学校法人 聖愛幼稚園
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赤鬼からの手紙(2014年5月号)



『 いつまでも 』

さく・アンナ・ビンヤタロ
やく・たわらまち


主婦の友社
1,404円

   ”風薫る五月”― 今では当たり前のように、この季節を代表する言葉ですが、語源は漢語の「薫風」を訓読みにし和語にしたものだそうです。 和歌にも詠まれたころは、花の香りを運んでくる春の風を表すことが多かったのですが、俳諧になると、青葉若葉を吹き渡る初夏の風の意味になって、季語としても定着しました。 それが現在に至っています。この言葉に誘われ、散歩にでも出かけたくなりませんか? 風に吹かれながら、木々の濃い緑や鮮やかに咲き誇る花々たちを眺めていると、誰でも歌人や詩人になれそうな五月です。 そんな今月は日本の女流歌人”俵万智”さんが、翻訳された絵本をご紹介しましょう。

こぐまのオリが、ききました。
「おかあさんは、いつまで ぼくのおかあさんなの?」
「いつまでもよ」と、おかあさんは いいました。

オリは おかあさんにいろんなことをきいてみます。
「おかあさんは、いつまで ぼくのこと すき?」
おかあさんは、また「いつまでもよ」と にっこりわらってこたえます。
「いつまでもって、どんなかんじ?」
おかあさんは、〜いつまでも〜のかんじを、たくさんのことばで
オリにはなしてくれます。それは・・・

おおきなきが のびていくかんじで・・・。
ほしの そらが つづくかんじ。
きりみたいに つかまえられなくて・・・。
カタツムリ みたいに のんびりしている。
はるみたいに うきうきして・・・。
なつの あめみたいに きもちいい。
それは、おつきさまよりも とおくて・・・。
あおいうみ よりも ふかい。
・・・おかあさんのことばは まだまだつづきます。

オリは ききました。「『いつまでも』って、おかあさんのこと?」・・・
ALWAYS・・・

   5月の行事には「母の日」があります。 17世紀の英国やアイルランドで、キリスト教歴レント期間の第4日曜日に”マザリングサンデイ”として祝われたのが起源ともいわれています。 その後世界中で様々な形での母への想いが表現されてきました。 日本では、アメリカからの流れで、毎年のように第2日曜がその日となっています。 そんなことを思いながら、たくさんの絵本をめくりました。

   「おかあさんは、いつまで ぼくのおかあさんなの?」
こぐまのオリの問いかけは、母熊にとって、どんなに胸を締め付けられるような気持だったことでしょう。 この”いつまでも”をどうしたら、わが子に伝えらえるだろう、こぐまのオリに向けた、たくさんの”いつまでも”の表現に母の深い思いが溢れています。 私だったら、どんな言葉になるのかと、ひとつひとつをかみしめながら読みました。 絵の中にある暖かさも柔らかさも母熊の思いも、そのすべてが心に染み入るのは、オーストラリア絵本作家のアンナさんの手法ももちろんですが、加えて俵さんの翻訳の技だろうと改めて感じました。 ぜひ原書にも触れてみたいですね。 何度も読んでいるうちに、きっとあなただけの”いつまでも”が見つかるかもしれませんね。 私は、今は亡き母に”いつまでも”と声掛けしたくなりました。

(赤鬼こと山ア祐美子)

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