暑い暑いと過ごしてきた夏も、やっと陰りが見えてきたようです。吹く風も、心地よく秋めいてきました。空にはもう入道雲の姿はありません。すじ雲や鰯雲、羊雲が流れていきます。ちゃんと季節は巡ってきています。稲穂も刈り取られ、裸のようになった田んぼにはトンボが舞っています。実りの秋は、私たちの食卓を色とりどりに豊かにしてくれますね。
食べたいものが、すぐ目の前にあるって、ほんとに幸せなことなんです。
たった15つぶの大豆が、一日の食べ物なんて、信じられますか?
80数年前の日本の暮らしを、あの「トットちゃん」が教えてくれました。
トットちゃんが、小学2年生のとき。日本は戦争をはじめました。
戦争をはじめる前は、雨の日が好きだったトットちゃん。それは、夕方にはパパがいるし、犬のロッキーも特別に家の中にいて、みんなあたたかい明るい家にいるからです。
「安心だなあ。うれしいなあ」トットちゃんは幸せでした。
戦争がはじまると、「ねむいし、さむいし、おなかがすいた」が口ぐせになりました。
爆弾をつんだB29という飛行機が飛んでくるたびに、庭につくった防空壕ににげこみました。その大きな穴の中で、いつ爆弾がおちるかとどきどきして、夜も眠ることもできなかったのです。食べるものがなくなってきました。大事な人もいなくなりました。トットちゃんのパパも兵隊さんになって家からいなくなりました。
戦争をはじめる前、トットちゃんのトモエ学園でのお弁当の時間はとてもたのしかったのです。
みんなのお弁当をのぞいては、「海!」と校長先生が言うとき、海のものが足りないお弁当には奥さんがちくわをたしてくれます。
「山!」と言うときは、おいものにっころがしをたしてくれます。なのに、戦争がはじまると、海のもの山のものどころか、食べるものがなくなったのです。
とうとう、トットちゃんの一日の食べものは、だいずが15つぶだけになってしまいました。ママが毎朝、だいずをフライパンで炒って、それをふうとうに入れてトットちゃんにわたします。「これがあなたの一日ぶんのたべものよ。」お弁当が、ふうとうに入った15つぶの豆!「帰ってきても、ほかにないからよーくかんがえてたべるのよ。食べたら、お水をいっぱいのむのよ。豆がふくらんで、おなかいっぱいになるわ」トットちゃんは、学校につくまでに、がまんできなくて、つい3つぶ食べてしまいました。残りは12つぶです。授業中に空襲警報が鳴って、防空壕ににげこみました。お昼になりました。お弁当の代わりに、だいずを3つぶ食べました。残りは9つぶです。まだ、防空壕からでられません。トットちゃんは、だいずをもう2つぶ食べてしまいます。いいや!みんなたべちゃおうかなあ?残った7つぶをみつめます。やっぱり、食べちゃおうかな? トットちゃんは なやみます。
警報解除のサイレンがなりました。「今日はもう帰っていいですよ」と先生がおっしゃいました。トットちゃんは、だいず7つぶを残せました。帰ってからたべるものがあります。
家が近づいてくると、家はあるかな?ママは生きているだろうか?ロッキーは生きているだろうか?ドキドキしながら目をあげます。ああ、みんな生きている!
夕ごはんに、残してきた7つぶの豆をたべました。7つぶでも食べるものがあります。ママもロッキーも生きています。家もあります。トットちゃんは、うれしいのです。
そんな毎日を過ごすうち、トットちゃんは、やせ細っていきました。栄養不良で、からだじゅうおできだらけになりました。そして、東京大空襲でたくさんの人が死にました。東京にすめなくなったトットちゃん一家は青森県に疎開しました。戦争は4年も続きました。
あれから何十年もたち、トットちゃんは今、ユニセフ親善大使として、世界中の恵まれない子供たちを抱きしめています。
今年は、戦後80年という事で、平和を願う絵本がたくさん紹介されています。
トットちゃんこと、黒柳徹子さん。徹子さんは、戦争の話を語り継ぐことをとても大事にされています。
このお話も、何度か話題になったものです。
それが、絵本になって子どもたちに届けられました。
ここにはご紹介しきれませんでしたが、絵本の中にあるキャラメル自販機の話題も戦時中なのに楽しいお話しの一つです。
ぜひ、手に取って読み返してみてください。ちょうど今、NHK朝ドラ再放送で「チョっちゃん」が放映されていますが、徹子さんのお母様、黒柳朝さんのお話しです。
明るく力強くエネルギーに溢れたお母様です。子どもたちを抱え疎開中でも笑顔を絶やさない、そんな姿が徹子さんを彷彿させますね。
この絵本の文章を担当された柏葉幸子さんの言葉にドキッとしました。冒頭に
〜トットちゃんが、小学2年生のとき。日本は戦争をはじめました。〜
戦争がはじまった〜のではなく、はじめました〜とは、とても意味深い言葉です。
戦争は、人間が始めなければ、始まらないのです、今世界中起きている戦争も、人間が始めたものです。
だから、戦争を止めるのも人間なのです。私たち日本人は、戦争の被害者であると同時に、加害者であることも決して忘れてはならないことを、改めて実感しました。
加害者であることも決して忘れてはならないことを、改めて実感しました。
巻末にある徹子さんの言葉を添えておきます。
「戦争程、おそろしいものはありません。大好きなお父様は、戦場に行ってしまいます。食べ物はありません。15つぶのだいずが、一日の食べ物です。夜は敵の飛行機が爆弾を落としにくるので、ベッドでは寝られません。庭に掘った穴のなかに、家族でもぐって寝るのです。焼夷弾が空から落ちてきて、町じゅうが燃えるのです。空は真っ赤です。こんなの、イヤですよね。だから、平和でなくてはダメなのです。」
(赤鬼こと山ア祐美子)
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