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認定こども園 聖愛幼稚園

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赤鬼からの手紙(2023年11月号)



『 くじらのぷうぷう 』

はらまさかず ぶん
山本久美子 絵

イマジネエション・プラス 刊

   秋の訪れを聞いても、なんだかまだ蒸し暑さが残るような日差しで眩しい日々もあります。 あたりの山々が色づくには、少し時間がかかるのかもしれません。 気候変動が叫ばれて久しくなりますが、地球はどんどん息苦しくなっているようです。 私たち人間の愚かさが地球の命を奪い続けている現状は、なかなか変わりません。 でも、何とか世界中のあらゆる知恵を集めて、私たちの住む地球を救わねばなりません。 どんな小さな力でも、集まれば大きな力になるはずです。 おやっ、海に住むくじら君が、何か話しています・・・

くじらの ぷうぷうは、ひとりぼっち。
「おともだちが みつかるから、だいじょうぶ」って、おかあさんは いったけど・・・。
ちいさな さかなが たくさん います。でも、みんな にげていきました。
「どうして ともだちに なってくれないんだろう。」
ぷうぷうは みんなをさけて ふかい うみへ おいでいきました。
「あーあ、だれか ともだちになってくれないかなあ」
すると、みたこともない こが ちかづいてきました。
「ぼく、ぷうぷうって いうんだ」そのこは なんにも いいません。
ぷうぷうは、そのこを そっと かかえると、げんきに およいでいきました。
「おかあさんと はなれちゃったの?だいじょうぶだよ。ぼくたち ともだちじゃないか。」
ぷうぷうは、そのこが ずっと うえを ゆびさしていることに きづきました。
「そうか!りくに いきたいんだね」
ぷうぷうは うえにむかって およいでいきました。
このこの ために なにか したいとおもったからです。
そのとき、「だいじょうぶ?」とこえが しました。
うみがめは ぷうぷうが かかえているこをみて、いいました。
「だって、プラスチックだもん」「プラスチック?」
「ぼく、このまえね、あみに ひっかかってた ところをたすけてもらったんだ。 そのひとたちが そういう プラスチックをあつめて うみをきれいにしてくれてたよ」
うみがめが おしえてくれました。
「このこ りくに かえったら、ごみなんだ」
「じゃあ、うみでいっしょに いるよ」
「でも うみに いたって ごみなんだよ」
ぷうぷうは かなしくなりました。
「このこ どうする?」うみがめが ききました。
「いっしょに いる。いっしょに いれば ごみじゃなくて ともだちだもん。このこと いると あったかい きもちに なるんだ」
ぷうぷうたちは うみを およいでいきました。
くらげが ぷかぷかと やってきました。
「これ くらげじゃないんだよ。たべたら おなかが いたくなるよ」
うみがめが いいました。そういいながら うみがめは くちを あーんと あけました。
「だめだよ!」ぷうぷうは ぷうーっと ふきとばしました。
「くらげじゃないって わかっているのにね。」「そっくりだもんね。」
「よーし、それっ、ぷうーっ」
さかなさたちが わらっています。
「あれっ、ともだちが ふえてるぞ きみが いた りくの みんなとも ともだちに なりたいな」
うれしくなった ぷうぷうは そらに ぷうーっと しおを ふきました。

   先日、山梨県立図書館・山梨大学附属図書館子ども図書室主催「子どもの読書 オープンカレッジ」に参加しました。 この絵本の作者「はら まさかず氏」を迎えての「ちいさな世界の作り方~自分だけの物語を作るには〜と題した講演でした。 絵本にも作者ご本人にも、初めておめにかかる新進の絵本作家さん。 「くじらのぷうぷう」は、できたてほやほやの絵本です。 絵本作家として独立なさったのは最近のことですが、それまでも様々に書き溜めてこられたようです。

   この絵本は、2018年の夏、鎌倉由比ガ浜でシロナガスクジラの赤ちゃんが打ち上げられ、赤ちゃんの胃の中からは、プラスチックごみが発見された、という事件から発想されたそうです。 Corona渦中、悶々とする中で「よむよんで」というサイトを友人の作家さんと、たちあげられて、様々な方法で子どもたちにお話しを届けられてきました。 サイトは現在も継続されています。このサイトの中で、話をしていたものが今回、形になったという事でした。 海洋汚染は海洋国家日本にとっても深刻な問題です。 私たち一人一人が少しずつでも、出来ることを重ねていかれればと思わずにはいられません。

   はらまさかずさんの物腰の柔らかな言葉は静かにこちらに届きました。 小さな願いを小さく描くことを重ねていくこと、それはやがては自分の物語になっていくとのことでした。 こうなったらいいのにな〜〜かなわなかったことをかなえること、楽しい未来や明るい未来にしていく・・・そんな希望を感じた時間でした。 このぷうぷうの未来もきっと明るく、友だちいっぱいになっていくことを約束してくれそうです。

(赤鬼こと山ア祐美子)

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