学校法人
認定こども園 聖愛幼稚園

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レッジョ・エミリア探訪

聖愛幼稚園 鈴木信行

   イタリアの北西中部にレッジョ・エミリア市という小さな町があります。 人口16万人ほどのこの町の幼児教育が、今日、世界で最も高い評価を受け、 全世界中の教師たちの注目を集めているのです。わたしは全国の幼稚園・保育園の 園長たち50人余りと共にレッジョ・エミリアの幼児教育システムを現地で 学ぶ機会に恵まれました。

   第2次大戦の瓦礫の中から立ち上がろうとしていたレッジョ・エミリア市の 人々は、新たな街づくりの中核として幼児教育を位置づけ、その創始者 ローリス・マグラッチを中心に自分たちの保育施設を作ろうとしていた 熱意ある親たちと共に新しい幼児教育システムを作り上げました。 今では3歳〜6歳の子どものための22校の幼児学校と、4ヶ月〜36ヶ月の 子どものための13の乳幼児センターがあります。日本のように幼稚園と 保育園に分かれていません。

   レッジョの教育は、まず、子どもが主役で、有能で社会的存在であることから始まります。 子どもは他者との相互の関係によって動機づけられ、そこから学ぶものととらえられています。 両親、保育者、保育スタッフ(ベタゴジスタと呼ばれる教育専門家とアトリエリスタと 呼ばれる常駐の芸術家)、行政が幼児学校を支援するため力を出し合います。 特に印象的なのは両親がプログラムの計画づくりに参加し、子どもと一緒に活動したり、 特別な活動が行われるときには参加したり支援したりすることです。 そのために月に一度は夕食後に親たちと保育者の会合が開催されます。 親たちに幼児教育に直接関わる権利を保障しているのです。

   レッジョの教育を特徴づけているのは、各幼児学校に1人ずつアトリエリスタが いてアトリエと呼ばれる部屋での活動を進める役割を持っていることです。 芸術家であるアトリエリスタは各クラスの保育者と共同して子どもと共に創造し、 一人ひとりの子どもの活動と各プロジェクトの経過を記録します。(つづく)



レッジョ・エミリア探訪(2)

聖愛幼稚園 鈴木信行

  前回(11月号掲載)お話したように、レッジョ・エミリア市の 幼児学校にはどこにもアトリエスタと呼ばれる美術系の芸術家が1人配置されていて、 クラスの担任教師といっしょに子どもの創造的活動の実践を支援してます。 どの幼児学校も校内の様々な壁や棚に子どもたちの素晴らしい作品群があふれ、 それらを生み出すアトリエと呼ばれる教室には実に豊富な素材が整理分類されて 並べられています。様々な葉、木の実、小枝、動物の骨や貝殻、色別にビンに入った砂、 石等々の自然素材。金属の破片、大小のボルトナット、電気器具の部品、釘や針金、 多様な色や形のプラスチックの破片等々まで、あらゆるものが造形的な表現活動の 素材です。校内は光と影の織り成す演出がなされています。オープンスペースには、 3枚の大きな合わせ鏡、下から光があてられているライティングテーブル、 投光機として用いられているOHP等々。そのどれもが光と影が生み出す不思議な 空間となり、子どもの造形的な表現手段になっています。

   ところで幼児学校(3歳〜6歳)のクラスは年齢別になっていて、1クラス25名の 子どもたちに対等な立場の教師2名が指導しています。子どもたちの活動は4〜5人の 小グループによる長期のプロジェクト活動を中心に行われています。私たちが訪問した ときは10月末ということもあり「秋の葉」をテーマにしたプロジェクトが行われていました。 一つのグループは、林の中の自然のままの庭(遊具はほとんどなく、広場もない)で 種類の違う木々の落ち葉やまだ枝についている生きた葉を集めてきて、葉の色や形を 観察し、生きた葉と落ち葉との違いを顕微鏡で葉脈を見たりして様々な発見をしている ところでした。アートの視点のみならず身近な自然や科学へのさりげないアプローチに 感心すると共に、その活動がどのように発展していくのかとても興味深く感じました。 子どもたちはそのようなプロジェクト学習を展開し、子ども相互の、又、アトリエスタや クラス担任との共同作業とコミュニケーションを通じて学び成長するのでしょう。

   その日の活動は教師たちによって記録(文字、写真、ビデオ等)され、 一連の活動が「ドキュメンテーション」と呼ばれる実践記録―これもレッジョの教育の特徴―に なります。「ドキュメンテーション」は子どもたちにとっては活動をふり返る資料として、 教師たちの子ども理解や研究の資料として、また、教師と親たちの共同活動の資料として 徹底して活用されるのです。  (つづく)





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