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認定こども園 聖愛幼稚園

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赤鬼からの手紙(2020年8月号)



『はなびのはなし』

たかとう しょうはち

福音館(かがくのとも傑作集)


   夏の風物詩と言ったら、入道雲、ひまわり、海、スイカ割り、朝顔、風鈴、いろんなものが頭に浮かびます。中でも花火は夏の思い出には必ず出てくるものかもしれません。でも、今年の夏は、ちょっと違います。日本中で夏祭りが中止になってしまいました。祭りには欠かせない花火大会も見られなくなってしまったところもたくさんありますね。

   いつも美しく夜空を彩っている花火って、どんな風に出来ているか知っていますか?
こんな時だからこそ、花火の仕組みをちゃんと知っておくのもいいですね。


 ここは はなびを つくる こうじょう。はなびは かやくが ばくはつして、きれいな ひかりのはなが さくんだ。まちがって、ばくはつすると あぶないので、こうじょうは まちをはなれた やまのふもとにある。ふゆのあいだから こうじょうのひとたちは おおいそがしだ。
 うちあげはなびを つくるには はなびの たまをわる「わりかやく」、たまのなかに はいっていって、とびちる 「ほしかやく」の二しゅるいがある。「ほしかやく」づくりは はなびの うつくしさを きめる だいじな しごとだ。ボールがみを かためて つくった たまが、はなびの いれもの。はんぶんの たまに「ほしかやく」をきれいに ならべて、そのなかに「わりかやく」を いれる。できあがった たまを りょうてで ぱっと あわせて まるい はなびの たまになる。しあげには クラフトしを なんまいも、のりで はっていく。うちあげはなびの たまには、3ごうから 30ごうまで いろんな おおきさが ある。はなびは そらに あがって どんなふうに ひらくのだろう。
どうかせんに ひがつき、「わりかやく」をばくはつさせる。われた たまから ひのついた「ほしかやく」がとびだして、ひかりのいろを かえながら ひろがっていく。

 きょうは まちにまった はなびたいかいの ひだ。かいじょうの かわらに たてられた やぐらでは、しかけはなびの もじが とりつけられていく。うちあげるための つつが なんびゃっぽんも たてられた。きけんな かやくを つかうから、じこを おこさないように みんな しんけんだ。ゆうがた かいじょうには どんどん ひとが あつまってきた。のんだり たべたり、おしゃべりしたりしながら たのしみに まっている。
 「どん」という おとがして さいしょの はなびが あがった。はなびは そらたかく あがると、きれいな ひかりの はなを さかせた。しかけはなびにも ひがついて ひかりのもじが きれいにうかびあがった。はなびが よぞらに はなを さかせているしたでは、うちあげるひとたちが、うちあげるおとと かやくの もえる においのなかで、いそがしく はたらいている。じぶんたちが うちあげている はなびを みる ひまもない。でも、わきあがる かんせいで、はなびが せいこうしているのが わかる。はなびを つくる ひとたちが、あたらしい くふうをした はなびも うちあげられ、おしまいには 30ごうだまの うちあげ。ひとびとの はくしゅは いつまでも きえませんでした。

   2000年7月1日号の「かがくのとも」発行の作品です。2005年には傑作集として、ハードカバー作品になっています。花火の絵本もたくさんあるのですが、今回は、花火がどうやって打ちあがるのかをお伝えする絵本にしました。

   山梨では市川三郷町の神明花火が有名です。三郷町は花火の町としても歴史が古く、その起源は、武田信玄が戦の時に使った狼煙(のろし)に始まると言われているそうです。毎年、全国から集まった花火師たちが技を競う秋田県大曲花火大会でも、三郷町の名前を見ることがあります。花火師たちは、この絵本にもあるように、大会が終わると、すぐに次の大会に備えて、秋冬を過ごし、1年をかけて準備をするそうです。絵本には、実物大の花火の仕掛けが描かれています。これがどんな風に空に上がって光の花になって輝くのか、想像するだけでワクワクします。ページごとに花開く、いろんな花火が目に飛び込んできます。スターマイン、ナイアガラ、最後の30号玉の迫力も伝わってきて、その場にいるような気がしてきます。

   今年はそんな花火師たちの業が花開く場が狭まれ、本当に残念でなりませんが、来年には今年の分まで、大輪の花を咲かせてくれることを願っています。今はこうして、花火の絵本を探したり、花火の絵を描いたり、手元の線香花火も楽しみながら、いつか夜空に大きく、幾重にも光の花開くその時を待ちたいと思います。

(赤鬼こと山ア祐美子)

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