。 細長い日本の自然現象は、こんなにも違うものなのだと実感します。 雪による大きな被害が起こらないようにと願うばかりですが、この寒さはまだまだ続きそうです。 待ち遠しい春に思いを寄せながら、「笑い」で寒さを吹き飛ばすのはいかがでしょう。 おやおや、こんなところに「おにのめん」が・・・

お春は親もとをはなれて、河内屋という荒物問屋に「奉公」にでてはたらいておりました。
しごとはそうじ、せんたく、子守りなど…きょうも赤ん坊をおぶって、いつものように道具屋のまえにやってきました。
「おじょうちゃん。まいにちこのおめんをじーっとみとるけど、なんかあるのんか」
「このおめんの顔、あたいのおかんに、そっくりなんや。おかんをおもいだすんや。」
「それやったら、こうていったらええやないかあ」
「お金あらへん」
道具屋のおっちゃん、しばらくかんがえこんでおりましたが・・・
「・・・ほんなら、このおめん、おじょうちゃんに、やるさかい、もっていき」
「おっちゃん、ほんまか…おおきに」
お春はじぶんのへやのたんすのひきだしにしまいました。
暮れもおしせまったある日のこと、若だんなの徳兵衛はたんすのなかをみつめるお春をみつけました。お春がいなくなるのをまって、ひきだしをあけてみました。
「ありゃりゃ、このおめんは―――、お春のおかんにそっくりやんか。お春のやつ、さびしなったら、このおめんにあいにきたっとんや。かわいやっちゃなあ。」
ところが、なにをおもったか・・・お春のおめんをとりだすと、かわりにおにのめんをさしいれました。徳兵衛、年がいもないいたずらをかんがえたもんで・・・。
ひとしごとをおえて、たんすのひきだしをあけたお春はびっくりぎょうてん。 「おかんの顔がおにの顔になっとる!!」
お春はおかんにたいへんなことがおこったとおもいこみ、おにもめんを手にとると、とるものもとりあえず、お店をとびだしてわが家にむかいました。
「おーい、お春はどこや」
ご主人の善右衛門さん、番頭の喜助も女中のお松も、お竹も、丁稚の梅吉もしらないようで、
「おかしいなあ、徳兵衛、おまえしらへんか」
「あっ!」おめんのことをおもいだし、「しりまへんが、ただ、ちょっと・・・」
徳兵衛がじぶんのやったことを善右衛門にはなすと、
「なんやてえ!あほなことしよって」「・・・こりゃあ、えらいこっちゃ」
「お春をさがせ!」店のものをよびあつめ、さがしますがみつかりません。
徳兵衛は、まっさお。
お春の家は、河内屋のお店からおとなの足でも半日かかる田舎、道をいそぐお春。
・・・さてさて、お春はどうなったでしょうねえ。

   2月は、いつものように鬼のお話ですが、今回はちょっと変わったお話です。 「おにのめん」は落語で語られるお話です。 川端誠さんがライフワークとして掲げている落語絵本シリーズの一冊、ほかにもお馴染みの「じゅげむ」「まんじゅうこわい」「めぐろのさんま」などをはじめ、すでに15の落語が絵本として出版されています。

   子供の頃にラジオで落語を聞いてから、筋金入りの落語好きという川端さんは、落語と絵本との関わりをこんな風に話されています。
「うまい噺家にかかると、何度おなじ噺を聞いてもおもしろい。 ストーリーもオチもよく知っていても、聞けば聞くほど、おもしろい。 ちょうど、子どもが同じ絵本を何度でもくりかえし読むのと同じなのかな。 絵本と落語とは、けっこう近く、落語を聞いていると、これは絵本になりそうだというものが、いくらでもありますよ。」

   このシリーズを一冊でも手に取ると、一人で面と向かっても、読み聞かせの会でも、また、お芝居の様に掛け合いしながら読み合わせても楽しむことが出来ます。 いろんな読み方をしてみたくなるのも大きな魅力です。 そしていつの間にか、どんどん次のお話を手に取りたくなってきます。 登場人物の表情や仕草だけでなく、絵の中にある背景や小道具たちを、一つ一つ見ていくと、まるで映画でも見ているように話の筋がより際立って聞こえてきてワクワクしてきます。

   川端さんは「落語絵本は、江戸の暮らしを伝える図鑑でもある。 時代のなかで消えてしまう言葉や風俗・文化があれば、時代を越えても変わらない人情や生き方などもある・・・。 おおいに笑って絵本をたのしみながらも、なにかを感じとったり、知らないうちに記憶に刻まれていくことがあるはず。」とも話されます。 ページをめくっていくと、確かな時代考証に裏付けされたきめ細やかな表現がされていることに気づきます。 今の私たちの暮らしのもとには、こんな日本の歴史があるんだと思うこともしばしばあります。

   落語なんて聞いたこともないし・・・ちょっと難しいと思う方がいるかもしれません、いえいえ、必ず見合う内容の落語がありますので、手に取ってみてください。 きっと、この寒さを吹き飛ばしてくれるはず・・・「笑う門には福来る」

(赤鬼こと山ア祐美子)

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赤鬼からの手紙(2019年1月号)



『十二支のはじまり (おひさまのほん) 』

やまちかずひろ 著
荒井 良二 絵

小学館

   あけましておめでとうございます!2019年の始まりです。 そして、今年は年号が変わるという大事な年でもあります。 日本は西暦だけではなく、独自の「年号(元号)」という数え方もあります。 そのうえ、「干支」という数え方もあります。 今年はいのしし年、十二支の順番で数えると、一番最後の年。12年一巡りの納めの年のようですが、いえいえ、猪突猛進、いのししの様にまっすぐにすすんでいきたいですね。 あらっ、このいのししは・・・どうやら、通り過ぎたって・・・?!

 「おしょうがつに はなにをしよう。だれか あそびに こないかなあ。・・・」
かみさまは、「いいことを おもいついたぞ!」と、どうぶつひろばにでかけて みんなにいいました。「らいねんの いちがつついたちに、わたしのいえで ごちそうたいかいを ひらきます。じゅうにばんめまでに くると、ごほうびがあります。」どうぶつたちは ぜひとも かみさまのいえに いこうと きめました。ひろばからの かえりみち、ねこはともだちのねずみに ききました。「かみさまの いえへいくのは なんにち?ぼく わすれちゃった。」ねずみは かんがえました。(ねこくんに まけると くやしいしいから、ほんとうのことは いわずにおこう)
「たしか ふつかと おっしゃったよ。」「そうか、ありがとう。」
 ついたちのあさ すぐにでかけられるように ねずみはそとで ねることにしました。よなかに めをさますと そこは うしのせなかのうえでした。うしは ねずみをのせたまま ゆっくりとあるきます。そらが あかるくなるころ やっと、かみさまのいえに つきました。「うしさん どうもありがとう。」と ねずみが とびおりたとたんに かみさまが でてきて いいました。「ねずみが いちばん うしが にばん。」ねずみは おどろいて いいました。「のせてもらったのに ぼくがいちばんでごめんね。」「いいえ、わたしはにばんで じゅうぶんですよ」つぎにきたのは とらでした。「ガオーッ。さんばんめとは なさけない。」よんばんめは うさぎ。たつは ごおーっと そらをとび、ごばん。へびは するする ろくばん。ひつじが しちばん、とおもったら、うまが うまくすべりこみ しちばん。ひつじは はちばんでした。さると いぬが けんかをしながら あるいていると にわとりが「けんかは もう けっこう。」と わりこんできたので、さる、とり、いぬ のじゅんばんに なりました。みんなと はんたいのほうから やってきたのは いのししです。「はやく はしりすぎ、きゅうにとまれず、とおりすぎ、もどってきたら じゅうにばん。でも、よかった。」
 ほかのどうぶつたちも たくさんあつまって ごちそうたいかいの はじまりです。「ごほうびの はっぴょうをします。いちばんにきた ねずみのために ことしを『ねずみどし』にします。」とかみさまが いいました。「ぼくの としですって!」 ねずみは おおよろこび。「らいねんは『うしどし』で、そのあとも きたじゅんばんに、『とらどし』『うさぎどし』・・・これを じゅうにしと よぶことにします。」みんなが ざわざわするなか、だれかが ふと いいました。「おや、ねこさんは きていないね。」ねずみは はっとなって(ぼくが うそをおしえたからだ。ねこさんが くれば もっとたのしかったろうに。)
 さてさて、ねこは どうなったでしょうか・・・・

   十二支の始まりの絵本は、たくさんあります。お話を読むと、自分の知っている内容とちょっと違う…と思う方もいるかもしれませんね。十二支は元々中国から伝わりました。日本では時刻を表したり、占いなどにも用いられたりしながら、人々の生活に溶け込んでいました。現在は、あまり意識しない人の方が多くなってきたようですが、お正月のこの時期や、赤ちゃんが誕生したりすると、改めて思い描くことに繋がります。

   日本文化としても、確立しているこの十二支をこんな風に楽しく伝えるのも、子どもたちには身近なものに感じてくれるように思います。それぞれの動物の特徴を細かくとらえながら、優しいまなざしでお話が進んでいきます。神さまの食事会が12の動物だけのものではなくて、そのほかのたくさんの動物たちも集うところが賑やかそうで、うきうきしてきます。そして、神さまは、たったひとりで出かけてきた猫も、ちゃんと迎えてごちそうしてくれています。思わず、よかったあ…とほっとしました。猫とネズミの関係も、これから時間をかけて、きっと修復されていくでしょう。荒井良二さんの絵は、お話をより一層温かく細やかに描かれ、それぞれの動物たちの性格までも伝わってきます。十二支の始まりには、諸説ありますが、子どもたちに寄り添った、こんな終わり方も素敵だなと、私は思います。

   2019年平成31年1月から始まるこの1年、絵本の猫とネズミの様に、世界中が手をつなぎ、心温まる年であってほしいと願っています。

(赤鬼こと山ア祐美子)


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赤鬼からの手紙(2018年12月号)



『イエス』

藤城清治 著

日本基督教団出版局


   1年の締めくくりの季節がやってきました。12月の声を聞くと、なんとなくそわそわしてしまいます。今年中にやっておきたいことや、やっておかなければならないことなどが頭に浮かんできます。でも、こんなときこそ、慌てずにゆっくり1年を思い返すことも大切なことかもしれません。振り返ると今年だけでも様々な災害に遭われた方々が沢山います。その方々が普段の生活を取り戻すにはまだまだ困難なことがあることも忘れてはならないことです。冷え込んだ街中は、もうすっかりクリスマスを迎える装いになっています。キラキラしたイルミネーションばかりが目に飛び込んできますが、そんな中でもじっと一つの灯りを見つめ、その影を芸術に高めた作品をご紹介します。

天使のお告げ ルカ1:24〜38 マタイ1:18〜25
イエスの誕生 マタイ2:1〜12 ルカ2:1〜20
少年イエス  ルカ2:41〜50
イエスの受洗 マタイ3:13〜17 マルコ1:9〜11 ルカ3:21〜22 ヨハネ1:29〜34
荒野の試み  マタイ4:1〜11 マルコ1:12〜13 ルカ4:1〜13
弟子を招くイエス マタイ4:18〜22 マルコ1:16〜20 ルカ5:1〜11(ヨハネ21:1〜11)
カナの結婚式 ヨハネ2:1〜11
山上の説教 マタイ5:1〜7:28(ルカ6:17〜49)
ガリラヤ湖の嵐 マタイ8:23〜27 マルコ4:35〜41 ルカ8:22〜25
旅人を助けるサマリア人 ルカ10:25〜37(マタイ22:34〜40 マルコ12:28〜31)
迷子の羊 マタイ18:12〜13 ルカ15:3〜7
イエスと子供たち マタイ19:13〜15 マルコ10:13〜16 ルカ18:15〜17
イエスとザアカイ ルカ19:1〜10
病人のいやし ルカ5:17〜26 マルコ2:1〜12(マタイ9:1〜8)
山上の変容 マタイ17:1〜8 マルコ9:2〜8 ルカ9:28〜36
エルサレム入城 マタイ21:1〜11 マルコ11:1〜10 ルカ19:29〜40 ヨハネ12:12〜19
宮きよめ マタイ21:12〜17 マルコ11:15〜17 ルカ19:45〜46 ヨハネ2:13〜17
ナルドの香油を注ぐ女 マタイ26:6〜13 マルコ14:3〜9 ルカ7:36〜50 ヨハネ12:1〜8
最後の晩餐 マタイ26:17〜35 マルコ14:12〜31 ルカ22:7〜38(ヨハネ13:1〜30)
ゲッセマネの祈り マタイ26:36〜46 マルコ14:32〜42 ルカ22:40〜46(ヨハネ18:1)
十字架 マタイ27:32〜44 マルコ15:21〜32 ルカ23:26〜43 ヨハネ19:16〜37
復活 マタイ28:1〜10 マルコ16:1〜8 ルカ24:1〜12 ヨハネ20:1〜18


   94歳の現役影絵作家、藤城清治さんの「イエス」。 この絵本をどこかで見かけた方もたくさんおられるかもしれませんね。昇仙峡には藤城清治美術館もありますから、行かれた方もいるでしょう。 この絵本にはお話はありません。巻末に、影絵の画題と、それにちなんだ聖句の個所が丁寧に掲載されています。お馴染みの聖書のお話ばかりですが、作品としてこの影絵にたどり着くまで大変なご苦労があったと藤城さんは語られています。

   「ぼくは、はじめこの本にとりかかったとき、半年くらいでできるだろうと思っていた…あらためて聖書に関しての資料をいろいろ読んだりみたりしていくうちに、聖書の持つ壮大さ、崇高さというものは、1週間で1枚つくりあげてゆくようなことでは、到底できないことだと分かった。…とうとう足掛け3年たってしまった。」
そして、聖書画の世界と影絵の世界は、共通しているものがあると・・・それは”光”というものである・・・光に照らし出された影絵の世界には、何か清らかな透明感や神秘性があって、それはまた、キリストの世界にも通じていくような気がする・・・とも語っています。 この絵本の1枚1枚を見つめていくと、紙面ではありますが光の温かさが伝わってくるような気がします。 ご本人が言うように、聖書物語の表現は影絵がぴったりなように思えてきます。

   藤城さんは、常に新しい挑戦をなさっています。 ずっと描いてきたメルヘンの世界から、今伝えなければならないと、ヒロシマの原爆ドームや東日本大震災の悲しさ、辛さ、乗り越えようとする人々の力なども描き続けています。 藤城さんのアトリエには、いろんな生き物たちが同居しているTV画面を見たことがあります。 制作中の影絵の上を猫が歩き回っても、追い払うことなどまったくありません。 藤城さんは平気な顔で作業を続けています。 それは、藤城さんのテーマの一つには、「生命の大切さ」があるからだと思います。 たとえ、どんなに哀しく辛い画面にも、あの大きな目をした、とんがり帽子の小人がいるのは、命の輝きの象徴なのだと・・・。

   今年のクリスマスを思うとき、この絵本のページを開いて"光"を感じていただけたらと思います。
  〜地には平和、人には喜びを〜
”Joy to the World! Happy Merry Christmas to You! ”


(赤鬼こと山ア祐美子)


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