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赤鬼からの手紙(2017年11月号)



『きみがしらない ひみつの三人』

ヘルメ・ハイネ 作・絵
天沼春樹 訳

徳間書店

   今年もあと2か月になりました。あたりの空気も日ごとに、秋から初冬の装いになってきています。美しく模様替えした山々も、あっという間に丸裸になってしまいそうです。とはいえ、1年で一番美しい季節には、家族や友人と一緒に公園へ散歩に行ったり、野山を散策したり、旅に出るのもいいですね。きっといい時間がたくさん詰まってきます。そんな時は、頭も心もお腹も一度にいっぱいになりませんか?どうも、私たちの体の中には、こんな3人が、もともと住んでいるらしいのです。

きみが 生まれた日、三人のともだちは やってきた。
アタマはかせとハートおばさんといぶくろおじさん。
アタマはかせは きみが みたり きいたり くんくんしたりして かんじることを カードにかきとめて いつでもおもいだせるようにする。きみが おばけの夢をみたりするのは、はかせが カードをまちがえたとき。
ハートおばさんは きみの心に わいてくるいろんなきもちの せわをしてくれる。びしょびしょのときは かわかしてくれるし、こわれたときは のりでなおしてくれる。だれかをすきになったときのために きみのきもちを だいじにしまっておいてくれる。
いぶくろおじさんは うでききのコック。きみがたべたものをぜんぶ もういちど 料理してくれる。冷たいのみものは あたためてくれるし、熱いものは さましてくれる。
なかのいい三人がけんかすると、きみはびょうきになってしまうんだ。おいしゃさんは なかなおりするように クスリや注射でたすけてくれる。すると 3人はなかよくなって きみも元気になるんだ。
三人のともだちは ずっと きみといっしょだよ。きみが この世から さよならする日まで。きみが しんだ日に、三人は ばらばらになる。そして、三人のすることは・・・

   ”ほんとにいるの?”って、子供たちから聞かれたら、”きっとね!”と答えます。 生まれた時の喜びを伝える絵本はたくさんありますが、こんな風に人が生まれてから死ぬまでの心身の流れを描く作品はあまりないように思います。

   ヘルメ・ハイネの名は、「トマニ式の生き方」の絵で思い出しました。1978年の作品で、CBS/SONYから出されたものでした。星新一さんの翻訳ということもあり話題になりました。とても不思議な内容ですが、ハイネの絵はその雰囲気をうまく表していたように思います。「トマニ式の生き方」の絵も印象的でしたが、今回はハイネがお話も作っています。文章は詩的な穏やかさで、こちらに語りかけてくるようです。そのたたずまいが彼の絵と相まって独特の世界を作り出しています。

   人は生まれてから死ぬまでの一生の中で、自分の中で何が起きているのか、何が助けてくれているのか、一見難しいような哲学的な内容をハイネの言葉と絵は端的に、優しく、温かく見せてくれているようにも感じます。誕生の喜びと共にやってくる3人は、様々に多くの働きをしてくれますが、ケンカすることもあるし、へこたれることもあります。そんな時は、3人の状態をよくわかっていてくれるお医者様に寄り添って、仲良くなってくれるのをじっと待つのですね。

   人は頭と心と体のバランスが取れている状態が一番幸福なのでしょう。この絵本でその幸福感も味わうことが出来ます。見送る人がいた時は、その人の友人であった、この3人が役目を終えたのだなって思います。悲しいけれど、そう思えると、その方の人生が豊かに全うされたようにさえ感じます。

あなたの今は、誰が一番働いていますか?
アタマはかせはですか?いぶくろおじさんですか?
それとも、やっぱり、ハートおばさんでしょうか・・・

(赤鬼こと山ア祐美子)

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