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赤鬼からの手紙(2014年7月号)



『 おこだでませんように 』

くすのきしげのり/著
石井聖岳/イラスト
小学館
1,620円

   1年の半分が過ぎて、あと残りの半分。 太陽が空の一番高いところまで昇って、だんだん暑さが増してきます。 みんなの遊ぶ時間も長くなって、帰りの時間を忘れてしまうかもしれませんね。 遊んでいるうちに、ふと気が付くと一番星がまたたきはじめて、太陽や雲、月までもが一度にみられるような瞬間があります。 夏の空はとてもにぎやかです。星といえば、今月は年に一度の願い事をする七夕がありますね。 今年の短冊には、どんなことを書きましょうか・・・ほら、色とりどりの短冊がありますよ。 どんなことがかかれているでしょうか、ちょっとのぞいてみましょう。

ぼくは いつも おこられる。いえでも がっこうでも・・・・・。

おかあちゃんが、しごとでかえりがおそいから、いもうとと あそんでやったのに、
ぼくは、おこられる。(いもうとのくせに わがままばっかり いうからや)
「まだ しゅくだい してないの!」とおかあちゃんが・・・
(いもうとと あそんでやってたからや)
けれど、ぼくが そういうと、おかあちゃんは もっと おこるに きまってる。

よこを むいて、なにも いわずに おこられる。
あーあ、ぼくは いつも おこられてばっかりや。

がっこうでも・・・
マーくんとターくんが ぼくをなかまはずれにしたから パンチして、キックした。
ふたりがなきだした。
せんせいに「また、やったの!」「ぼうりょくは いけません!!」って 
ぼくだけが おこられた。
(でも、『なかまに いれてやらへん』といわれたのは、
 ぼくの こころが もらった パンチやで)
けれど、ぼくが なにか いうと せんせいは もっと おこるに きまってる。

よこを むいて、 なにも いわずに おこられる。
あーあ、ぼくは いつも おこられてばっかりや。

ほんまは ぼく、「ええこやねえ」って いわれたいんや。
ぼくは どないしたら ・・・・・
ぼくは・・・・・「わるいこ」なんやろか・・・・・。

7がつ7か たはばたさまの おねがいを たんざくに かいた。
マーくんとターくんは「サッカーせんしゅに なれますように」

ぼくは ぼくは・・・・「おこだでませんように」・・・
いったいなんだろう、なにかのおまじないの言葉かしら・・・


   とても気になっていた一冊でした。 何度も声に出すうちに、ふと少年の声が聞こえたような気がしました。 実際に絵本を手にして、ますますこの題名の意味の深さを知り、胸がしめつけられました。

   絵本のぼくは、決して言い訳をしません。 このことがぼくを支えているにちがいないと感じました。 彼は自分のことをよくわかっています。 それに、お母さんや妹、先生や友達、自分を取り囲む周りのことをよく見ています。 そういうなかでも、おこられてしまうようなことになってしまう、どうしてなんだろう、ぼくの理不尽さがあります。 ほんとはいいこになりたい、そうすれば、お母さんが笑顔になって、先生にも褒められるはず・・・ ぼくはわかっているのです、でも、どうしてもうまくいかない・・・ それが、天へ届けと七夕の祈りになりました。 それが、ぼくの心の叫び。

   作者のくすのきしげのりさんは、「おこだでませんように」と書かれた小さな短冊を目にして、 涙が出そうになったと語っておられます。 そして、あとがきの最後に ”子どもたちひとりひとりに、その時々でゆれうごく心があります。どうか、こどもたちの心の中にある祈りのような思いに気付くことができますように” と結ばれていました。

   私自身が子育ての中で、大事にしてきたことは、”気づきと待つこと”でした。 とはいえ、なかなか実践できないのも事実です。 子どもの中にある理不尽さに親が気づけたら、子どもたちはどんなにか解放されるでしょう。 子育て中のママさんにとっても、子どもを怒ってしまう場面は毎日のことと思います。 怒るまえに、一度大きく深く深呼吸してみませんか、そして、まっすぐに子どもの目を見て、ぎゅっと抱きしめたら、 今度は、自分のための今年の祈りを、短冊に書いてみましょう。 

(赤鬼こと山ア祐美子)

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