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認定こども園 聖愛幼稚園

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赤鬼からの手紙(2017年8月号)



『からだのみなさん』

五 味 太 郎

福音館書店

   入道雲は、まるで生きているように空高くもくもくと立ち上がっています。ひまわりは笑顔を絶やさず、丘一面に咲き誇っています。あたりはすっかり真夏一色の景色が輝いて、目にも眩しくなってきました。生き物たちがよりいっそう生き生きとするこの季節は、子どもたちの心も体もぐーんと大きくなりますね。夏休み明けに、びっくりするくらい変わっているお友達がいるかもしれません。私たちの身体は、いつどこでどんな風に変化していくのでしょうか…じっくりと、体たちの声に耳を傾けてみませんか?

(おや?これなんだ?!)
      と とつぜん ゆびがいいます。
(あっ これ このまえもらった アメだ!)
      と あたまが おもいだして いいます。
(ずいぶんよごれている・・・ ほこりなんかもついてるし・・・)
      と めが しらべて いいます。
(それに すこしとけてる。もう ダメだね これ)
      と ゆびさきが たしかめて いいます。
(いや いや ダメじゃない。まだ たべられるぞ これ)
      と くちが あわてて いいます。
(ほうらね いける いける じょううぶん いける!)
      と したが うれしそうに いいます。

ズボンのポケットにあったのはアメだけど、なんだか汚れていそう・・・でも、食べちゃった・・・なんだかおいしいよ・・・考えたのは頭じゃなくて、指や口や舌。それにしても、あついね!・・・体中のいろんなところが、いろいろかんがえて・・・シャツもズボンも、パンツもぬいで、とうとう男の子は、はだかんぼうになっちゃった!

   五味太郎ワールド満載の絵本です。大人たちは、行動する前にちゃんと考えなさいっていうかもしれないけれど…子供たちの頭の中と体は一緒に動いてしまうこともたくさんあります。そんなときは、きっとこんなことが起きているのかもしれません。 「からだのみなさん」というタイトルは、体中の一つ一つの部分が独立して、人格を持っているように思えてきます。体のいろんな部分が勝手に考えて、勝手に言葉にしていく様子を、五味太郎タッチが鮮やかに軽やかに描いています。ページをめくっていくと、まるでTwitterの"つぶやき"ように見えてきませんか?この絵本が出版されたころは、Twitterそのものもなかったのに、この頃は子どもたちの間でも毎日見ない日はありません。五味さんは、あのスティーブ・ジョブズのように先見の目もあるのだなあって思ってしまいます。

   五味さんの描く絵本には、必ず”発見”があります。この"発見"ということが、子どもたちに届けたい一番の真骨頂ではないかと私は思っています。一つのものも多くの見方を持つことで、新しい発見につながり、生活に豊かさが生まれてきます。これは、子どもの世界だけでなく大人の世界にも通じることです。そして、日本だけでなく海外の人々にも伝わります。

   先日、”ベトナムで日本の絵本を翻訳”という新聞記事に目が留まりました。

―「漫画」と「絵本」を同じ言葉で表現するベトナム。
「日本では、絵本は子供の栄養となる特別なもの。ベトナムにも根付かせたい。日本の絵本は世界観や人生観を作品全体で伝える。説教調が多いベトナムの絵本との違いに感動しました。将来はベトナム人絵本作家も育成したい。」―

そう語る写真の女性の手には「からだのみなさん」の絵本が抱えらえていました。彼女の語る言葉の中に、日本の作家たちの描く絵本の本質が届いているのだなと感じて、誇らしいような気持ちになりました。今や、世界中、を駆け巡る五味太郎ワールドはきっと、ベトナムと日本の子どもたちを豊かに結んでくれることでしょう。 

(赤鬼こと山ア祐美子)

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