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赤鬼からの手紙(2014年8月号)



『 ぼくがのぞいたうみのなか 』

さく・ながはら たつや


こぐま社
(品切れ)

   入道雲が巨人のようにもくもくと高くなってきました。ひまわりは、その雲を突き抜けるように伸びています。いよいよ夏本番です!待ちに待った夏休みも真っ只中、家族で旅行に行く人もいますね。山に行こうか、海に行こうか、きっとずいぶん前から計画を立ててきたことでしょう。考えているだけでもわくわくしますね。そして、普段できないことに挑戦するのも、長い休みの大きな楽しみの一つです。あれっ、なんだか男の子が泣いています、いったいどうしたんでしょう、海水浴の準備をしていたらしいのですが・・・

 けんいちは さっきから なきつづけています。
 かいすいよくにいくはずだったのに、おとうさんのきゅうなしごとで とりやめになってしまったからです。そこへ、ちょうどたずねてきたのは、おとうさんのおとうとのたつおじさん。
 「よし、うみへつれていってやろう。かいすいよくはきらいだけれど うみはだいすきだ」と、おじさんは けんいちにわらっていいました。
 さっそく、けんいちがじゅんびしたはずのリュックのなかみをてんけんしました。たつおじさんはぐんてがいるなあ、と。けんいちは、なんでうみにいくのにそんなものがいるんだろうとおもいました。おじさんはうきぶくろ、あしひれもじゅんびしました。
 ふたりはみんしゅくでとまって、つぎのあさ うみへでかけました。すると、かいすいよくじょうもすたすたとおりすぎて、ついたところは いわだらけのいそでした。おじさんは あしひれやすいちゅうマスクのつけかたをおしえてくれました。けんいちはさっそくまねをしてやってみました、ぐんてもつけました。ぐんては、いわについているかいなどで、てをきらないためだったのです。スノーケルやあしひれになれるようにしながら、するりとおよぐおじさんのあとについて けんいちもおよぎはじめました。
 そこはもう、いつかテレビでみたのとおんなじせかいがひろがっていました。ヤドカリやイソギンチャクやさかなや、いろいろないきものが めにはいってきたのです。かいすいよくじょうではみたことのないけしきに けんいちはすっかりみとれてしまいました。

   1984年6月の絵本です。今回、こぐま社の編集の方とお話しました。作者の永原達也さんは、海が大好きな方でその世界をどうしても子供たちに伝えたいとの思いで作られたそうです。大好きなだけに、その豊富な経験から磯遊びの方法がとても詳細に専門的に描かれています。海に行くというと、海水浴と思ってしまいがちですが、磯遊びの面白さはまた格別です。ただ、楽しむためには、相当な準備と知識が必要であることが、この絵本でもよくわかります。海好きのお父さんにとっても、大事な一冊になることと思います。

   私も海のそばで暮らしていたことがありましたので、わが子と何度となく磯に出かけたことがありました。軍手もですが、靴下も履いていました。そして、南の海では日焼けしすぎないように、必ず上着を付けて海に入りました。最初は海なのにどうしてシャツなんか着たまま海に入っているのかと、不思議でわからなかったのですが、これも知らないでいると全身火ぶくれて大変なことになってしまいます。海も山も、あるがままの自然を楽しむには、たくさんの準備をすることと、自然への感謝の想いも大切ですね。こんな素敵な絵本ですが、こぐま社の話では現在品切れ中で、再版の予定もないとのことでした。とても残念ですが、ぜひ図書館等で手にしてほしい絵本です。

(赤鬼こと山ア祐美子)

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