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認定こども園 聖愛幼稚園

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赤鬼からの手紙(2016年11月号)



『おやすみなさいフランシス』

ラッセル・ホーバン :ぶん
ガース・ウイリアムズ:え
まつおかきょうこ  :やく

福音館書店

   ここのところ、めっきりと寒さを感ずるようになってきました。あたりも、美しい表情を見せてくれています。紅葉で彩られた山々は実りの季節でもあります。日本特有の四季の中でも、特に秋を求めてくる海外からの方も多いと聞いています。昼よりも夜の時間が長くなってくるこの時期、日本では「秋の夜長」という言い方をします。北国の方では、もうこたつやストーブを準備しているところもあるかもしれません。暖を取りながら、何をしましょうか・・・本を読みふけって眠れなくなってしまったり、ついついおしゃべりが長くなって、寝そびれてしまったり、そんなことはありませんか?

   ここにも、眠れない子が一人、寝る時間はとっくに過ぎてしまったのに・・・

 7じです。あなぐまの子、フランシスのねるじかんです。
おとうさんからも、おかあさんからも「もう、ねるじかんですよ」といわれました。
「ミルクがほしいわ」と、フランシス。ミルクをのみました。おとうさんはフランシスをおんぶして、へやへ つれていきました。そして、おとうさんも、おかあさんも、フランシスに おやすみなさいのキスをしました。くまちゃんとおにんぎょうも いっしょにつれていきました。フランシスは、もう一度、おやすみなさいのキスをしてもらいました。「おやすみ」と、おとうさんとおかあさんがいいました。「おやすみなさい」とフランシスもいいました。
でも、フランシスは ねむれません。
めをつむっても、ちっとも ねむくなりません。そこで、うたをうたうことにしました。あ・い・う・え・お のうたです。「あ〜はアップルパイ、い〜はいたち、う〜はうみへびよ、・・・と〜はとらだぞ、」とうたったところで、ほんとに とらがへやに いるようなきがしきてしまいました。おとうさん、おかあさんのところへいって、「あたしのへやに とらがいるの」と、フランシスはいいました。
「そのとらは なんにも わるいことはしない。かえって おやすみ」と おとうさん。
「あたし、どうしても ねないといけない?」
フランシスは ベッドにもどりました。また、めをつむりました。
でも、やっぱり ねむれません。
じぶんのガウンが おおおとこにみえたり、てんじょうのひびのわれめから、なにかでてきやしないかとおもったり、カーテンがゆれるのがきになったり、そのたびに フランシスは おとうさん、おかあさんのいるところへ いったりきたりしてしまうのでした。
そのうち、とうとう、おとうさんに おしりをぶたれそうになってしまいそうになって・・・
フランシスはあわてて「おやすみなさい!」といって、じぶんのへやに かえりました。
さて、フランシスは ねむれたのでしょうか。

   私自身が、寝ない子でした。随分、親を悩ませたということは聞いていましたので、この絵本を読むといつも父を思い出してしまいます。父は寝つきの悪い私を寝かせるために、枕元に何冊も絵本を積んでは読んでいたと、それでも寝ない時は、おんぶして外を散歩したと、母が何度も話してくれました。私を寝かしつけてから、やっと仕事をし始めたこともあったのだとか・・・きっと、フランシスのお父さんの様に、我慢強く見守ってくれたのだと思っています。

   フランシスは、寝るための儀式を様々に工夫しているようにも思えてきます。おとうさんもおかあさんも、そのフランシス特有の儀式に、参加して付き合いながら、彼女の気持ちを解かしていきます。持久戦のようなこのやり取りの中で、フランシスを包む両親の温かさがよく伝わってきます。

   ところが、この絵本の読み聞かせする時に、何度も同じセリフが出てくるので、読むのに飽きてしまって、辛かったという方がいました。これには、ちょっとびっくりしてしまいましたが、確かに大人にとっては、何度も同じセリフが出てくるので、読み方に難しさはあるかもしれません。でも実はそこが、子どもたちがいちばん好きなところなんですものね。繰り返される言葉ほど、子どもたちには、魅力的な場面はありません。どうやって、このやり取りを読みこなしていくかというのも、この絵本の醍醐味のように思います。

   モノトーンで描かれた繊細な線画が温かく絵本全体を包んでいるのも、大事な要素の一つです。ガース・ウイリアムズの代表作に「しろいうさぎとくろいうさぎ」があります。あまりにも有名な絵本ですが、その美しい画法が、登場するすべての動物たちを生き生きとさせています。表情に隠された、動物たちの心の奥底までの想いまでもが、色彩を帯びて鮮やかに飛び出てくようです。絵本には、様々な技法があります。色鮮やかな絵本ももちろん楽しくてわくわくするものですが、この絵本は、モノトーンで描かれた絵本の良さを子供たちと共有できる大事な1冊のように、私は思っています。4年に一回の世界の運動会も終わりました。リオデジャネイロのパラリンピックは予想以上の観客が集まったことが話題になっていましたが、それには、会場チケットの価格をオリンピックよりも下げて、安くすることで多くの人が参加できたということもありました。家族そろって、まるでピクニックの様に楽しそうにオリンピック会場に出掛けたり、学校行事として、たくさんの子どもたちが参加したということも印象に残りました。 子どもたちは口々に、選手たちへの応援メッセージをおくるとともに、自分がどれだけ感動したかを熱く語っていました。そして、リオの子どもたちは、選手たちの頑張りと同時に、会場にいた多くのボランティアの方々の声かけの姿や、互いに手を差し伸べる姿を目の当たりにしたことと思います。声をかけること、その一言が人を動かすということ・・・

(赤鬼こと山ア祐美子)

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