すっかり秋模様も深くなってきました。肌に触る風も急に冷たく感じます。今年の冬将軍は駆け足でやって来そうです。とはいえ、秋の気配を伝えてくれる紅葉は、より鮮やかにあたりの山々を彩っています。家の中に籠ってばかりで見そびれてしまわないようにしなくては、、、近場の公園に出かけて、秋の気配を探しに行きましょう。もしかしたら、こんな時にこそ新しい出会いがあるかもしれません。

　タニーシャという女の子が、グレープジュースをこぼしてしまいました。　あたらしい服がだいなし・・・みんなはわらいました。
わたしは　ママから　いつも　ひとに　やさしくしなさいと言われたことを思い出して、「むらさきは　わたしの　すきな　いろよ」といってみたのだけれど・・・わらってくれると　おもったのに　タニーシャは　教室を　とびだしていきました。 タニーシャは　もどってきても　かおを　あげようとしませんでした。
　ティッシュを　わたしてあげればよかったのかな？
　わたしのシャツを　きてもらえば　よかったのかな？
　タニーシャのかわりに　わたしがジュースを　こぼしてみんなに　じろじろみられたほうが　よかったのかな？

「やさしく」って、いったい　どういうことなんだろう。

「やさしく」って、たぶん　だれかのために　すること。
たぶん　それは、おてつだいを　すること。
たぶん　きづかう　こと。
「やさしく」するって、かんたんな　ことなのかもしれない。
一番てっとりばやい「やさしく」は、みんなの　なまえを　きちんと　いうこと、って、ママがおしえてくれました。
でも「やさしく」するって、難しいときもあるなあ。
みんなが　「やさしく」ないとき、ゆうきをだすって　ほんとうに　むずかしい。
（それに　すごく　こわい）
わたしには　ちいさなことしかできないかもしれない。でも　わたしのする　ちいさなことが、ほかのひとのする　ちいさなことと　つながるかもしれない。なにか　おおきなことへと　かわっていくの。どんどんおおきくなって、「やさしく」は　がっこうから　あふれだして・・・まちに　ひろがって、くにじゅうにも、せかいじゅうにも、そして、タ二ーシャとわたしの　ところにも　もどってくるの。　また、「やさしく」　なれる。
なんどでも。

   「みんなに　やさしく」　題名を見ただけで、引き付けられます。そして、訳されたのがドリアン助川とありました。ドリアン助川さんといえば、「叫ぶ詩人の会」での金髪姿が印象的で、文字通り叫んでいました。早稲田大学東洋哲学から日本菓子専門学校までも卒業されたという変わり種、作家、詩人、ミュージシャン、劇団員等、著書も多数あり、小説「あん」は各国で翻訳され、映画化もされたという活躍ぶり。現在は、大学教授でもあり、 なんと、日本ペンクラブ「こどもの本」委員長、と言う肩書までも持っています。 その助川さんは絵本の中で、柔らかな静かな口調と共に「やさしい」をひも解いていきます。

   あなたの「やさしい」は、どんなことでしょうか・・・

   今世界中をウイルス感染が取り囲み、人々はディスタンスとマスクという肉体的な分断の日々を余儀なくされています。みんなが疑心暗鬼に苛まれ、互いに繋がることもコミュニケーションも容易ではありません。 一番身近であるはずの家族の中さえも、分断せざるを得ない状況も生じています。 そんなウイルス蔓延の中、自由に言葉も交わせない状況において、誰でもどこでも、いつでも繋がる有効な手段としてSNS利用が高まっています。 ところが、その安易さゆえに、SNS上での言葉の氾濫が相手を苦しめ、命までも奪ってしまいます。

   そんな今だからこそ、この絵本にある「みんなに　やさしく」が大切なことのように思います。 相手に良かれと思ってやった「やさしく」あるはずのことが的外れになり、逆に相手を傷つけることも多々あります。 でも、方法は沢山あるのです。

   ひとそれぞれの、様々な「やさしく」があります。その人その人の、ほんの小さな積み重ねが広がって、大きなうねりとなり、巡り巡って自分も「やさしく」なれると、この絵本は教えてくれました。 裏表紙には「かんたんな　ことばが　せかいを　かえる」と・・・

   さあ、勇気を出して、あなたの言葉で声をかけてみませんか？