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認定こども園 聖愛幼稚園

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赤鬼からの手紙(2016年5月号)



『あめのひのトランペット』

安房 直子  / 作
葉 祥明 / 絵

金の星社


   吹く風も爽やかに、緑も深くなってくる季節になりました。一年中で一番気持ちがいいと感じる人も多いかもしれませんね。そんな季節を辛く過ごさねばならないような大きな天災が起こりました。九州熊本県は未曽有の大地震にみまわれました。自慢の熊本城の石垣が崩れていくのをTV報道で見て胸が痛くなりました。人命が失われ、多くの方々が被災されました。皆さんの周りにもきっと、熊本県にゆかりのある方が居られると思います。今回は、熊本県が故郷である葉祥明さんの緑いっぱいの絵本をご紹介します。

のはらの まんなかにある おおきなにれのきのしたに ちいさなおみせがありました。かんばんには 『ふしぎや』と、かかれています。
みどりのベレーぼうをかぶった くまのまわりには たいこや ギターや すずや タンブリンや カスタネットが、ならんでいます。
「いらっしゃあい。 ふしぎやは がっきやで ございます。」
いくにちも いくにちも あめがふったあるひのこと、
くまのおみせに おとこのこが やってきました。
「あんまり まいにち あめだから たのしいものは ないかなあ。」
くまは にっこり わらって、
「いらっしゃい。 くるのを まっていましたよ。」といいながら、
たかい たなから きんいろの がっきを とりだしました。
「とびきり じょうとうの トランペット!」
おとこのこは うれしそうに わらって、トランペットを うけとると、ポケットから うめのみを みっつ くまに わたしました。
「まいど ありがとう。」 
おとこのこは トランペットをふきながら あめにぬれながら のはらのみちを あるいていきます。
プオー プオー プ・プ・プ・プ・プ
すると、おとに あわせて そらのくもが うごきだしたじゃ ありませんか。
プオー プオー プ・プ・プ・プ・プ

のはらは どうなったでしょう・・・

   葉祥明さんの絵に出会ったのは、「かみさまからのてがみ」というちいさな絵本の挿絵だったように思い出します。小さな天使が表紙にありました。その絵のかわいらしさがとても印象的でした。大学の先輩でもあった彼に親しみも感じ、その後様々な作品に触れてきました。一貫した柔らかな作風は今も変わりなく、年齢層を超えた多くのファンを持っています。たくさんの作品がありますが、今回は”くまのがっきやさん”を選びました。安房直子さんの優しい心持の言葉には、葉さんの絵ではなければ描けないような雰囲気が、絵本全体を包んでいます。今回の地震で熊本阿蘇にある葉祥明さんの絵本美術館も被災されたときいています。トランペットに合わせて空の雲が去り、まばゆいばかりに広がる緑の中を歩く男の子はまるで、阿蘇の草千里を歩く幼いころの葉少年と重なります。

   21年前の阪神淡路大震災、東日本大震災からはまだ5年、そして今回の熊本地震と、日本は大きな悲しみを抱えています。天災は人の力ではどうすることもできませんが、人と人とが心を寄せ合いともに生きぬくことを教えてくれます。くまのがっきやさんのような『ふしぎや』は、きっとまわりにたくさんいるはずです。空の雨も心の雨もあがり、抜けるような緑が戻ってくることを願いつつ、この絵本を皆さんにお届けします。

(赤鬼こと山ア祐美子)

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