やっと、辺りも静かになってくるころです。
まだ少し汗ばむような日もあるかもしれませんが、季節は足早に変化してきます。
ひと夏精いっぱい鳴いていた蝉たちから、虫の声にバトンタッチですね。
どんな声が聞こえてくるでしょうか、聴きわけられますか?
あなたの好きな声はどの虫の声でしょう・・・どれが一番好きか、なんて決められないこともありますね。
あら、ここではいろんな生き物たちが、なにやら話していますねえ・・・なんだか楽しそう・・・
あるひ ウリボウがいいました。
「ねえ みんな なにが すきか いってください」
ウサギさん 「えーと えーと」「そうだ!にんじんをたべること」「うたをうたうこと」「それに えを かくこと」
「じゃあ タヌキさんは なにが すき?」
きのみを ぜーんぶたべること たべたあと ポコポコ おなかを たたくこと・・・・・
カモノハシさんは?
ワニさんは なにがすき?
「スプーンのうらで めだまやきを たべること でも いちばん すきなのは かさなること」
おサルさんは?
ホロホロチョウさんは?
ホロホロチョウさんが ききました。「ライオンさんは なにが すき?」
でも ライオンさんは――――「なにが すきかって?」
「そんな だいじなこと おしえない」
なにが すきか だれにも おしえません。
おしえて ききたい たのみます 「おしえない―――おしえないったら おしえない」
おしえないんじゃ つまらない。みんなが かえろうとしたとき、
「ぼく ききたい!」 バッタさんが いいました。
「よーし おしえてあげよう! それはね・・・・」
・・・・・・・・・・・・・
「たのしい いちにちだったね」
沢野ひとしさん 作・絵の絵本作品です。
以前、この場では挿絵としての沢野作品をご紹介しました。
今回は、絵だけではなく、文章も描かれました。
絵本全体に沢野ワールドが、隅々まで展開されています。
椎名誠さんをはじめとする名だたる作家の挿絵画家としても、数多くの作品がありますが、ご自身の著書も多彩な作品があります。
大人向けの画家としての絶大の人気がありますが、絵本の世界でもたくさんの沢野ファンがいます。
「何が好き?」このシンプルな問いかけは、絵本の生き物たちにとって、お互いを知るために、一番のことかもしれません。
沢野さんの選ばれた生き物たちが、とてもユニークです。
知っているようで知らない、想像できそうでできない、そんな世界観に包まれていきます。
そうだよね、ウサギさんは、やっぱりにんじんが好きなんだよね、へえっ、歌うことも?
絵を描くことも?好きって、もしかしたら、ウサギさんは沢野さんご自身なのかも?!
ワニさんは・・・カモノハシさんは・・・つぎつぎに、思い描くだけで楽しくなります。
百獣の王のライオンが、みんなをじらして、なかなか教えてくれません、しかもなんだか、ちょっと偉そうです。
そんな態度のライオンに、みんな呆れて嫌になってしまいます。
でも、そんなライオンに声をかけたのが、一番小さくて弱そうなバッタさん・・・なんだかワクワクしてきます。
みんなが、仲良くすることって、こういうことなのかもしれないな・・・
そんな気持ちにさせてくれる絵本です。
さあ、みんなで聴き合ませんか「きみは なにが すき?」
(赤鬼こと山ア祐美子)
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