1年中で一番寒い日が続くこの季節。
暖冬といわれながら、やっぱり厳しい寒さがやってきました。
今年はめったに雪が降ることがないような南の地域でも雪が降ったとか、記憶に新しいところです。
雪が少なくてスキー場を開くことが出来ないと言っていた場所でも、いつものように賑わいを見せてきました。
この時期にしかできないスポーツや行事も季節を感じる大切なことです。
2月の代表的な行事は「節分」、豆まきをして鬼を追い払うのが習わしですが、豆まきではない鬼退治をする地域があります。
日本の中では一番南にある、沖縄県のお話です。どんな風に鬼退治をするのでしょうか。
昔、ある村に タラ―とカナーのきょうだいがすんでいました。
兄さんのタラ―は乱暴で怠け者で、酒を飲んでは寝てしまうか、ケンカの毎日。妹のカナーは、働き者。兄さんの分まで働き、悪さをしないように兄さんに頼むけれど、ひどくなるばかりでした。タラ―は夜になると、ヤギやニワトリを盗み、たべるようになったので、とうとう村から追い払われてしまいました。
何年かが過ぎ「やまおくに おにがいて、よるになると出てくるそうだ」とうわさがひろまりました。カナーは思いました、「もしかしたら おには にいさんかもしれない」
カナーは、壺に兄の好きな酒をいっぱいつめて、確かめに行くことにしました。生臭いにおいがする洞穴をのぞくと「たーやが!」と雷のような声。やはり、鬼がいたのです。
「にいさん、わたしです。カナーです!」「おれは、もうおまえのにいさんではない。」
酒の壺を渡して鬼の手から逃れたカナー、でも明日ムーチーを持っていかなければ、自分も村人も食われてしまう。ムーチーはタラ―の好物だったのです。カナーは、一晩中知恵を絞って、柔らかいムーチーと石や瓦の砕いたものを入れたムーチーを作り、見分けのつかないようにサンニンの葉で包みました。海の見える崖の上で、カナーは美味しそうに柔らかいムーチーを食べました。それを見ていた鬼はざるいっぱいのムーチーをうばうと口いっぱいにかぶりつきました。「アガー!」あまりの痛さに転げまわっていた鬼をカナーは思い切り押しました。鬼は谷底へ・・・
皆さんはムーチーを知ってますか?
私の大好きな沖縄のお菓子の一つです。ほのかに月桃という葉の香りがする柔らかいおもちです。先日沖縄へ行ったとき、美術館のショップで鬼のお話を聞いてみました。ショップの方のお話だと、沖縄では豆まきはないそうです。沖縄ではムーチーを食べる風習があるとのことでした。そしてこのお話を紹介してくださいました。
旧暦12月8日に、沖縄の年中行事の一つである「ムーチー」があり、月桃やクバの葉に包んだ餅を仏壇に供え健康を祈願します。
子供のいる家庭では、それぞれの子どもの歳の数だけ餅を天井からすだれのようにつるしてまじないとするのだそうです。
今でも、ムーチーの行事は家庭のみならず、保育園、幼稚園でも行われるようです。
このお話は、行事の由来となっている民話です。でも元来は大人向けのお話でもあったので、子どもたちにわかりやすいように工夫されて絵本の形になったそうです。
今では、沖縄の昔からの風習を伝える絵本として、たくさんの子どもたちに親しまれるものになっています。
鬼になってしまった兄を思いつつ、妹だからこそ退治せねばと思ったのかもしれません。
民話というものは諸説あるのが通常です、このお話にも沖縄の中だけでも地域によって異なっているとも伺いました。絵本の中には、人と鬼とのかかわりを表現したものはたくさんあります。鬼とじっくり向き合い、人の生き方を思う2月です。
この絵本の中にはムーチーの作り方も載っています、ぜひ味わってみてください。
(赤鬼こと山ア祐美子)
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