今年もこの季節がやって来ました。 紅葉を楽しみながらも、吹く風は北風の装いです。 世の中的には日本独特の年号という称号が「平成」から「令和」に変わり、どことなく忙しなく落ち着かないような1年だったような気もします。 そんな中で、今年も新たな大きな災害にも見舞われ、未だに不自由な生活を余儀なくされている方も少なくありません。 世界的には、各地で分断されていくニュースが飛び込んできます。 人々がどんなに多様化しても、自由で平和な暮らしを実現するためには、手を携えて理解し合っていかねばならないと思いつつ、世界中で待ち望む星をお届けします。

むかしむかし　いまから２せんねんも　まえのこと
ユダヤのくにの　ひとびとは　わるい　こうていに
くるしめられていました
ひとびとは　ふしあわせでしたが　いっしょうけんめい
はたらいていました
だいくのヨセフと　つまのマリアは　こうていの　いいつけで　ナザレのまちから　ベツレヘムまで　でかけていくのです
ヨセフとマリアだけでなく　ユダヤのひとびとは　みんな　ながいたびを　つづけています
「ああ　はやく　たのしい　よのなかに　ならないかな　すくいぬしは　いつ　あらわれるのだろうか」
ひつじかいたちは　ユダヤのひとびとの　ふしあわせを　かなしむのでした
ヨセフとマリアは　ひつじかいに　あいました
「どこかに　やどやは　ありませんか」
「ベツレヘムのまちは　どこも　まんいんです　とまるところは　ありません　でも　まちのはずれに　うまごやが　ありますよ」
「ありがとう　ひつじかいさん　わたしたちはどこでもよいのです」
ヨセフとマリアは　うまごやに　いそぎました
よるになって　そらには　いっぱいの　ほしが　かがやいています
おおきな　ほしが　ひとつ　つよく　あかるく　ひかっています
せかいに　なにか　ふしぎなことが　おこるかのように　そのおおきな　ほしは　まばゆく　ひかっているのです
あかるく　かがやいている　ほし
おおきな　ほしのしたには　ちいさな　うまごや　
そらからは　きよらかな　てんしの　うたも　きこえてきます
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もう　おわかりですね
おおきな　ほしの　ひかったばんに　うまごやで　うまれた　あかちゃんこそ　イエス・キリストです
せかいじゅうの　ひとたちに　ただしく　いきることを　おしえ　しんこうと　あいとゆうきの　おてほんを　しめした　かみのこ　イエス・キリストです
それから　2せんねん　イエスのおたんじょうを　おいわいし　せかいじゅうのひとが　しあわせになるように　みんなで　おいのりするのです

   真っ赤の表紙の横長の絵本、一度見たら忘れられない作品です。 1966年、こぐま社から出版されました。文を手掛けたのは、和田義臣さん。 こぐま社創設にも関わり、「しろくまちゃんのほっとけーき」発刊にも大きな尽力をされました。 元々は児童演劇の劇作家という肩書を持っておられた方ですので、よく知られている聖書物語が、よりドラマチックに展開して描かれているように感じます。 全文がひらがなで表現されているのも、柔らかさとやさしさが伝わります。 そして、小さな子供たちが、自分の膝にのせてページをめくる楽しみが、この横長の形に現れています。 懸命にめくる子供たちの小さな指先が、目に浮かぶようです。
   絵を描いたのは、司修さん。 この版画様式の絵柄が、シンプルな中に物語の確実性と重要な気高さを伝えています。 私は、この頃の司さんを見かけたことがあります。 物静かな雰囲気で、ちょっとしたイケメンな青年であったように思いだされます。 松谷みよ子さんの絵本の挿絵、また宮沢賢治作品にも多くの秀逸な絵本を届けています。 もちろん今も引き続き、絵本のみならず、あらゆる場面で活躍をされています。
   聖夜のお話は、世界中にもたくさんありますが、その一つ一つの中で一番大事に語られるのは、やはり星の部分です。 その中でも、この絵本の題名は、特に印象的です。加えて表紙の色、形に至るまで、作者たちはもちろんですが、送り手側の出版社の緻密な想いの積み重ねを感じます。 この季節だからということでもなく、1年中いつもそばにいて、そっと見守ってくれているような気がします。

今年の聖夜には、星降る空を見上げてそばにいる人と手をつなぎましょう。
〜地には平和、人には喜びを〜
”Joy to the World!　Happy Merry Christmas to You!”