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認定こども園 聖愛幼稚園

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赤鬼からの手紙(2018年7月号)



『ハワイ島のボンダンス』

いわねあい ぶん
おおともやすお え

福音館書店


   7月の声を聞くと、なんだかワクワクしてきますね。 そろそろ入道雲が立ち上り、ひまわりもすくすく伸びて大きな花を咲かせそうです。 皆さんが楽しみにしている夏休も、もうすぐです。 夏には、夏にしかできない行事もたくさんあります。 その一つに夏祭りがあります。祭りには、どんなことがあるでしょうか、提灯を飾ったり、打ち上げ花火を見たり、浴衣を着て並んだ出店を歩くのも楽しいです。 ”盆踊り”も祭りにはなくてはならないものです。 ”盆踊り”は日本の伝統的な祭りの踊りですが、こんなに遠く離れたところでも踊られているそうです。 それ一体どこなんでしょうか・・・

「なつやすみに とうさんは おばあちゃんと ハワイに いくんだけど、いっしょにきて、てつだってくれるかい? おばあちゃんは くるまいすで いどうするから てつだいが いるんだ」
「わかった、ぼく てつだうよ!」
おばあちゃんは たったひとりになってしまった きょうだいのみちこねえさんに あいにいくのだ。 3にんは みちこさんが すんでいる ハワイ島のヒロくうこうへ むかった。 くうこうでは おねえさんのみちこさんと みちこさんのかぞくが むかえてくれた。
「ちょうど いいときに きたね。 もうすぐ ボンダンスが あるよ!」
「えっ?ボンダンスって なんだろう?」

みちこさんの いえは おばちゃんの くまもとのいえに にていた。 まわりのかべには むかしの しゃしんが いくつもかざってある。 みちこさんは ふるいアルバムを まさるに みせながら はなしてくれた。 100ねんいじょうもまえから、たくさんのにほんのひとが ハワイにきたこと。 サトウキビばたけで いっしょうけんめいはたらいて おかねをかせいで にほんのかぞくにおくったこと。 みちこさんのだんなさんの おとうさんとおかあさんは くまもとからきて みちこさんは そのだんなさんのおよめさんになるために ハワイにきたこと。 そのときのハワイでのくらしのたいへんだったことなどを おしえてくれた。 オベル、ラウラウ、ポイ、シーウィード、ポケ、リリコイ、ハワイのりょうりはめずらしいものばかり、それのどれもこれも みちこさんのはたけでとれたものだ。
「たべたいものも のみたいものも みんな じぶんで つくるんよ!」
よぞらには かぞえきれないほどの ほしがかがやいている。
「あのオレンジいろの ほしがアルクトゥルス。ハワイごで、ホクレア。『きぼうのほし』といういみ。ハワイのひとにとって とくべつな ほしなの」
よくあさ、まさるはマカデミアナッツをひろいにいった。 あさごはんのあと、しまのあちこちにあんないしてもらった。 キラウエアかざんの かこうからは けむりがもくもくたっている。 ハワイのしまは ふんかしたようがんが かたまって できたそうだ。 それから、みんなでスーパーで たくさんのかいものをした。
「こんなにたくさんかって どうするの?」ときくと、みちこさんは
「おてらにもっていくんだよ。ボンダンスのごちそうをつくるからね。」
「えっ?ハワイに おてらがあるの?」
「100ねんいじょうまえに たてられた おてらだよ。
 ジャパンから さいしょにきたひとたちが じぶんたちで おてらをたてたんだよ」 みんなにおしえてもらいながら、まさるもいっしょにごちそうの じゅんびをした。 おばあちゃんは おてらの てぬぐいで ハッピをつくってくれた。
「うわー、かっこいい!」 「まさる、ボンダンスの れんしゅうだ」
「ボンダンスって、ぼんおどりのことだったんだ」
まさるは すみっこにいた おばあちゃんのくるまいすをおして、「レッツゴー!」 おばあちゃんも とうさんも ボンダンスの わに くわわった。


   1868年153人の日本人が強制的にハワイに送り込まれました。彼らは移民の元年者と呼ばれています。今年は、それから150年を数える記念の年となっています。

   1848年、ハワイ王朝からハワイに土地の所有を認められたヨーロッパの資産家たちは、サトウキビ栽培に投資をかけ、多くの農場を作りましたが、地元の人だけでは維持ができず、移民を求めました。初めは中国人でしたが、彼らは定着せず、次に目をつけられたのが日本人であったという歴史があります。元年者の苦労は並大抵のものではありませんでしたが、勤勉で努力家の日本人はハワイに定着して多くのサトウキビ畑を開拓していったのです。その日本人の気持ちのよりどころとして、最初に建てられたお寺がこの絵本の中にあるハマクワ寺院です。

   実は、私がお世話になっている目黒蟠龍寺スタジオの吉田哲さんの祖父、吉田良雄(りょうゆう)さんはハマクワ寺院の日本人宣教師でした。そして、吉田さんの父、吉田哲雄(てつゆう)さんはハワイで生まれたのだそうです。哲雄さんは、曼荼羅研究家としても著名な方です。この絵本も巡り巡って、蟠龍寺に送られてきたと聞きました。

   今の私たちにとって、ハワイはレジャーや観光地のメッカとして、楽しまれる場所であり、またハワイアン音楽やフラダンスも、今や、日本人にはなくてはならないような存在にまでなりました。年間の旅行者や移住者も増加傾向にあるようです。でも、そのハワイは、日本人移民2世3世、そして4世にまでつながり、多くの街をつくってきているのです。元年者のご苦労に加えて、戦時下においてアメリカと日本との間で揺れた多くの方々のご苦労も忘れてはなりません。そんな中でもこうして、失われつつあった日本の伝統ある「盆踊り」を日本のそれぞれの地域からの移民の方々の努力によって復活し、繋がれてきたことは私たちにとっても有難く嬉しい気持ちがします。

   今年の夏まつりは、大人も子供もおじいちゃんもおばあちゃんも「盆踊り」しましょう!

(赤鬼こと山ア祐美子)


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