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認定こども園 聖愛幼稚園

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赤鬼からの手紙(2017年12月号)



『ちいさなもみのき』

マーガレット・ワイズ・ブラウン さく
バーバラ・クーニー     え
かみじょう ゆみこ    やく

福音館書店


   急に寒さが増してきました。今年は秋を楽しむ間もなく一気に冬本番を迎えそうです。富士山もすっかり綿帽子をかぶって、ひんやりとした空気を切るように気高くそびえています。そんな姿を見るとなんだか勇気が湧いてきます。私たち日本人は四季折々に出会う豊かな自然に気持ちが揺さぶられることがよくあります。春の桜には心躍り、夏のひまわりには活力をもらい、秋の紅葉にはうつろいゆく姿を思い、そして冬の雪山には力強さ感じます。

   我が子のために、小さなもみの木に思いをたくしたお父さんのお話をお届けします。

もりのはずれの、大きな木々から少しはなれたところに、ちいなさもみのきがたっていました。もみのきが、まだひとつぶのたねだったとき、風に吹かれてのはらにおちたのです。はる、なつ、あき、と過ぎて、七かいめのふゆがきました。もみのきは、くらいもりのおおきなもみのきをいつも見ていました。ひろいのはらで、たったひとりでいるのがさみしくて、みんなといっしょにいたいなと、いつもおもっていました。
あるひ、おとこのひとがちいさなもみの木のところへやって来ました。

 ちいさすぎもせず おおきすぎもせず
 かたすぎもせず やわらかすぎもせず
 きれいな みどりの ちいさなもみのき
 わたしのむすこに ぴったりだ
 つよく いっしょに のびていくんだ

おとこのひとは じめんをほって ちいなさもみのきを あさぶくろでつつみました。
「おまえは みんなといっしょに おいわいをするんだ。そして、はるがきたら、また おまえをうえてやるからな。ここまでこられない、わたしのむすこといっしょに、おおきくなっておくれ。あのこがげんきになるように ちからになっておくれ。」
おとこのこは あしがわるかったのです。もみのきは、おとこのこのベッドのあしもとの、おおきなたるにうえらえました。そして、クリスマス・ツリーになりました。そのよる、こどもたちがやってきて、おとこのこがつくったうたを、ふるいキャロルにあわせて、うたいました。

 おークリスマスツリー おークリスマスツリー みどりのきよ とわに
 よろこびのよるに ほしひとつひかり みどりご うまれん
 おークリスマスツリー おークリスマスツリー

はるになると おとうさんはもみのきをかたにかつぎ のはらにはこんでいきました。もみのきは、ぐんぐんおおきくなりました。そして、そんなことが何度かつづき、また別のふゆがめぐってきました。ゆきがつもり、クリスマスの日になっていましたが、おとこのひとは やってきません。ちいさなもみのきは ひとりぼっちでたっていました。
いったいどうしたというのでしょうか。


   「世界一のクリスマスツリー 神戸に出現」のNEWSが目にとまりました。〜神戸開港150年記念 めざせ!世界一のクリスマスツリープロジェクト〜というものだそうです。有名なニューヨーク・ロックフェラーセンターのクリスマスツリーよりも大きな、世界一の生木のクリスマスツリーを運び、神戸のメリケンパークに立てるという計画なのだそうです。富山県氷見市で見つけた"あすなろの木"が日本海から1000qの長い道のりを経て運ばれたとのことでした。"もみの木"ではないのだな…と思いながらTV画面を見つめました。そのとき、ふとこの「ちいさなもみのき」の絵本のことが頭に浮かび、TV画面を見ながら今年はこの絵本をお届けしようと決めました。

   日本の家庭でも、クリスマスに生木のもみの木を飾ることが増えてきたようですが、欧米などでは生木を飾ることが習わしのようです。この季節の海外ニュースなどでは、父親がもみの木を肩に担ぐ場面によくでくわします。なぜクリスマスツリーにはもみの木が使われるようになったのかは、様々な説があるようですが、旧約聖書のアダムのイヴにまつわる"知恵の木"としてりんごを飾るというお話や、葉の落ちない常緑樹あり、厳しい冬に失われない豊かな緑が"生命の樹"ということ、またドイツなどでは、もみの木には小人が宿っていて、食べ物やいろんなものを飾ることで小人から力を与えられるという説もあるそうです。こんなお話を耳にすると、もみの木に特別な思いがあることが伝わります。

   この絵本のお父さんも、その”生命の樹”のもみの木に思いを託したのでしょう。息子の豊かな成長と健康を願いつつ雪道を分け入って、父はこの小さなもみの木に出会います。そしてちいさなもみのきは確かに男の子に力を与えることが出来ました。絵本の中にあるキャロルがとても絵本を豊かにしてくれています。翻訳をされた上条由美子さんは山梨県の方です。きっと、山梨の森の緑も思い出されていたかもしれません。絵本の中では男の子が作ったというキャロルの言葉も、神様の愛に包まれた自然の豊かさを伝えています。

   今年のクリスマスは、絵本のこんなキャロルをうたってみませんか?

  きてよ めうしよ なやのなか おちちをあげて みどりごに
  きてよ ちいさな ふくろうよ みこはなやにて まもられん
  きてよ くろいこひつじよ みなゆるされん このよきひ
  きてよ ののとり はとたちよ みんなきたりて みこを あいさん

  ”Joy to the World! Happy Merry Christmas to You !”

(赤鬼こと山ア祐美子)


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