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認定こども園 聖愛幼稚園

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赤鬼からの手紙(2022年2月号)



『ソメコとオニ』

斎藤隆介 作
滝平次郎 絵

岩崎書店


   年に1度の鬼到来の季節。今年はどんな鬼に出会えるでしょうか・・・ ウイルスとの闘いから2年がたちました。当初、日本ではクルーズ船内の感染クラスターのニュースが飛びこんできました。それでもまだまだ遠い話のように感じていたこの2020年1月から、あっという間に世界中が汚染されてしまいました。次々に新たな株が出現し人類を脅かしています。このウイルス出現が、人々の世界をも変えていきます。そんな揺らいでいる私たちを、鬼たちはじっと見つめています。この季節になると、そんな鬼たちから注がれる視線を背中にぞくぞくと感じます。ほら、、、あなたの後ろにも・・・

 ソメコは五つ。まいにちタイクツでしかたがない。ソメコのように、いっしょうけんめいに、あそんだり、生きたりしているものは、だれもいない。
「ソメコ、あっちゃ行って、あそべ。いい子だからナ」おとなたちは、あそびにむちゅうなソメコにへいこうして、行ってしまう。
「あっちサ行け、あちサ。ひとりであそべ。いい子だからナ。おばさんは しごとで いそがしいんだ」おとなは みんなそういう。
 ところが、ある日 ソメコといくらでもあそんでくれる おじさんがきた。
草をつんでは「いただきます。なんと、ほんじつは いいお天気で。まず、えんりょうなく、あがってたんせ」ソメコがひとりで あそんでいたら
「なんと、ごちそうさんで、あんす。せば、えんりょなく、いただくス」
そういって、ひとりのおじさんが すわりこんだ。
どこか こわいかおをした おじさんは、ンまそうに どろダンゴをたべる マネまでしいてくれた。
こうして ソメコは、オニにさらわれて、オニの岩屋まで きてしまった。タッタ一人で岩屋につれてこられても、ソメコはないたりしない、それどころか
――サァ、おじさんと ふたりッきりで あそべるゾ!
岩屋は、なんかおもしろいことが 一ぱいありそうだった。
「ナ、おじさん!こんどはカクレンボするベエ!」
「だめだ。おれはお前のお父ウに手紙をかくんだ。おまえ一人であそべ」
「なんてかくんだァ?」
「金の俵を一ぴょう、馬につんで岩屋のまえに、とどければ ソメコはかえしてやる。もし とどけねば  くっちまう、オニより、ってな。」
「フーン。じゃはやく かいちまえ、そしてはやく カクレンボしよう!
「おれは オニなんだぞ。おまえは おれが こわくねえのか?」
「ン、こわくない。カクレンボしよう!」
オニはもう、めんどうくさくなっちまって、ソメコが泣いたってかまわないとおもって、
人間のすがたをやめて、オニのすがたにかえった。
「アーララ、アララ、おへそがみえら!」ソメコはキャッキャとわらった。
「ナ、おまえ、オニなら オニゴッコしよう!サア、オニサンコチラ、手ノナルホウヘ!」オニは もうやかましくて 手紙なんぞかけはしなかった。
 ソメコがいなくなって、大さわぎしてさがしいてる ソメコのお父ウのウチへ、
オニから 手紙がきた。
「ソメコのお父ウよ。ソメコは おれの岩屋にいるから はやくつれに きてくれ、
 たすけてくれ、オレは ソメコの相手をさせられて、夜もねられないので アタマが
 おかしくなりそうだ。この手紙も、ソメコとカクレンボしながらかいている。ソレ、ソメコが『モーイイカーイ モーイイカーイ!』とさいそくしている。マーダダヨ、マーダダヨ、といいながら おれは たったまま この手紙をかいている。
 たすけてくれ。はやくソメコを つれにきてくれ。ソメコを つれてかえってくれたら、
 金の俵を一ぴょう、馬につんでやる。ソメコのお父ウへ    オニより。」

   私の知っている鬼は、優しい奴ばかりです。 このソメコと遊んでくれたオニも、無類に優しい鬼でした。こんなにも遊びに夢中になれる、 生きていくことに、ただひたすらに夢中になれるソメコは、子どもたちの象徴のように感じ ます。本来子どもというものは、そういうものだと思っています。ソメコが特別な子供とい うわけではありません。でも、今の子どもたちの環境はどうでしょうか、、、 このソメコのように、まっすぐに遊ぶこと、生きることに夢中になれる環境でしょうか。
〜おとなたちは、なんてつまらない まいにちを おくっているんだろう。ソメコのように、いっしょうけんめいにあそんだり、いきたりしているものは だれもいない。〜
絵本のこの言葉に出会って、どきっとしました。 斎藤隆介さんの伝えたかったことは、このことではないかと思いました。 一所懸命に生きるソメコと一生懸命にソメコの相手をするオニの姿に、この絵本の大人た ちと同じように、大事なことにきづかなかなければならないと感じました。

   今、このコロナ禍のなか、世界中の大人たちが揺れています。どう克服したらいいのかと、、 でも、こんな状況の中でも、子どもたちは遊ぶことに、生きることにがんばりたいはずです。 私たち大人は、このソメコの相手を自らやってくれたオニが教えてくれたように、真正面 から、子どもたちに向き合える存在にならねばと思います。そして、そんな生きることに一 生懸命な子どもたちから、私たち大人は生きる勇気を与えられるのです。
〜ふくは〜うち、おにも〜〜うち〜〜

(赤鬼こと山ア祐美子)

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