あたりはすっかり春本番になってきました。芽吹いた木々たちが、風に揺れながら触れ合う、爽やかな響きが聞こえてきます。公園や庭では、いろんな種類の花たちがおしゃべりしています。鳥たちのさえずる声も賑やかになったり、さなぎから羽化したモンシロチョウがひらりひらりと目の前を舞うかもしれませんね。春は生き物たちの、誕生で大忙しです。 さあ、散歩に出掛けましょう！ほらほら、ここにも”おかあさーん”と呼ぶ声が聞こえてきましたよ・・・いったい、誰の赤ちゃんかしら・・・

「おかあちゃん、おかあさん、おかあちゃまー、」
いちべえぬまの　かえるのうちに　かわいいあかちゃんが　どっさりうまれました。
なんと――――１０１ぴきも　生まれました。
「おなかが　へったよー、おっぱい　くださいよー」
「まあまあ、きょうは　とても　いいおてんきだから　えんそくにいきましょう。」
おかあさんのかえると　あかちゃんは　みんなで　遠足にでかけました。
♪　チロ　チロ　パッパ　チロ　パッパ　おたまじゃくしは　かえるのこ〜〜
なにしろ、１０１匹のおたまじゃくしですから、遠足も大変です。
おかあさんが、あかちゃんの数を数えると、一匹足りません。 「あら、１０１ちゃんがいないわ！」おかあさんは、残り１００匹のみんなをおいて、１０１ちゃんを探しに行きました。
おかあさんは　１０１ちゃんといっしょに遊んでいたという　めだかやアメンボに、１０１ちゃんがどこにいるかをききました。
そして、暗くて深い、水藻の林の中へ　１０１ちゃんを探しにいきました。ところが　おかあさんは　水カマキリのたがめに　捕まってしまいました。その時です、「おかあさーん、たすけてー。」と声が聞こえました。１０１ちゃんはザリガニのおおおやぶんにつかまってしまっていたのです。おかあさんのおかげで　やっと、逃げ出した１０１ちゃんは　みんなのところへいって　急いでようすを知らせました。それを聞いて　みんなびっくり。
「みんなで、おかあさんを　たすけにいこう。しっかり　かたまって　スクラムだ。それいけ、おかあさんをたすけに　いけ！」
♪　わっしょい　わっしょい　スクラムだ　♪　わっしょい　わっしょい　スクラムだ
「おかあちゃーん、　たすけに　きたよー。」
かえるの　おかあさんは　たがめとザリガニの激しい争いに巻き込まれて、倒れています。
さて、おかあさんは　どうなってしまうのでしょうか・・・

   川の岸辺にたんぽぽを見つけたら、この絵本を必ず思い出します。「からずのパンやさん」と並んで、加古里子さんの絵本の一番人気といってもいい絵本です。春になると、絶対読みたくなります。絵本の中のおたまじゃくしをひとつひとつ指さして確認する子供たち。

   ”１０１ぴきないよーっ”って、叫ぶ子もたくさんいます。子供たちにとっても、見つけたい１０１ちゃんなんですよね。ひとつひとつに、名前を付ける子もいますね、まるで大事な仲間のようです。言葉の使い方など、ちょっと古さを感じることもあるかもしれません、でも、90歳を超えた加古さんに言わせれば、今も昔も子どもたちは何も変わらない、子供たちはちゃんとわかっているのです、って。

   一匹を助けるために、必死で探すお母さんの姿は、まるでマタイ・ルカ福音書の「迷える子羊」の話のようにも思えます。みんなを残してでも、一匹を一生懸命に探して、危険な思いまでするお母さんの気持ちは、その１匹を見つけることが、みんなにとっての大きな喜びになることを教えてくれています。その喜びの中で１０１ちゃんは、自分の存在の大切さがわかってきます。そして、傷ついたおかあさんをみんなの力で助けようと、力を合わせていくことに繋がっていきます。

   ここのところ、おたまじゃくしを見かける機会が、随分少なくなってしまったような気がしてなりません。加古さんは科学絵本もたくさん手掛けておられますが、生き物の生態なども詳しく描かれて、読み物としての面白さはもちろんですが、知識としての学びも多くの学びがあります。この絵本の中にも多くの生き物たちが、生き生きとかえるやおたまじゃくしとの関係をわかりやすくつたえています。今年はぜひ、カエルの卵を見つけて、生き物たちの春を感じたいと思っています。あなたも春を探しに出かけてみませんか？