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赤鬼からの手紙(2021年6月号)



『 空をつくる 』

村尾 亘

小さい書房

   日ごとに雨雲が立ち込める季節になってきました。 今年の梅雨入りは早いそうですが、毎年そんな声が聞こえてきているような気がします。 動物も植物も、地球上のあらゆる生き物の命を維持するものに欠かせないのが、何といっても水と空気です。 でも、多すぎる水や汚れた空気は、生き物の命を奪うことも多くなってきたのも事実です。 当たり前にあると思っていた水も空気も、当たり前ではなくなってきたのかもしれません。 何とか守っていかねばなりません、私たちに何ができるでしょうか・・・。

小さいころから、絵をかくのが好きだったというサルのぼく。とおくの山やきせつの花。 一日中かいていても あきなかった。大人になるにつれ、みどりは消えて、家が建った。とおくの山は もう見えない。さいしょは2かいだてだったとなりの家は、いまや6かいだて。どうしてかって?おいしいものをもたくさん食べたいから、うちにおいておくため。むかいのともだちもいう。だいすきな ぼうしを、もっとかぶりたいから、いっぱいうちにおいておきたいの。
土地がなくなると、空間をうばいあうように、家が建った。
まちは どうなったとおもう?
空がちいさくなっていったのさ。見あげても、空が見えない。
「このままだと 気がへんになってしまいそうだ」「やる気もでない」
どうしたらいいのか、みんなはかんがえた。「そうだ、空をつくろう!」「空をつくる!」
絵かきのサルに「空をかいて」という注文がくるようになった。
空の絵は すごくひょうばんがよかった。みんなをよろこばせることができてうれしかった。もっとかこう。
ところがある日。とりが けがをした。ぼくのかいた空のかべにぶつかってしまったんだ。
「なんだよ こんなニセモノ!」
でも、みんなにたのまれるまま、きのりはしなかったけれど、家のかべに空をかいた。
このまま空をつくりつづけたら、まちはどうなるんだろう。
ぼくたち、空をつくるなんてこと、してよかったのかな。
ぼくは まちをでた。
失ってはじめて、ぼくは気づいた・・・


   「SDGs」=Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)読み方は、(エス・ディー・ジーズ)。 SDGsは2015年9月の国連サミットで採択されたもので、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた目標と言われています。 色とりどりのタイルのような模様を様々な場面で見かけるようになりました。

   実は、こんな風に取り立てて言葉にしなくても、遠い昔から絵本は、すでにこのSDGsを描いてきました。 この場で紹介した絵本の中にもたくさんあります。 この絵本もその一つと言ってもいいでしょう。 タイルの示す目標に合わせて考えると、この絵本はNo.11「住み続けられるまちづくりを」にあてはまるかもしれません。 でも、それだけでもないような気がしています。 もしかしたら、絵本の中にある多様性は、SDGsの達成を実現させるための、手っ取り早くて強力なアイテムなのかもしれないなと思いながら、ページをめくっています。 あれもそうかなあ、これはどれになるだろう、ちょっとわくわくしてきます。

   「空をつくる」この題名が気になりました。 表紙にある題名の文字を突き抜けるように描かれた何重にも重なる屋根が目に飛び込んできます。 主人公は絵かきのサル君。気持ちよい風に吹かれながら描いていた生活はどんどん変わっていきます。 友人たちの欲望は果てしなく続き、ついに空を奪ってしまった。 サルはまちを出て、やっと気が付きます。 今まで、当たり前にあるものが空だとおもっていたけれど、それは違っていたことを。

   自分たちの住む周りをゆっくりと眺めてみると、知らない間に景色も変わっているのかもしれません。 景色だけでなくて人々の様子も変わってきているのかもしれません。 そして、失われた何かがあることにさえも、気づかないままなのかもしれません。

   絵本の力を借りて、失われた何かをさがしてみませんか?

(赤鬼こと山ア祐美子)


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