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認定こども園 聖愛幼稚園

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赤鬼からの手紙(2018年9月号)



『こねこのぴっち』

ハンス・フィッシャー 著
石井桃子 訳

岩波書店


   酷暑の夏も少しずつですが、空模様がかわってきました。抜けるような青空も空気が澄んで秋の風を呼び込んでいます。夏にであった出来事を思い出しながら、来る秋に思いを巡らすのにいい季節です。人間にとっていい季節は、身近な動物たちにとてもいい季節に違いありません。家で生き物を飼っている人も多いでしょう、犬、猫、うさぎ、鳥、魚、、ほかにもあるかもしれませんね。生き物たちとの関わりの中で、私たち人間が学ぶこともたくさんあります。今回の主人公は猫です、いったいどんなことを伝えてくれるでしょうか・・・

 りぜっとおばあさんがあみものをしています。そのわきには2ひきのねこがねています。とうさんねこのまりとかあさんねこのるり。さいきん、るりは5ひきのこどもをうみました。ぐりぐりとぐろっぎ、ぱっちとみっち、いちばんちいさくておとなしいのがぴっちです。いぬのべろが、ほかのねことあそばないぴっちをしんぱいそうにみています。おばあさんがいなくなると、ぐりぐり、ぐろっぎ、ぱっちとみっちのいたずらは、いよいよひどくなっていきます。ぴっちだけは、そんなことはしたくありません、ぜんぜんちがうことがしたかったのです。
 りぜっとおばあさんは、ほかにもいろいろどうぶつをかっていました。ぴっちはひよこたちとあそびたいとおもいました。でもめんどりかあさんは、ひよこたちをよんでほかのところへいってしまいました。ぴっちは、おんどりとうさんのあるきかたが、りっぱなので「ぼくも りっぱな おんどりになりたいなあ!」と2ほんあしであるいたり、おんどりにまけないくらいに、いっそうおおきなこえをはりあげました。そのうち、となりのおんどりとけんかがはじまりました。「いやだ。こんなことなら、おんどりなんかになるのは やめだ!」
 ぴっちは、ひろいはらっぱにきました。ちゃいろのやぎがねころんでいました。 「ぼく、やぎになってみたいなあ」ぴっちはきのえだをつののかわりにして、「ほら、あなたに そっくりでしょ。」でも、ちちをしぼられるとわかると、にげだしてしまいました。 けれども、またすぐ、あたらしいおともだちができました。つぎはあひる、ぴっちは、あひるとおなじように、いけでおよいでみたくなりました。ところがたいへん!ぴっちは、しずんでしまいました。 あひるのおばさんにたすけられて、きしまでつれていってくれました。そんなぴっちをみていたのは、うさぎたち。ぴっちは、じぶんもうさぎのつもりで、いっしょにうさぎのこやにとびこみました。でも、いけにはいってびしょぬれになったぴっちはさむくてこごえそうです。 それに、きつねとふくろうにおどかされて、とてもこわいおもいをしたのです。やっと、りぜっとおばあさんが、ぴっちにきづいて、うさぎのこやからだしてくれました。つぎのあさ、ぴっちはおもいびょうきになっていました。いえのとがあくと、ほかのどうぶつたちが、みんながおみまいにきてくれました。 おばあさんやほかのどうぶつたちのおかげで、ぴっちはげんきになってきました。おいわいのたのしいかいもしてくれました。 おばあさんはごちそうをつくってくれたり、ぴっちだけせなかにクッションをあててもらったり・・・。
「なんて、やさしいおばあさんだろう。ぼくはもうけっしてよそへはいくまい。ここがいちばんいいところだ。」とぴっちはおもいました。

   何となく物足りない、何か他いいことがあるかもしれない、ほかの何かになってみたいっておもうことはたくさんありますよね。まずはやってみないと・・・好奇心は発見や挑戦の原動力です。だから、ぴっちはすごいなあっておもいます。でも、それができるのは、ちゃんと見守ってくれているりぜっとおばあさんがいるからですね。ぴっちは最後にそのことに気づきます。普段は気づかないまま過ごしていても、何かあると気づくことがあります。私たちの周りには、そんな風に見守ってくれている人たちがたくさんいます。そのことを伝えてくれたぴっち、でもあのくるくるした目をみていると、また新しいチャレンジをするかもしれません、でも、きっとりぜっとおばあさんに心配はかけるようなことはしないでしょう。ぴっちはおばあさんのことが大好きですから・・・

(赤鬼こと山ア祐美子)


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