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赤鬼からの手紙(2018年2月号)



『おにはうち ふくはそと』

西本鶏介 文
村上 豊 絵

ひらさかチャイルド


   今年の寒さは、数十年ぶりといわれるほどの厳しさです。都内もここ数年もないような雪に見舞われ、交通マヒをはじめ、雪に弱い都会の脆さを見せつけました。雪深い地方の雪もいつにもまして降り積もり、雪慣れしている人々にとっても、余談の許さないような日々が続いています。まだまだこの寒さは続きそうですが、2月のこの季節…あの鬼たちはどうしているでしょうか。気がかりな鬼たちの様子をのぞいてみましょう。

むかしむかし、あるところに おひゃくしょうのおとこと、そのおかみさんがすんでいた。
とてもびんぼうで、せつぶんのひがきても、まめまきのまめもないありさま。きんじょでは「おには そと、 ふくは うち」とにぎやかにはじまった。
「うちでも まめまきをしたいのう。しかたがない。こえだけで まめまきをしよう。」
おとこは、からっぽの ますをかかえて、くやしいやら、はずかしいやら、なかなか こえがでてこない。おかみさんに「さあ はやく」といわれて、おとこは こえを はりあげた。
「おには うち、ふくは そと。おには うち、ふくは そと。」
(あれえ、なんだか おかしいぞ)
さあ、よろこんだのは まめをなげられて、にげまわっていた あかおにと あおおに。
「しめた。かくれるところが みつかったぞ。」おにたちは おとこのいえに とびこんだ。
「いやあ、たすかった。どこの いえでも おいはらわれて…こんや ここにとめてくれ。」
「と、と、とんでもない。」と、おとこはあわてて くびをふった。「おにさまを ねかせるふとんもない、こめもない。」すると、あかおにが にやりとわらった。
「そんなら、このふんどしをやるから、こめと とりかえてこい」あかおには、とらのかわのふんどしをはずして おかみさんにわたした。こめやは ふしぎそうに さわっていたが こめいっしょうと とりかえてくれた。あおおにのふんどしももっていくと「ふたつもそろったなんてありがたい」と すっかりよろこんだこめやは うまにつめるだけの こめだわらに とりかえてくれた。おかみさんは さけや さかなや やさいも よういして おにたちにごちそうした。おにたちはおおよろこびで「こんやは さかもりだ。お前たちものめ。」おとこも おかみさんもたのしくて いっしょになっておどった。
 つぎのひ せつぶんのぎょうじもすっかりおわって、すっかりしずかになった。
さてさて、おにたちは どうしたでしょう・・・

   「おにはうち ふくはそと」 今年の鬼の絵本の題名は、あれっ?て思いましたか? 西本鶏介さんは、創作もたくさんありますが、民話や昔話の研究者でもあります。この絵本もそんな中から生まれたものです。
「豆まきは節分の大切な行事です。冬と春の季節の分かれ目の頃は、天気も変わりやすく、そのために病気になることが多いと信じられてきました。そこで病気や災害を追いはらう行事として豆まきが始まりました。豆には鬼のような魔物をやっつけるおまじないの力があり、この豆で鬼を追い出し、幸せの神様がきてくれるように『福は内、鬼は外』というのです。」と西本さんは解説しています。節分ってなんだろう、その言われもわからないまま、豆まきをしていた方もおられるかもしれませんね、こうやって説明すると、子供たちにとっても豆まきの行事がよりわかりやすく、身近にも感じられることでしょう。

   さてさてところが、この絵本の男の家は貧乏で豆もない、そこで声だけで豆まきをしよう、というのです。今風に言えば"エア豆まき"とでも言うのでしょうか。ちょっと楽しくなってきますが、ここで男は大きな言い間違いをしてしまいます。「鬼は内、福は外」これが聞こえてきたら、にげまわっていた鬼たちはほっとしたことでしょうねえ。それにても、鬼のふんどしがこんなに役に立つものとは…初耳でした。脱いだ後はどうしちゃったんでしょう、ここは子供たちが一番興味がわくところ、私も同様でした。ふんどしがないままでずっといたのかなあ…なんてね。村上豊さんのあたたかい絵は、そんな楽しげな鬼たちの様子もユーモラスにこっそりと描いてくれています。村上さんも数多くの絵本を出されています。どれもこれも、登場するすべての者たちへの敬意に溢れていて、ページをめくるたびにいつも心をほっこりさせてくれます。この絵本では、特に鬼たちへの思いがこもっています。

   最後に西本さんは原話にはないお話を入れたと語っています。「おにだって いっけんぐらいは しあわせにできるちからがあるぞ。いくら ふくのかみでも にほんじゅうのいえを しあわせにするのはむりじゃ」鬼たちの心根の優しさが伝わってきます。

   「赤鬼」に出会ってから、私のそばには、いつもこんな鬼たちがいてくれています。そして、この2月にはひょっこり、ちゃんと顔を見せてくれます。 だから毎年、我が家は「鬼は内〜、福も内〜」

(赤鬼こと山ア祐美子)

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