学校法人
認定こども園 聖愛幼稚園

〒400-0071
山梨県甲府市羽黒町618(地図
TEL 055-253-7788
mail@seiai.net



赤鬼からの手紙(2020年1月号)



『 マシューのゆめ 〜えかきに なった ねずみの はなし〜 』

レオ=レオニ
訳 谷川俊太郎

好学社刊

   あけましておめでとうございます。 2020年、令和2年が明けました。 干支は子年、12年に一度巡る一番初めに数えられる干支です。 いろんな意味でも新しさを感じます。願わくば、災害のない喜びの多い1年であってほしいと思います。

   子年の本来の意味は、「漢書」によると「子」は「孳」(し:「ふえる」の意味)で、新しい生命が種子の中に萌(きざ)し始める状態を表しているとされているそうです。 後に、覚えやすいように、動物のねずみに・・・この本来の意味でも、ねずみ年は今年にぴったりですね。

ほこりだらけのやねうらに、ねずみのふうふが すんでいた。そのむすこのマシューのいばしょは、くものすが たれさがるかたすみ、しんぶんやほんや、ざっし、こわれたランプ、あわれなにんぎょうの むくろが つみかさなったコーナー。ねずみいっかは まずしかったが、マシューにおおきなのぞみを かけていた。おおきくなったら、きっと おいしゃさまになるだろう・・・けれど なにに なりたいか マシューにきくと、かれは いった、 「わかんない・・・・・・ぼく せかいって いうものを みたいんだ」
あるひ マシューは クラスのみんなと うまれてはじめて びじゅつかんへ つれて いかれた。 マシューは むちゅうになって へやから へやへと あるきまわった。そのうち、かどを まがった ところで であったのは いっぴきの かわいいねずみ。かのじょは いった。 「わたし、ニコレッタ ここにある え、みんな すてきじゃない?」
そのばん マシューは ふしぎな ゆめを みた。ニコレッタと てをつないで おおきな おおきな すばらしい えの なかを あるいていく ゆめ。 あるいていくうちに、あしの したで いろの きれはしが、たのしそうに いろんな いろに かさなりあい・・・おんがくに のって、ゆっくりと うごいていく。 こんな しあわせは はじめて だった、「いつまでも ここに いよう」かれは ささやいた。
めをさますと、マシューはひとりぼっちだった。 やねうらの コーナーは わびしく、さむざむしく、きがめいるような こうけい、かれのめに なみだが うかんだ。 だが それから、まるで まほうのように めにしたものが かわりはじめた。 きたない ごみの やまの あせた いろは、かがやいた。とおくから、おんがくが きこえる ような きがした。
かれは りょうしんの ところへ かけて いった。 「わかったよ!いま わかった! ぼく、えかきに なる!」かれは さけんだ。 マシューは えかきに なった。 かれの かいた いちばん おおきな えは、いまでは びじゅつかんに かざられている。 だいを たずねられると、マシューは ほほえむ。「だいだって?」 そして、こたえる、「ぼくの ゆめ」と。

   絵本の世界では、ねずみが主人公の絵本がたくさんあります。 調べてみたことはないけれど、海外の作品でも、日本の作品でも、かなり上位にくるような気がします。 そういえば、あのウォルトディズニーの生み出した愛すべきミッキーもねずみですね。 今回取り上げたレオ・レオニ作品でも、ねずみは第一人者です。 子年の新年にふさわしいものとして、ねずみのマシューに登場してもらいました。

   〜えかきに なった ねずみの はなし〜 谷川俊太郎さんの翻訳は、レオ・レオニの世界観をより豊かに表現してくれています。 絵本によせる言葉が、見返しの部分にあります。 〜マシューは美術館に連れて行かれたおかげで、自分が本当にしたいことを発見し、生まれながらにもっていた才能を伸ばすことが出来ました。 大切なのは知識ではなく想像力だということを、レオニは「ゆめ」という一語で示します。 きたないとばかり思っていたものが、想像力によって美しいものに変わり得る、レオニはそこで抽象絵画の成り立ちについて語るとともに、人間の生き方を語っていると思います。〜

   ねずみたちの姿を借りながら、生きていくための”生きがい”のようなものに気づかせてくれるレオ・レオニの絵本たち。 谷川さんのならではの言葉の選び方は、ねずみたちをより思慮深い存在にして私たちの前に現してくれます。 柔らかな色遣いの多いレオニ作品の中でも、今回の表紙の絵は、鮮やかさを増しています。 谷川さんの言うように、抽象絵画の成り立ちをも彷彿させてくれる色遣いなのかもしれません。

   今年も、想像力を湧き立たせ、生きる力を育む、たくさんの絵本たちに出会いたいと思っています。

(赤鬼こと山ア祐美子)


戻る



Copyright © 2019, SEIAI Yochien.
本ページと付随するページの内容の一部または全部について聖愛幼稚園の許諾を得ずに、
いかなる方法においても無断で複写、複製する事は禁じられています。
mail@seiai.net