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赤鬼からの手紙(2016年9月号)



『ふたりは きょうも』

アーノルド・ローベル:作
三木 卓:訳
文化出版局


   今年はオリンピック・パラリンピックイヤー。リオデジャネイロで印象深いのは,子どもたちのボランティアの活躍です。ブラジル自体の政情不安もあり心配されたのですが、ふたを開けてみると人々の想いの強さが伝わってきます。スポーツの祭典ですから、参加する選手たちの戦う姿や喜び、悲しみ、悔しさに涙する姿は心打つものがたくさんあります。でも、何より大事なのは、成功させようというすべての人たちの力なんだなあと実感しました。

   スポーツ界では、ライバルの存在が重要とよく言われますが、この「かえるくんとがまくんのふたり」はどうなんでしょうか・・・。

「あした するよ」
がまくんのいえは すごいちらかりようです。「ちぇっ。かたつけがたいへんだなあ。」とがまくん。そこへかえるくんが かおをだしました。「そのとおりだよ、すごく ちらかってるよ。」でも、がまくんは あたまから すっぽり ふとんをかぶって 「ぼく あした かたつけるよ。きょうは のんびりするんだ。」かえるくんは がまくんのうちに はいってきました。ズボンとうわぎは ゆかにおちてるし、ながしはよごれたおさらでいっぱいだし、いすは ほこりだらけだし まども みがいてないし・・・
かえるくんが なにをいっても「なにもかも みんな あしたする!」 とがまくん。
でも、がまくんは ベッドに こしかけてしまいました。
「ちぇっ。ぼく あしたのことをおもうと ゆううつなんだ」と がまくん。
かえるくんは がまくんの いうことを ゆっくり きいていました。
「でも、かえるくん。もし いますぐ ぼくがだよ。おさらを あらったら あしたは もう あらわないで いいんだろ?」「そうとも。」
がまくんは おさらを あらって しょっきだなに しまいました。かえるくんと はなしながら いすのほこりをはらって、まどをみがいて・・・がまくんは すっかり へやの かたつけを おわっていました。


「ぼうし」
「おたんじょうび おめでとう。」かえるくんは がまくんの たんじょうびに ぼうしをあげました。かえるくんが よろこんで ぼうしをかぶってみると めまで かぶさってしまいました。「おおきすぎたから、べつのにとりかえる」と かえるくんが いったけれど、「きみがくれたんだもの ぼくは これが すきだよ。このまま かぶるんだ。」という がまくん。ふたりは さんぽに でかけました。がまくんは いわに つまづき きにぶつかり あなに おちてしまいました。かえるくんは いいました。「きみがねるとき なにか とても おおきいことを かんがえるんだ。おおきいかんがえが きみの あたまを おおきくするだろう。」がまくんは ベッドに はいって  おおきな ひまわりや たかい かしのきのこと たかいやまのことを かんがえながら ねてしまいました。
かえるくんは がまくんのいえに そうっと はいってきました。がまくんの ぼうしをみつけた かえるくんは…ぼうしにみずをかけて、あたたかいところにおいて かわかしました。ぼうしは、どんどんちぢんで ちいさくなりました。めをさました がまくんが ぼうしかぶると、ぴったりになっていました。


   がまくん・かえるくんシリーズの4作目に当たるのが、この絵本です。作者のアーノルド・ローベルは病気がちな少年だったそうですが、奥さんになったアニタとの出会いから、こんな素敵は絵本をたくさん作っています。もちろん、アニタ・ローベルも著名な絵本作家になりました。

   「ふたりは ともだち」が出版されたのが1970年、それから10年目の作品がこの「ふたりは きょうも」です。アメリカで、すっかり人気者になっている二人ですが、日本でも子どもたちにとって、いまだに長く読み継がれてきている絵本です。今回は「あした するよ」と「ぼうし」を紹介しましたが、この一冊に短いお話が5作品あります。「たこ」では風の強い日に"タコ タコ アガレ"とふたりで遊んで、お化けの話で「がたがた」とこわがったり、「ひとりきり」では ちょっと寂しい思いになったり、でも、何があっても、いつも仲の良い二人です。

   アーノルド・ローベルの作品の多くを訳されているのが、小説家・詩人の三木 卓さん。人の心に突き刺さるような詩もたくさん書かれているのですが、児童文学の訳者としての言葉はとても柔らかく温かいものが多いように思います。アーノルド・ローベルの絵本の人気は三木さんの訳の言葉が支えてきているともいえます。三木さんの独特な愛情深いリズムのある言い回しが、がまくんとかえるくんの友情をはぐくんでいます。

   オリンピックの会場でも、仲間としての支え合いの場面をたくさん見せてくれました。高め合える友人がそばにいてくれることほど、幸福なことはありません。がまくんとかえるくんの何気ないしぐさや心遣いの中に、私たちが忘れてしまったような、相手を思いやる気持ちが、詰まっているような気がします。

(赤鬼こと山ア祐美子)


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