学校法人 聖愛幼稚園
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赤鬼からの手紙(2015年3月号)



『 ハナミズキのみち 』


文 / 浅沼ミキ子
絵 / 黒井 健
金の星社
1,300(税別)


   あの日から4年がたちました。2011・3・11 14:46 日本中を震撼させた災害です。 メディアでは改めて、まだまだ癒えぬ人々の報告が伝えられています。 地震大国といわれる日本、いつどこで起こるかわからない地震に私たちは、どう備えていったらいいのか、普段から考えていかねばならないように思います。 失われた多くの命が教えてくれたこと、伝えてくれたことを心にとめていくことで、大切なものを守る方法を学ぶことができます。 その日、息子を亡くされた母が2年間を費やして作った、息子の想いを伝える絵本です。

どこまでも続く ハナミズキの花  いのちをまもる ハナミズキのみち・・・・

山の上から見下ろすと、松原越しに海が見える町、それがみんなの大好きな町
友達や家族、みんなで遊んだ浜辺
七夕祭りの花火や大きな山車、お父さんの肩車、お父さんと眺めた夕暮れの海
あのとき・・・・
いったい何が起こったんだろう ぼくは・・・どこにいるんだろう
おかあさんがぼくをさがしている おかあさんが泣いている
もう泣かないで おかあさん ぼくはここから見ているから おかあさん おねがい
ぼくが大好きだった ハナミズキの木を植えてね
町の人たちが二度と津波で悲しまないように 安全なところへ逃げる目印に
薄桃色にけむる春の景色 どこまでも続く ハナミズキのみちを
ぼくも おかあさんといっしょに歩いているよ どこまでも・・・


   あのとき、東日本大震災が岩手県陸前高田市を襲いました。 母は地震直後に避難する長男を見かけました。 地元消防団員の息子さんは、”無事で何より”と敬礼をして見せて、職務追行のために避難所に向かいました。 その十日後、長男に再会したのは遺体安置所だったという淺沼ミキ子さん。 息子さんの避難所は津波に飲み込まれてしまったのです。 悲しくて悲しくて、会いたくて会いたくて、泣いてばかりの日々。 ある日息子さんの声がはっきり聞こえてきました。 「いのちを守る木を植えたい」その声に導かれるように、2年の月日をかけて母が言葉を紡ぎ完成した絵本です。

   絵を手掛けたのは、『ごんぎつね』などの作品で著名なイラストレーターの黒井健さん。 黒井さんはとても悩まれたと語っています。 震災の場面を描くべきか、どう描いたらいいか、果たして描けるのかと・・・。 陸前高田に足を運ばれ、被災された方々の悲しみに向き合い、心を寄せて、丁寧に描かれました。 黒井さんの筆によって、息子さんの大好きだったハナミズキが薄桃色に色づいて、絵本の中で息子さんが笑っているように見えました。

   2月11日付の読売新聞朝刊に「高台へハナミズキの道」と大きく掲載されていました。 陸前高田市は建設中の避難路にハナミズキを植樹することを決めたそうです。 淺沼さんの想い、息子さんの声が形になりました。 後世に伝えていくことへの大きな使命を感じます。 ハナミズキには「私の想いを受けてください」という花言葉があるそうです。

   ”命を守り、命をつなぐ”未来を生きる子どもたちに伝えていかねばならないことだと思います。

(赤鬼こと山ア祐美子)


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