2020年が終わろうとしています。
ほんとなら、記念すべき様々な行事や楽しいことが沢山あったであろう1年の終りのはずでした。
年明け早々に、クルーズ船内Coronaウイルス感染の話題が飛び交い、欧州での感染拡大が海の向こうから伝わりました。
それから、あれよあれよという間に私たちは、感染で多くの命を失うという現実に向かうことになりました。
今も日々感染の脅威にさらされ、あらゆる現場で、また家族内で命を守る手立てに知恵を絞り協力し合って向かわねばなりません。
町のあちこちがイルミネーションの輝きに包まれ、歌声がこだまするはずの降臨節を祝う日。
この人は、やってきてくれるでょうか・・・
きしゃさま
あたしは、八つです。
あたしの友だちに、「サンタクロースなんて、いないんだ。」っていってる子がいます。
パパにきいてみたら、
「サンしんぶんに、といあわせてごらん。しんぶんしゃで、サンタクロースがいるというなら、そりゃもう、たしかにいるんだろうよ。」と、いいました。
ですから、おねがいです。おしえてください。
サンタクロースって、ほんとうに、いるんでしょうか?
バージニア=オハンロン ニューヨーク市 西95丁目115番地
1897年9月21日 ニューヨーク・サン新聞「社説」
この手紙のさしだし人が、こんなたいせつなしつもんをするほど、わたしたちを信頼してくださったことを、記者いちどう、たいへんうれしくおもっております。
バージニア、おこたえします。サンタクロースなんていないんだという、あなたのお友だちはまちがっています。
きっと、その子の心には、いまはやりの、なんでもうたがってかかる、うたぐりやこんじょうというものがしみこんでいるのでしょう。うたぐりやは、目に見えるものしか信じません。・・・・・
そうです、バージニア。サンタクロースがいるというのは、けっしてうそではありません。この世の中に、愛や、人へのおもいやりや、まごころがあるのとおなじように、サンタクロースもたしかにいるのです。・・・・・
サンタクロースがいない、ですって!サンタクロースが信じられないというのは、妖精が信じられないのと同じです。・・・・・サンタクロースをみた人はいません。けれども、それは、サンタクロースがいないというしょうめいにはならないのです。
この世界でいちばんたしかなこと、それは、子どもの目にも、おとなの目にも、みえないものなのですから。・・・・・ただ、信頼と想像力と詩と愛とロマンスだけが、そのカーテンをいっときひきのけて、まくのむこうの、たとえようもなくうつくしく、かがやかしいものをみせてくれるのです。・・・・・
サンタクロースがいない、ですって?
とんでもない!うれしいことに、サンタクロースはちゃんといます。・・・・・
この絵本が出版されたのは、1977年12月。児童書専門店「赤鬼」は本来ならば、この絵本と同時期のクリスマスに開店予定でした。諸々の準備等の遅れもあり、次の年1978年2月「節分」の日に開店の運びになりました。「赤鬼」ですから・・・。
この絵本の衝撃は今でも覚えています。
「サンタクロースって、いるんでしょうか?」
こんな題名の絵本・・・どんな内容なんだろうか、といぶかし気に思ったものです。
ところが、その言葉の深さに感動し、感激し、今ではこの時期の大切な一冊になりました。
訳者の中村妙子さんのあとがきには、社説を書いた記者のフランシス=P=チャーチ(1839〜1906)のことが記されています。
ある日、編集長から、幼い筆跡で描かれた一通の手紙をわたされ、社説に書いてみないかと言われます。
チャーチははじめぶつぶついいましたが、やがて書き上げたのがこの社説だったそうです。
100年前の社説は古典の様になって、クリスマスが近づくと、あちこちの新聞や雑誌に掲載されるとあります。
一方成長したバージニアは教職につき、引退前の3年間は、長期にわたって入院生活を送る子どもたちのための公立小副校長もつとめました。
彼女が81歳で亡くなった時、ニューヨーク・タイムズは「サンタの友だちバージニア」という見出しでその死をいたんだそうです。
こんな社説があったことを、今のアメリカは覚えているでしょうか・・・。
アメリカ大統領選による人々の分断は、Corona禍の中でますます世界を揺るがせています。
世界中が”うたぐりや”ばかりが蔓延り、何をどう信じていいのかさえ分からなくなってきそうな不安が取り巻く今日。
この絵本を手にとって、もう一度この中にある記者の言葉に耳を傾けてみませんか?肉体的な隔離やディスタンスがあっても、大きな声で歌えなくても、手をつなぐことさえできなくても、必ず繋がる方法は一人一人持っています。
互いに心や想いを寄せ合って、喜びを分かち合う時間を持ちましょう!
きっと今年は特別な日になります!
〜地には平和、人には喜びを〜
”Joy to the World! Happy Merry Christmas to You!”
(赤鬼こと山ア祐美子)
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