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赤鬼からの手紙(2025年7月号)



『 さとうきび畑 』

寺島尚彦 著
葉 祥明 イラスト
二見書房


   今年の夏も暑くなりそうです。 沖縄は、日本で一番最初に暑さが伝わる地域です、梅雨明けも早いですね。 その沖縄は今や世界中に知られた一大リゾート地として、多くの観光客が訪れます。 輝く太陽、青く澄んだ海、南国特有の花々は、訪れた人々の気持ちをウキウキさせてくれます。 でも、そんな沖縄には、語り続けていかねばならない大切なことがあります。

   今年で、第二次世界大戦から80年が過ぎました。 沖縄は、米軍が足を踏み入れた地上戦があった場所です。 どんなことがあったのか、知っておくことから始めてみませんか?

ざわわ ざわわ ざわわ
広いサトウキビ畑は
ざわわ ざわわ ざわわ
風が通りぬけるだけ
今日もみわたすかぎりに
緑の波がうねる
夏の陽ざしの中で

ざわわ ざわわ ざわわ
広いサトウキビ畑は
ざわわ ざわわ ざわわ
風が通りぬけるだけ
むかし海の向こうから
いくさがやってきた
夏の陽ざしの中で

ざわわ ざわわ ざわわ
広いサトウキビ畑は
ざわわ ざわわ ざわわ
風が通りぬけるだけ
あの日鉄の雨にうたれ
父は死んでいった
夏の陽ざしの中で

ざわわ ざわわ ざわわ
忘れられない悲しみが
ざわわ ざわわ ざわわ
波のように押し寄せる
風よ悲しみの歌を
海に返してほしい
夏の陽ざしの中で

ざわわ ざわわ ざわわ
風に涙はかわいても
ざわわ ざわわ ざわわ
この悲しみは消えない

   皆さんも一度は耳にしたことがあるでしょう。 森山良子さんが歌う「サトウキビ畑」の絵本です。 葉祥明さんの絵が、ほんとに美しく、悲しく、温かく、ページをめくるたび、風が吹いてくるような気がします。 歌詞の言葉一つ一つの意味合いが表現されています。 この歌詞は11連まである長い歌です。 全部歌うと10分以上になるそうなので、TVなどでは、カットして歌われますが、森山さんのコンサートなどでは、全ての歌詞を歌われるそうです。

   この歌についてのエピソードを、森山さんが語られるのを聞いたことがあります。 「サトウキビ畑」は、作詞作曲した寺島尚彦さんが、デビュー間もない19〜20歳の森山さんに歌ってほしいと贈った曲。 でも、当時の森山さんは、戦争も知らない私が、戦争の歌は歌えないと・・・30年間歌っていなかったそうです。 それが、ちょうど湾岸戦争で自衛隊派遣が世論を騒がせていたころ、森山さんのお母様が「恋だの愛だの、軽いラヴソングばかり歌って、ちゃんちゃらおかしい、あなたにはもっと歌うべき歌があるのでしょ」と叱咤したのだそうです。 そのお母様の叱咤を受けて、あらためて「サトウキビ畑」と向き合うことになったとのこと。 「ずいぶん時間かかっちゃったけれど、年月を経て、いろんな経験をしたからこそ、歌えるようになったのよ」と。

   この絵本の末尾に葉祥明さんの「あとがき」の言葉があります。

戦争は、もう終わりましたか?
それとも、まだ続いていますか?
いくさは、また起ころうとしているのでしょうか?
それとも、もう始まっているのでしょうか?
さとうきび畑は、私たちにそう語りかけているようです。
ざわわ、ざわわ、ざわわ・・・・・という、
さとうきび畑を吹き抜ける風の音。
そして、遠くの波の音が、私たち人間の
荒ぶる心、傷ついた心、悲しみの心をやさしく癒してくれているようです。
この一曲の美しい歌が、戦争を阻止する力強い心の砦となることを願って・・・

葉 祥明

(赤鬼こと山ア祐美子)

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