だんだん雲行きが怪しくなってくる6月ですが、山々の木々も足元の花々も、太陽の日差しとともに、水が無ければ輝きを増すことはできません。だからこの時期を待っています。
私たちは喉がかわけば、水を飲みます。植物も同じです。大きな畑も小さな畑も、水やりは大事な作業です。そのあらゆる水分の源は雨水です。今地球は温暖化が加速しています。
ますますヒートアップ・・・でも、そうさせているのは人間の仕業です。だから、私たち人間が知恵を集めなければ、地球は壊れ続けていきます。
自分の土地だけではなく、相手の土地も守らなくては、地球全体を救うことにならないのです。
愚かにも相手の土地を奪っても、そもそも人間が、生きていくことができない土地になってしまうかもしれません。
「おとうさん、おはなしして」
「どんな おはなし?」
「ぺこぺこしたやつ」
「むかし むかし あるところに、おうさまがいた。
そのおうさまは ちっとも いばらなかった。
まいにちおきると、おきさきさまに ぺこぺこ けらいに ぺこぺこ、 にわのくじゃくに ぺこぺこ。あるひ ごはんをたべていた。
おうさまは ぺこぺことコックに おじぎをした。
おさらのうえの おさかなに ぺこりと あたまをさげて <いただかせいていただきます>と さかなを たべはじめた。
だいじんが どたどた はいってきた。
<たいへんだ、たいへんだ、これをみろ。めしくってるばあいじゃないぞ>と いっつうの てがみをもってきた。
<いますぐ せんそうをする。せんそうをして、おまえのくにを わしのものにするぞ、えっへん>と、かいてあった。
おうさまは あわてずさわがず、さかなをきれいにたべると ぺこぺこと さかなのほねにむかって あたまをさげた。
だいじんは、そのあいだに たいちょうをよびつけ、<せんとうじゅんび はじめ>とどなった。
おうさまは ゆっくりと おしろのとうのうえにのぼって、ぼうえんきょうで とおくを ながめた。
とおくから いさましく となりのくにの ぐんたいがやってきた。
おうさまは たいちょうにむかって
<いつものように ぺこぺこたたかうのだ>とさけんだ。
<ぺこぺこ!ぺこぺこ!わかったか ぺこぺこだ> たいちょうは さけんだ。
<おう>とへいたいは いさましくこたえた。
となりのくにのぐんたいは しろをとりかこみ たいほうとてっぽうを うってきた。
こちらの たいほうのたまは、いきおいよく ぶっとぶと てきのまえで ぺこりと おっこちる。
へいたいは ぺこりぺこりと あたまをさげて、ぺこんとじめんにはいつくばる。
となりのくにのたいほうは どかんどかんと うちあがったが、おしろも ぺこりとおじぎをするので あたらない。
となりのぐんたいは すっかり たまを つかいはたしてしまった。
おうさまは、となりのおうさまのまえにゆくと、ぺこりと あたまをさげて
<ごくろうさんでした。おつかれでしたね。わたしたちも つかれました。しょくじを いっしょにしましょう>と いった。
となりのおうさまは <えへん ごちそうになってやろう>と おしろに はいってきた。
そして、いばっていった。<われわれのへいたいは、ひとりもけがにんが でなかった。わがくには せんそうが せかいいちうまいのだ>
おうさまは ぺこりとあたまをさげて <ほんとうに よかった>としずかにいった。
おきさきさまは、おうさまのくびにかじりついて<あなたって、すてき、ふんだ>といって、キスをしたのさ。」。
「それから?」
「おうさまも おしろの にわで、コーラのカンで、カンけりをしてあそんだ。おしまい。」
「ふんだ、おとうさん、ほんとに カンけりのカンが ぺこぺこしたはなしだったね」
「100万回生きたねこ」の佐野洋子さんの絵本です。
1993年に文化出版局から発売になっていた作品の復刻版です。
原画を新たにスキャンして色鮮やかな一冊になりました。
実は、佐野さんは、山梨とも関連があります。
北京で生まれ、幼少時を過ごした佐野さんが、敗戦後、引き揚げたのが山梨でした。
その間に、兄弟を亡くされて、ことに大好きだった兄の死は、作品にも影を落としています。
「わたしのぼうし」は、そのお兄さんへの想いが詰まった絵本です。
2010年に亡くなられた佐野さん、2024年に復刻されたこの「ぺこぺこ」の再登場をきっと喜ばれているに違いないと思っています。
今年2025年は第二次世界大戦から80年。
まさか再び戦争の日々が起こるなど想像もしてなかった世界は、土地を奪い合い、命を奪い合う殺し合いを許してしまっています。
どうしたら、子どもらの命が奪われずに、世界に平和が訪れるのか、日々思い、願い、祈るばかりです。
人間の愚かさと、無力さばかりが、世界中を覆いつくしています。
ユーモアは、人の世界を豊かに、心を軽くしてくれます。
「ぺこぺこ」にはいろんな言葉の意味がふくまれていますよね、お辞儀のぺこぺこ、缶が蹴られてぺこぺこ、踏まれてぺこぺこ、お腹が空いてぺこぺこ、考え続けていくと、なんだか楽しくなってしまいます。
願わくは、こんなおうさまばかりなら、みんながぺこぺこで、みんなでぺこぺこして、みんなと缶蹴りで決着がついて、おかしくて、わらって、平和な世界になるかもしれません。
(赤鬼こと山ア祐美子)
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