あれほどの暑さを忘れてしまうくらいに、一気にひんやりした空気が舞い込んできました。
いつもとは違う夏の日々を思うと、あまりにも外に出られなくて、空高く立ち上った入道雲やギラギラと輝く太陽に向かう向日葵も見そびれてしまったかもしれません。
でも、季節はちゃんと巡ってきています。澄んだ空にはいわし雲が流れ、向日葵は種を宿しています。
お日様が沈んで、夕焼けを見送った空をみあげると、薄闇の中に月がのぼってきました。
ほら・・・今夜の月、なんだか少し大きく見えてきませんか?
くたびれたおひさまが、ねむりかけた丘へおりてくる。ひまわりもいねむりしている。
すると、つきが のぼった!ふくろうが 目をさました、ねこが 庭をぐるっと、まわって、きどをでていく。ひんやりとした夜のかげがあつまっている。キンギョは池であそび、年よりカエルが鳴きはじめた。月に照らされて、はだしで踊りだしたのは子どもたち。髪の毛をぼさぼさにして、草をふんで、なんども なんども!木登りしたり、キャンプした気分でねむる。歌もつくる、詩もつくる。こわーいはなしもする。とんぼがえりもする。
みんな ジャンプする、とびあがる、なんども、なんども、たかく もっとたかく。でも、おつきさまには さわれない。つきふうせんは どんどんふくらむ。
きょじんのかげが しのびよる!パイプをすっている・・・きょじんはとうさんだった。
「こどもたち、じかんよ」かあさんが よぶ。
でも、ちがう、こどもたちなんかじゃない、ムーン・ジャンパーだ!
「おやすみなさい おつきさま」4にんは ねむって、あしたの おひさまを ゆめみる。
なんて美しい絵本でしょう!!
絵を描いたのは、あの「かいじゅうたちのいるところ」でお馴染みのモーリス・センダックです。
文は、ジャニス・メイ・ユードリー。
私も大好きな絵本「きみなんかだいきらいさ」で二人はコンビを組んでいます。
この絵本は、センダックがジャニスのこの詩的な作品に深く心を動かされて描いたと言われています。
センダックの作品の中でも突出して丁寧な細やかな描写に目を奪われてしまいます。
そして、谷川俊太郎さんの訳は、ジャニスの世界をより鮮やかに見せてくれます。
月明かりの中で、生き物たちの営みが生き生きと描かれ、月に誘われた子供たちは、その神秘的な空気感の中に漂う風を感じ、子供たちの裸足は草のとがった先っぽをつかみます。
月夜の中で思いを巡らして、月に触ろうという思いがジャンプをさせてしまう、子どもたちだけでなく大人も一緒にジャンプしてしまうだろうなと思わせてくれます。
遠い昔、そんなことがあったような・・・記憶の中に舞い込むような絵本です。
秋の夜、家族みんなで、美しく輝く満月に出会ってください。
(赤鬼こと山ア祐美子)
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