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認定こども園 聖愛幼稚園

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赤鬼からの手紙(2024年7月号)



『ふしぎなともだち』

たじまゆきひこ さく

公文出版 刊

   夏本番です。入道雲はもくもく立ち上がり、ひまわりも笑顔で咲き誇ります。 元気いっぱいの子どもたちの声が聞こえてきそうな夏休みも待っています。 コロナで明け暮れた4年間でした。 まだまだ、完全に退治されたわけではありませんが、様々なイベントも復活しています。 今夏は待ちに待った日々になりそうです。 何をしようかと迷ってしまいそうなワクワクした夏、新しい出会いもあるかもしれませんね。 新しい友達にも出会えるかもしれません。 友達って、どんな存在でしょうか。ちょっと、考えてみませんか?

ぼくは、おおたゆうすけ。2年生の冬休みに この しまへ ひっこしてきた。
はじめての とうこう日。どんな ともだちが できるかな。
「れいぞうこ かってに あけたら あかん
 れいぞうこ かってに あけたら あかん」
しぎょう式の日、ひとりごとを いってる 子がいて びっくりした。
だれも 気にしていない ことにも びっくりした。
みんなから やっくんと よばれていた。
「がいこつ こちょこちょ。がいこつ こちょこちょ。」
「3年生に なったから、おおたくんも やっくんの ことを 見てあげてね。
やっくんは 自閉症と いう しょうがいがあって、おはなしするのが にがてなの。」
「かみさまの とけいが ボンボン なった。かみさまの とけいが ボンボン なった。」
いつまでも ぶらんこをやめない やっくんに、ぼくは いらいらした。
「教室へ かえろうよ!」やっくんを ひっぱったら、
「ぎゃあぁー」と ものすごい 声を あげて はしりだした。
やっくんの お母さんも はしった。やっくんは まっすぐ まっすぐ・・・・。 海へ・・・・
「この子が なにを かんがえているのか、わからないの。これから おおきくなったら どうなるんだろ!」海の中で、やっくんと お母さんが 大きな 声をあげて ないている。

みんなは、やっくんがいけないことをしたら、やさしく おしえている。
大声をだしているときは、おちつくまで まつ。
やっくんを みんなの 中へ つつみこんでるようだ。
6年生を 送る会。うちだ先生は、「・・・・やっくんも、しっかりされて、いい子にせいちょうされ・・・・・・」先生は 声を つまらせた。
そこへ やっくんが とびだしてきて、先生の 手を にぎった。
「うちだ はなこ先生 はい おしまい。うちだ はなこ先生 はい おしまい。」
やっくんの お母さんとお父さんも ないていた。
中学校の入学式 やっくんは、やっぱり きんちょうして 大きな声で さけびだした。
先生がとんできたが、みんなで 先生を とめた。ぼくたちは、むりに とめるともっとたいへんなことになるのを しっていた。

やっくんは とけいが だいすき。ひとりごとを いうことで、やっくんは 自分のきもちを おちつかせる。「やっくん しずかに しなさい。やっくん しずかに しなさい。」
ひとりごとも、やっくんの ふくさようの ない くすりだ。
3年生に いじめられている やっくんに であった。ぼくは おもわず 3人に とびかかった。「いい子ぶるなよ ばーか」3人は じてんしゃで はしりさった。
「おおた ゆうすけくん ありがとう。おおた ゆうすけくん ありがとう」
「ありがとう いうたな。ありがとう いうたな」
ひとりごと いいながら かえっていった。

ぼくたちは おとなになって、この しまで はたらきはじめた。
やっくんは メールびんの はいたつ。 ぼくは ゆうびん局に つとめることになった。
その日は 風がつよかった。バイクのはこから てがみが とんでいった。田んぼの中を、どろにまみれて さがしまわった。どろのついた ふうとうを なきながら ふいた。
みんなから どなりつけられて、なさけなかった。そとへ どびだしたら、
「おおた ゆうすけくん はい おしまい。おおた ゆうすけくん はい おしまい」
やっくんが、いつのまにか ぼくの うしろに いた。

ことばで はなしが できないのに、こころが わかりあえる。
やっくんは ぼくの ふしぎな ともだち。

   「じごくのそうべえ」の田島征彦さんが描かれた作品です。 この絵本ができる過程を語られた田島さんのTV番組を見たことがあります。 海、山、あらゆる豊かな自然の淡路島で暮らす田島さん。 そのご自身の回りで起こった事柄を丁寧に、聞き取り、調べあげて、多くの人の関わりの中で、やっと形にしていった作品です。 『自閉症』という言葉を、まっすぐに絵本の作品に仕上げて届けているものは、そんなに多くはないと思います。 特に田島さんの絵本は、”友だち”の視点で描かれ、互いを知ることの意味合いや深さを伝えてくれます。 私たちが普段使っている”友だち”には、こんなにも豊かで繊細で細やかで温かな想いがあるのだということを、改めて気づかせてくれます。

   絵本に添付された文書には、自閉症のわが子を持つ母の明石洋子さんの言葉があります。
〜はじめて絵本を読んだ時、まるで自閉症の我が息子を見ているようで、驚きました〜 と。
絵本によせる、田島さんと明石さんのお話も合わせて読んでいただけたら、絵本の意図、絵本ができるまでの工程や、絵本の持つ広がり、力のようなものが伝わります。

(赤鬼こと山ア祐美子)

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