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赤鬼からの手紙(2020年6月号)



『 か さ 』

作・絵/太田大八


文研出版


   6月になりました。入園式や入学式だけで、幼稚園、学校に行かれなかったお友達もたくさんいたと思います。ステイホームと言われて、家に居なければなりませんでした。でも、やっと、待ちに待った幼稚園、学校に行かれるようになりました。まだまだ心配なことや、気をつけなければならないこともありますが、一人一人が約束を守って、家族や先生、友達と相談して協力しながら過ごしていきましょう。あたりを見回すと、葉っぱの緑も深く濃くなっています。知らないうちに雨の季節もやって来そうですね…もしかしたら、あっという間に傘の出番がくるかもしれません。

   黒い傘の中に真っ赤な傘が一つだけ、これがこの絵本の表紙の絵です。 文字はひとつもありません。真っ赤な傘だけが目に飛び込んできます。 降りしきる雨の中を赤い傘をさした女の子が歩いています。手には、長くて黒い傘を持っています。 どこへ行くのでしょうか・・・

公園のそばを通ったり、お友達にあったり、犬に雨のしぶきをかけられたり、ケーキ屋さんのウインドウをのぞいたり、、、歩道橋もわたります。
あっ、お人形・・・信号待ちをします。
雨はなかなかやまないようです、、、赤い傘が向かうのは・・・

   この絵本について、太田さんはこう語っています。
「絵本作家となってしばらくは絵のみを描いていましたが、70年代に入って作絵の両方を手がける作品を出すようになりました。 『かさ』はそんな初期の作品です。 大人用の黒い傘の中を女の子の赤い傘が動いていく、というイメージ。それが最初にありました。 レオ・レオニの『あおくんときいろちゃん』ってあるでしょう。 ほとんど色が使われていない、ああいう本を作りたかった。 それで色数を抑えたんです。絵だけで文字のない作品です。 子どもが自分で絵本を見て、何かを発見する、自分で物語を作る。 そういう意図があったんですよ。絵本を作る側は言葉をしゃべらず、子どもの言葉を待つということです。」
主人公の女の子のモデルは太田さんの娘さんだそうです。
実際に駅まで迎えてきてくれた思い出が形になりました。

   絵本について語る太田さんの言葉にある〜子どもの言葉を待つ〜ということが、とても印象に残りました。 この絵本は年齢問わずに人気があります。主人公は女の子ですが、案外男の子も好きなのです。 繰り返し繰り返しせがまれる一冊でもあり、一人でも、親子でも、友達同士でも、読み聞かせをしても、いろんな読み方ができる普遍的な可能性を持っています。 一人一人にとっての大事な傘になることが太田さんにはわかっていたのでしょうね。

   「いい絵本で感動することこそ子供を育てる最良の薬」という持論のもとに、太田さんが立ち上げられたのが「こどもの本WAVE」という活動です。

〜絵本というのは、広げていかないと意味がない、と思っているんです。絵本は、せっかくの子どもの文化でしょう。ではどうするか、と考えて、2003年に「こどもの本WAVE」という活動を始めました。立ち上げの際には、「子どもの本の好きな人たちが手に手を取って大きな波を起こそう」と呼びかけました。絵本とは、コミュニケーションです。描きっぱなし、本屋に置きっぱなしではしょうがない。それだけではものたりないから、もっと積極的に本をすすめたいと思ってるんですよ〜

   太田さんは名誉会長としても活躍されていました。2016年8月にご逝去されましたが、活動は今も継続され、様々な発信をされています。

   思いもよらないことが起きて、今世界中は命を守るために手を結ぼうとしています。 ことに子供たちの安全は大人が守らねばなりません。 肉体的な安全は言うまでもないことですが、こんな未曽有な状況を乗り越えるためには子供たちの心を守らねばと思います。 絵本一冊も子供たちに寄り添うことが出来ると信じています。太田さんからの大事な薬をお届けします。

(赤鬼こと山ア祐美子)


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