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認定こども園 聖愛幼稚園

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赤鬼からの手紙(2017年7月号)



『たなばた』

君島久子 再話
初島 滋 画
福音館書店

   今年も梅雨明けの一番乗りは沖縄県、もうすっかり海水浴が似合う海辺になっています。 細長い国の日本は、まだまだ雨模様とにらめっこするところもたくさんありますね。 恵みの雨は生き物たちにとって、とても有難いものですが、多すぎる雨はともすると、災害をもたらすこともあります。 台風などもやってきますから、日頃の心構えも必要な季節ですね。 そんな中でも、雨に洗われて、きれいな空気になった空には、いつにもまして星々が輝くときがあります。 その一瞬に出会うと、思わず願い事をしてしまいたくなってしまいます。 ”流れ星に願いをかける”というのは、よく言われることですが、7月には、最も大事な星の行事があります、今年の「たなばた」はどんな風にお迎えしましょうか・・・

 昔、天の川の東には7人の機織りの天女が、美しい雲を織っていました。中でも、末娘が一番上手でした。西側の人間の世界では、一人の牛飼いが年取った牛と暮らしていました。ある日、牛飼いは牛の言われるままに、天の川に水浴びに来た天女の織姫の着物を隠してしまいました。着物を隠された織姫は、ほかの天女たちの様に鳥になって飛ぶことが出来ず、牛飼いに「どうか 私の妻になってください、そうすれば着物をお返しします」と頼まれると、とうとうそのまま牛飼いの妻になりました。
 やがて、二人の間には男の子と女の子が生まれ、仲良く暮らしていました。ところが、それが天の王母に知られてしまい、怒った王母は織姫を天へ連れ戻してしまいました。牛飼いはたいそう悲しみ、二人の子をかごに入れて担ぐと、天まで追いかけようとしました。ところが、天の川のところまで来ると、天の川は高い空の彼方でまたたいていました。牛飼いが追い付けないように、王母が引き上げてしまったのです。がっかりして戻った親子に、年取った牛は、「わたしが死んだら、皮をはいで着物を作りなさい、それを着れば天まで昇っていけます」そう言い終わると、そのまま倒れて死んでしいました。牛飼いは、言われたとおりに牛の皮を着て、二人の子どもと一緒に空高く登っていきました。またたいた星たちのあいだをぬって、天の川まで来た時、またしても王母は、自分のかんざしを抜いて、天の川に線を引いてしまいました。天の川はごうごうと波の逆巻く川に変わってしまったのです。3人は抱き合って泣きました。もうどうすることもできません。でも、ふたりの子は、ちょうど持ってきた柄杓で、夜も昼も休まずに川の水を汲み続けました。
 さて、そんな様子を見ていた王母は、どう思ったでしょうか・・・

   たなばたの絵本は、紹介するのも大変なくらいにたくさんあります。皆さんもきっと、何かの絵本を目にしていらっしゃることでしょう。その中で、この「たなばた」は、1963年7月1日、「こどものとも」として発刊されました。初山滋さんは、武井武雄さんたちと共に日本童画家協会を設立して、子どもたちによい絵を届ける、という運動の先頭になって活動されました。その画風は、時代にとらわれない自由な発想で描かれ、美しくやわらかな色彩は、ほかに類のない独自の世界を創作されました。「たなばた」でも、その技法は、縦横無尽に発揮されて、星の世界や夫婦、親子の心情にまで映し出されています。

   お話としては、中国文学研究科の君島久子さんによる再話の形で表現されました。京劇などで上演される「天河記」の内容に準じたものとなっています。子どもたちにとっては、少しわかりにくいところもあるのかもしれませんが、昔話としての不思議さや、昔話が故の理不尽さ、その中に流れる人々の気持ちや心情をくみ取るのも、自然な流れのように思います。お話としては、美しい映像が浮かぶ内容です。

   あたりに笹の葉を探すのも、困難な環境になってきましたが、年に1度の星まつりは、短冊に願いを書いて、牽牛と織姫をしのびたいと思います。

(赤鬼こと山ア祐美子)

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