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赤鬼からの手紙(2014年1月号)



『スーホの白い馬』
モンゴル民話

大塚 勇三 /再話
赤羽 末吉 / 画
福音館 / 発行

1,365円

   あけましておめでとうございます。 昨年は台風、大雨、竜巻、大雪、そして最高気温の記録更新等、気候的にも異常な日々がありました。 人の手の及ぶことではない中でも沢山の知恵や工夫によって、困難を乗り越えてきた人々の努力が伝えられました。 今年は、どうか穏やかであってほしいと願います。 午年は十二支の中でも、子年から数えてちょうど真ん中にあたります。 真昼の事を正午というのはここからきているそうです。馬というと、果てしない草原を走り抜ける風景が浮かびます。 何処までもどこまでも、駆け抜けていくような、勢いのある1年であってほしいと思います。

 昔、モンゴルの草原に、スーホという、まずしい羊飼いの少年がいました。スーホは、としをとったおばあさんと、ふたりっきりでくらしていました。スーホはおとなに負けないくらい、よくはたらきました。スーホはとても歌がうまく、その美しい歌声は、草原を超えて、遠くまで響いていくのでした。ある日、スーホは生まれたばかりの、小さな白い馬を見つけました。日がたち、スーホが心をこめて世話をしたおかげで、子馬は、りっぱにそだちました。スーホはこの馬がかわいくてたまりませんでした。
 ある年の春、殿様が、町で競馬の大会を開き、1等になったものには、殿様の娘と結婚させるという知らせが伝わってきました。スーホは、なかまにすすめられて、白馬と大会にでることにしました。国中から若者たちがあつまり、大会が始まりました。馬たちは飛ぶように駆け抜けていきます、でも、先頭は白馬です。スーホは見事一等になりました。ところが、スーホがまずしい羊飼いだとわかると、娘との結婚どころか、けらいたちになぐられ、けられ、白馬を取り上げられてしまいました。友だちに助けられて帰った、スーホはからだじゅう傷だらけでした。おばあさんの看病のおかげで、からだの傷はなおりましたが、白馬を取られたかなしみはどうしてもきえません。白馬はどうしているだろう、スーホはそればかりをかんがえていました。
 すばらしい馬を手に入れた殿様は、みんなに見せびらかしたくてしかたがありません。殿様が馬にまたがりました、そのとたん、白馬はおそろしいいきおいではねあがり、殿様は地面に転げ落ちてしまいました。怒った殿様は、駆け抜けていく白馬をゆみでころしてしまえと、けらいにいいました。白馬のせに、つぎつぎにやがささりました。それでも白馬は走り続けました、そして、スーホのもとへ・・・・

   午年にちなんで、馬の絵本を選びました。沢山の絵本がありますが、馬と言うと、やはり真っ先に「スーホの白い馬」が浮かびました。1967年初版の作品です。日本を代表する絵本作家”赤羽末吉”さんの傑作です。赤羽さんは独学で絵を学び、50歳になって、自ら絵本の世に界飛び込んで行ったそうです。赤羽さんは22歳で、旧満州に移住されています。この絵本の中に流れるモンゴルの壮大な景色の描写は、きっと、赤羽さんがその目で見てきた経験の中から生まれたものにちがいありません。横開きのページは、かつての赤羽さんの職業であった舞台芸術の経験も生かされているような気がします。モンゴルの草原を吹きわたる風の音や、まきあがる砂埃、干し草の匂い、馬たちの駆け抜ける蹄の音など、動画を見ているような躍動感があります。お話は、中国の民族楽器”馬頭琴”の由来からなるモンゴル民話をもとにしています。少年の勤勉さや、おばあさんと暮らすという境遇の厳しさの中で育まれた馬との友情、理不尽な殿様の傲慢、そして悲しい別れ。そのすべてが"馬頭琴"の音色になっています。物悲しい遥かな音が聞こえてきそうです。

   絵本をもとに作曲された音楽もあります。「風の伝説U」横笛演奏家の赤尾三千子さんの作品です。笛と打楽器の織りなす世界が、言葉とはまた違ったモンゴルの風を送ってくれます。赤尾さんは平和への祈るひと時を創りたいとの願いで仕上げられたそうです。絵本と合わせて、楽しんでいただけたらと思います。

   2014年、世界中が平和でありますように・・・

(赤鬼こと山ア祐美子)

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