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認定こども園 聖愛幼稚園

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赤鬼からの手紙(2021年10月号)



『あたまにかきの木』

小沢 正 作
田島征三 絵

教育画劇

   実りの秋を迎えました。 1年中で一番食べ物の豊かな季節になります。 でも、今年は夏の長雨のせいで不作になった作物もあるとのニュースもあり、手をかけて育てられている方々の御苦労がしのばれます。 それでも店先には、色とりどりの果物などが並びはじめました。 山々も紅葉して美しい季節ですが、秋は作物たちを眺めるのも楽しいです。 実のなる庭木と言えば、やはり柿でしょうか。 こんな都会でも、窓の外には色づいてたわわになってきた柿の実が見えてきました。 さてさて、柿の木と言えば、こんなお話はいかがですか。

むかしむかし あるむらに、おさけがだいすきな じろべえさんと いうひとがいました。
「ほんとに まったく、おさけというのは、どうして こう うまいんだろう・・・」
しごともしないで あさから ぐいぐいのんでばかり、まいにち、こんなぐあいです。 おかみさんが きょうはたんぼへいって いねかりをしてと、たのんでも、
「だめ だめ。きのうのおさけが まだぬけなくて ふらふらするからなあ」
「じゃあ かきをおあがりなさい。かきは おさけのよいを さますといいますからね。」
「そうかい、じゃ、そうするか」
でも まだ よっぱらっていたじろべえさんは、かきのたねを はきだすのをわすれてしまいました。
「なるほど、あたまがはっきりしきた・・・」と、たんぼへでかけて いねかりをはじめました。
ところが、そのうち あたまのあたりが むず むず 「なんだろう?」あたまのてっぺんに きのめのようなものが、とびだしてきて、みるみるうちに ぐんぐんのびて、どーんと かきのみがなりました。 さっきのかきのたねをのみこんだせいかとおもいましたが、そのとき、じろべえさんは いいことをおもいつきました。
「そうだ、かきのみをうれば、そのおかねで さけがのめるかもそれないぞ。」
さっそく むらのちゃみせに はしっていって かきのみをあげるかわりに おさけを のませてもらい、ぐいぐいとのむと たちまち よっぱらって、おおいびきでねこんでしまいました。 そのあいだに みせのしゅじんは じろべえさんのあたまから かきのみをもいで、やすいねだんで、うりはじめました。 このうわさをきいてさわぎだしたのは、まちのかきうりたちです。かきうりたちは、よってたかって、あたまのかきの木をのこぎりできりたおしてしまいました。 めをさましたじろべえさんは 「あららららら」びっくりぎょうてん。ところが、ねっこだけになったかきの木のまわりに、きのこがやまほどなってるではありませんか。じろべえさんは、また、きのこをあげるから、のませておくれ、と。こんどは きのこうりたちが さわぎはじめました。じろべえさんがよっぱらって、ぐうぐうとねてるまに、ねっこを ほりだされてしまいました。
のんべえでのんきなじろべえさん、それからどうなったかって・・・さいごは、はたらきもののまめすけさんのおかげで、また、ぐいぐいおさけをのんで、ぐうぐうぐうねてばかりいるようになった、、というお話。

   江戸落語には「頭山」と言う演目があります。上方では「さくらんぼ」という名称で演じられます。原話としては、様々なことがあるようですが、1700年代の頃からのようです。 2002年には、「頭山」をアニメーション化した作品がアカデミー賞にノミネートされたり、様々な賞を取ったりして話題になりました。ご覧になった方もあるかもしれませんね。 海外ではやはり1786年に出版された「ほら吹き男爵の冒険」のなかに、似たエピソードがあるそうです。

〜主人公の男爵が狩りに出かけ、大鹿を見つける。あいにく弾が切れていたので、代わりにサクランボの種を鉄砲に込めて撃つと、鹿の額に命中したものの逃げられてしまう。数年後、同じ場所に行ってみると、頭から10フィートばかりの立派な桜桃の木を生やした鹿がいた。男爵はこれを仕留め、上等の鹿肉とサクランボのソースを一緒に手に入れた。〜

   落語の「頭山」はもっとシュールな形で落ちがありますので、ますます頭がこんがらがってしまいますが、こういうお話は民話としても各地に伝わっているようです。 落語では桜の木ですので、春にふさわしい演目になるのでしょう。 秋に楽しむことが出来るこの作品の中には実りがたくさん出てきてきます。 いろんな作家の絵本もありますが、田島征三案の絵は、実りが豊かに飛び込んで、お腹がいっぱいになりそうです。

   実はわが家にも柿の木があります。今年のみのりはどうでしょうねえ、、柿の実をほおばりながら、ページをめくってみませんか。

(赤鬼こと山ア祐美子)

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