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赤鬼からの手紙(2024年6月号)



『 せんたくかあちゃん 』

さとうわきこ さく・え
福音館書店 刊


   山の緑はどんどん濃くなってきました。花々も季節の変わり目を知っています。 初夏から本格的な夏を迎える準備が始まります。 あたりの田んぼは実りの秋を目指して、田植えもすっかり終わっていることでしょう。 いよいよ蛙たちの大合唱も、より賑やかになりますね。
南の方ではすでに、梅雨に入っているところもありますから、梅雨の合間にたまった大きな洗濯物を一気に済ませることも大切な空模様です。 雷さまが、空の上から今か今かとまちかまえていそうですからね・・・あらっ、じゃぶじゃぶじゃぶ!勢いのある水音が聞こえてきましたよ〜

せんたくの だいの だいの だいすきな かあちゃんが いました。
「きょうも いいてんきだねえ」
かあちゃんは うちじゅうの ズボンも チョッキも くつしたも パンツも シーツもまくらカバーも、みんな たらいに ほうりこみました。

「なにか あらうものを さがしといで」
こどもたちが みまわすと、ねこが みつかりました。

ねこは いぬのよこを はしりながら 「たいへんだ、せんたくされちゃうぞ」
いぬも とりたちも げたばこの げたや くつや かさも、みんな にげだしました。

かあちゃんは、それを みて おおごえで さけびました。
「とまれ!」
かあちゃんは みんなを たらいに ほおりこんで ごしごし ごしごし
あっというまに あらってしまいました。
せんたくが おわると かあちゃんは にわのきから もりのきにも なわを はりました。こどもたちも みんな ほして、せんたくばさみで とめました。

そのころ、そらの かみなりさまの くもが うごきはじめました。
「すげえ すげえ へそが いっぱい ほしてあるぞ」

ピカッ バリ バリ バリッ と かみなりさまが おちてきました。

へそをとりにきた という かみなりさまに かあちゃんは かんかんになって
「ほんとに なまいきな かみなりだよ」と、いうと、かみなりさまの くびを つかんで
たらいのなかに ほうりこみました。

「やれやれ、ほんとに きたない かみなりだったね。あれ、まあ!」

せんたくかあちゃんに すっかり あらわれてしまった かみなりさま・・・
さてさて、どうなりますことやら・・・

   3月28日 絵本作家 さとうわきこさんが 亡くなってしまいました。89歳でした。 大好き大好きな絵本でした。1987年「いそがしいよる」から「ばばばあちゃん」シリーズ 「せんたくかあちゃん」シリーズ 「とりかえっこ」 「ねえ、おきて」、数えだしたらきりがありません。とくに、ばばばあちゃんは、本当にこんな、ばあちゃんになりたいものだと、読むたびに憧れていれました。そんな、さとうさんのたくさんの作品の中から、 今回は、『せんたくかあちゃん』を選びました。 それは、さとうさんが語るこんな文章に出会ったからです。

〜〜〜「せんたくかあちゃん」のモデルは、私の母なんです。 私が10歳のとき、新聞記者だった父が結核で亡くなり、母は下宿生の世話などをしながら、姉と私を育ててくれました。 戦後の時代とも重なり、きっと大変なことが多かったと思います。 でも、母はとてもたくましい女性でした。 お金がなかったり、食べるものに苦労したりしても、「なんとかしてやろう」というパワーが全身からあふれていて。 体格は決して大きくないんだけれど、背中からその強さを感じさせるような人でした。 幼心にも、「ぜったいにへこたれない人だ」と感じていました。 私は高校を卒業したあと、デザイン会社などに就職し、その後はご縁があってイラストの仕事もしていました。 「いつかは絵本の仕事ができたらいいな」と思っていたので、子ども時代の思い出を掘り起こすように物語を考えていました。 そのとき、母のことが頭に浮かび、思いついたんです。 あのブルーのワンピースも、前掛けも、母がよく身につけていたものを思いだして描きました。〜〜〜

   そうだったんですね、”せんたくかあちゃん”は、さとうさんのお母様だったんですね。初めて知りました。きっと、あのパワフルな「ばばばあちゃん」の中にも、さとうさんご自身のお母様が潜んでいらっしゃるんですね。 そして、そのお母様の血をうけた、さとうさんは"ばばばあちゃん"そのものでした。

   さとうわきこさんの絵本を読むと、目の前の子どもたちの心の奥底が見えてくるような気がするのです。いつも前向きなパワーがむくむくと湧き出てきて、前に進むことに怖れない気持ちになるのです。心底元気をくれるのです。へこたれない気持ちになるのです。私自身も、あの、ばばばあちゃんに、どれだけ助けられたかしれません。まだまだ、新しい作品に出会いたかった、本当に残念でなりません。これからもずっと、さとうわきこワールドに浸かりながら、絵本の宝を伝えていきたいと思います。

(赤鬼こと山ア祐美子)

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