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赤鬼からの手紙(2016年6月号)



『だるまちゃんとかみなりちゃん』

加古 里子 さく/え
福音館書店 900円(税別)

   雨の季節がやってきました、もう梅雨入りしたところもありますね。自然界では大事な恵みの雨ではありますが、災害に見舞われた地域の人々にとっては長雨や多ずぎる雨は生活への不安にも繋がることもあると聞いています。うっとおしいと思われがちな雨の気分を楽しい気分に変えながら、すべての人にとって素敵な雨音になりますように・・・

 だるまちゃんがそとにでたら、あめがふってきました。かさをさしてでていくと、 そらから、へんなものがおちてきました。 そして__ぴかぴか ごろごろ、がらがら、どしん__と かみなりちゃんがおちてきました。 かみなりちゃんは、へんなまるいものをとってほしいと ないていました。
かみなりちゃんのために、がんばるだるまちゃんですが、たかいきのうえにひっかかった、へんなまるいものには なかなかとどきません。 ふたりともこまって、かなしくなってべそをかいてしまいました。
 そこへ「やあー こんなところにおちていたのか」と、おおきなかみなりどんが くもにのってむかえにきました。かみなりちゃんのはなしをきくと、そのへんなものをとって__おれいにだるまちゃんをくもにのせて__かみなりこうえんのプールにつれていってくれました。へんなまるいものは かみなりちゃんのうきぶくろでした。だるまちゃんはかみなりちゃんとプールであそんだり、かみなりちゃんのおうちにもいきました。
 かみなりちゃんのおうちは、かみなりまち いまずまどおり、ごろごろばんちですって、どんなまちでしょうねえ・・・

   絵本界の大御所、加古里子さんの”だるまちゃんシリーズ”の代表作品です。中でも大人気のこの絵本は、英語版にも訳されて世界中の子どもたちに親しまれています。

   今年3月に加古さんは90歳を迎えられました。今もバリバリの現役の絵本作家です。加古さんの故郷は福井県武生市(現在は越前市)、自然豊かな中で育った加古さんは東京大学の応用化学を学ばれた工学博士でもあります。絵本の中には、そんな加古さんの豊かな感性が溢れています。科学絵本もたくさんあり、代表作の「海」など何度見ても見飽きない緻密で豊かな世界が描かれています。また、日本の伝承遊びの世界もたくさんのすぐれた作品があります。我が子たちも、何度もお世話になりました。

   加古さんが絵本作家になったきっかけは、自分がかつて軍国少年であったことへの後悔から、間違いを犯さないためには広い視野で世界を見ることの大切さを想い、絵本を描き続けていると語っておられます。このことはことあるごとに話題にされ、ご自分の姿勢を問いながら描き続けておられます。だからこそ、子どもたちに遊びの世界の大切さをたくさん伝えてくださっているように思います。実は加古さんは緑内障を患い、左目はほとんど見えず、右目も手のひらの視野しかないのだそうです。それでも、まだまだ子供たちに伝えたいことが山ほどあると、精力的に作品を生み出されています。最近新作も出され、ますますお元気な様子の加古さんです。

   絵本の中にある"かみなりまち"は、どんな街でしょうねえ・・・ほんとに楽しそうで、大人の私でも行ってみたくなります。だから、子どもたちはすぐに、絵本のページの中にとびこんで、いつまでも遊んでいられるような気がしてなりません。加古さんの絵本の一番の良さは、子どもたちの目線がいつもそこにあるということです。いつでもどこにいても、一瞬でだるまちゃんやかみなりちゃんになることが出来る、そこが一番の魅力です。

(赤鬼こと山ア祐美子)


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