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赤鬼からの手紙(2017年1月号)



『RAVEN−光をもたらしたカラス』

ジェラルド・マクダーモット:再話・絵
はるみ こうへい : 訳
童話舎

   あけましておめでとうございます。昨年の年明けも、今年こそは穏やかな年になってほしいと願いつつ、災害大国と呼ばれる我が国では、4月に起きた熊本地震をはじめ、台風による大雨の被害もありました。自然災害には人は無力でも、備えの知恵だけは積み重なっていくように思います。2017年は酉年、酉は時を示す言葉ですが、十二支では覚えやすいように「鶏」があてられたとのことです。鶏は鳥でもあります。翼を持ち大空を飛ぶ生き物として、新年を迎えようと思います。「ワタリガラス」という鳥を知っていますか?新年そうそう、真っ黒なカラスの話なんて・・・と思うでしょうか。いやいや、カラスという鳥は、鳥の中でも特別な存在なんです。さて、どんなお話でしょうか・・・

 ワタリガラスが やってきた
せかいは やみにつつまれていた。ひとびとは くらくつめたいやみに くらしていた。
ワタリガラスはこういった。「わたしが 光をさがしてこよう。」
ワタリガラスは はるか かなたにみえた 光へむけて とびつづけた。
光は 天をおさめる頭の 家からでていた。
頭のむすめが、家からあらわれ、みずうみの水をすくってのんだ。
ワタリガラスは まつのはに すがたをかえて、その水ごと、むすめにすわれていった。
やがて、むすめは こどもをうんだ。

この子どもは、だれだとおもうかね?

それは、こどもにうまれかわった ワタリガラスだったのだ。
頭は よろこび、その子どもを まごとよび 土や石をきざんで、おもちゃをつくってやった。
長老たちが 家にあつまったとき 子どもにうまれかったワタリガラスは あそぶふりをしながら、頭がかくしているという 光のありかを、さがしまわった。
へやのすみ、はこがみえた。
子どもは はこをねだった。
むすめは 子どものまえに はこをおき、ふたをあけた。
はこのなかには もえたつような かがやく玉があった。

   その玉は、なんだと おもうかね?
   それは 太陽だった。

玉をてにした子どもは もとのワタリガラスにすがたをかえ、くらいそらに とびさった。
このようにして、ワタリガラスは 太陽を すべてのひとに わけあたえたのだ。

   カラスは、世界中で様々な神話の主人公として登場しています。この話は、北米先住民や、」ネイティブアメリカンに伝わるお話です。エジプトでは、カラスは太陽の鳥とされています。旧約聖書では、ノアの箱舟のところで登場しますね。知恵者としてのカラスという言われ方もします。

   この絵本では、―光をもたらしたカラス―の副題のように、闇から人々を救い、光をもたらす役目を持ちました。今でも、ナバホ族の中でも、ワタリガラスは人々に語り継がれ、身近な存在として大切にされています。トーテムポールの模様としても、よく見かけますよね。作者のジェラルド・マクダ―モットは、神話の再話などの作品が多いですが、以前「太陽へ飛ぶ矢」という作品をご紹介しました。いずれも鮮やかな色彩で描かれた絵が、私たちに強い印象を与え、目に焼き付いてしまいます。忘れられない大好きな作品の一つです。

   今の日本では、ゴミをあさり、まき散らす存在として蔑視されることも多いカラスですが、これはカラスの問題ではなく、あくまで人間の問題です。カラスのせいではありません。世界では、こんな重要な役目を持つと語り継がれたカラスに、2017年、酉年の幕開けの新たに輝く光を、現代の人々にもたらしてほしいと思っています。

(赤鬼こと山ア祐美子)

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