今、世界は未曽有の出来事に見舞われています。ウイルス感染が世界中に広まって、日本もたくさんの感染者が増大しつつあります。亡くなってしまう方も増えてきました。誰も予想できなかったことが起きて日々の生活が変わってしまいました。不安や戸惑いに囲まれる日々ですが、自分達のできることを精一杯頑張って、みんなで乗り越えていきましょう。
こんな時こそ、ちょっと変わったこんな絵本はいかがですか。今まで知らなかった人にであえるかもしれません。
アイヌモシリとは 人間らしい人間のくに。アイヌの自由な天地のことだ。
そのゆたかなくにに、パナンぺとペナンぺという、ふたりのじいさまがすんでいた。
パナンぺは川下のもの、ペナンぺは川上のものといういみだ。
ふたりともに おなじアイヌだ。
あるひ、パナンぺじいさんは、かわへ さかなを とりにでかけた。「かわのかみさま、これから、わしはサケをとらせていただきます」といのりを ささげると みるまに かごは サケでいっぱいになった。すると、どこからか やせこけたいぬが あらわれて キュンキュンとないたので、まるまるとふとったサケをいっぴき、わけてあげた。
パナンぺが かえろうとあるきだすと、金と銀のこいぬが とびだしてきた。こいぬのあとをついていくと、大きないえがあらわれた。「よく、おいでくだされた。ここは、いぬのむら。それがしは、いぬのむらのエカシでござる」サケをあげた いぬは このむらおさの むすめだった。「さあ、みなのしゅう、うたげじゃ、おどりじゃ」みたこともない ごちそうがならび、おおぜいいのむらびとたちが、うたいおどってくれた。パナンぺは銀のこいぬを おみやげにもらった。〜アンナホーレ ホレホレ おわかれはつらいけど また おめにかかります〜いえにかえると、こいぬは〜わたしの あたま 三どたたいて ヒオーイオイ〜と、うたった。「おや、まあ」ばあさまが やさしく ゆびで ポンポンポンと、たたくと…みごとな かたなにかわって、へやには、たくさんのたからものが、かがやいている。これをかくれてみていたペナンぺが、いえにとびこんできた。
「おめえばかりが いいめにあうとは、きにいらねえ」と、おおごえでどなると、ペナンぺは とぐちに おしっこをひかけて、パナンぺからきいたとおりに、かわへと はしった。やっとこさ、サケをとって、「これでもくらえ」とサケのしっぽをちょんぎって、あらわれたやせこけたいぬに、なげてやった。にげるこいぬをおいかけ、いぬのむらのいえまでくると「くうものをくい、もらうものをもらわねば、かえるわけにはゆかねえ!」ペナンぺは、てあたりしだい ごちそうをくいあらし、しこたま さけをのみまくった。いやがるこいぬを ひきずってかえると、ばあさまが、まきのぼうで こいぬのあたまをぶちのめした。
とたんに、ガラガラドシン!ペナンぺとばあさまは、いぬのくそや、たべかすや、ちりや、あくたのごみのやまに、ずっぽり くびまでうまっておったと。
いまいる人びとよ、いかなるものにも れいぎただしく まことをつくさねばならぬ
「ウポポイ」という言葉を知っていますか?アイヌ語で「みんなで歌う」という言葉だそうです。
アイヌ民族とは、元々北海道にいた先住民族です。
「ウポポイ」の愛称がついた施設が北海道で4月にオープン予定でしたが、5月末に延期になりました。
正式名称は、「民族共生象徴空間」といいます。
アイヌの文化を国内外に紹介する拠点として国が整備を進めてきた施設です。
この話もアイヌ民族に伝わる民話の一つです。
伝え方は口承で語り継がれてきました。
「ウポポイ」の施設の中にも、民話のみならず音楽や風習、食べ物など様々なものが伝えられているそうです。
絵本「パナンぺ ペナンぺ」には、一冊の中に二つのお話がつながって描かれています。
今回は前半部分をご紹介しています。
後半部分のお話も二人のじいさんが巻き起こすことは、それぞれ面白くて愉しくて、くさ〜〜いおならもでてきます。
こんな風に、放屁や大便にちなむ笑い話はアイヌ独特のものではなく、日本を含む東アジアに似たようなお話がたくさんあるようです。
話のところどころに、いかにも口伝えで歌われたような言葉がでてきますので、調子をつけながら読み進めると、より味わいがあります。
裏表紙には、譜面もありますので、楽器のできる方は是非奏でてみてほしいですね。
パナンぺ、ペナンぺにまつわるお話は、滑稽話が多いのですが、実は人間の祖のように表現されるお話もあるそうです。この絵本の最後には,こんな言葉が書かれています。
パナンぺもアイヌ、ペナンぺもアイヌ、たったパとペのちがいだけ。
ふたりはともに、おなじ、アイヌだ。
ゆたかで、自由な、アイヌモシリの、
ほこりたかい人間なのだ。
(*残念ながら、現在絶版中です、図書館等でぜひ出会ってください)
(赤鬼こと山ア祐美子)
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