学校法人 聖愛幼稚園
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赤鬼からの手紙(2013年12月号)



子うさぎましろのお話


ささき たづ / ぶん
みよし せきや / え
ポプラ社 / 刊
1,050円


   寒さが急にやってきました。秋の気配に気づく間もなく冬将軍が忍び込んでいます。 あたりのスキー場では、雪の到来が例年より早いということで、急ピッチで整備をしていると聞きました。 今年のクリスマスは雪になるでしょうか・・・寒さは厳しいけれど、ホワイトクリスマスも待ち遠しいような気持がします。 もちろんサンタクロースの住む北の街は、毎年真っ白でしょうね・・・今頃、子供たちへのプレゼントの準備を始めていることでしょう。 そんなサンタさんを心待ちにしている白うさぎのお話です。

クリスマスの日がやってきました。どうぶつの子どもたちもおくりものをもらいました。 子うさぎの”ましろ”もまっさきにサンタのおじいさんから、銀いろのたまや、 ばらのはなのかたちをしたクリームでかざったおかし、きれいなへやかざりをもらいました。 おかしをすっかりたべてしまった”ましろ”はおくりものをもっとほしくなりました。
「そうだ、べつのうさぎになればいい、『まだ、おくりものをもらわない』って いえば いいんだ。」
そこで、からだじゅうにすみをつけて、おじいさんにあいにいきました。 おじいさんは、”ましろ”だということがすぐにわかりましたが、
「もう、わしのふくろのなかは、からっぽだし。」
とふくろをうらがえすと、おじいさんのひざのうえに、ぽろりとなにかおちました。
「こんなたねが、ひとつしか のこってないのじゃ。」
うさぎの子はしかたなく
「たねでもいいや」
と、たねをふくろにいれて、おじいさんが食べるためのサンドイッチももらって食べました。 おじいさんをだますことができたと思った”ましろ”は、もとにもどろうとしましたが、 なかなかすみがとれません・・・おじいさんにうそをついたから、 ほんとにべつのうさぎになってしまったのかもしれないと、なみだがぽろぽろでてきました。 かえしにいこうかとおもいましたが、サンドイッチはもう、おなかのなかにはいっちゃったし、 おじいさんは、べつのうさぎだとおもいこんでいるだろうし・・・ふと、よいことをおもいつきました。
「このたねは、ぼくのじゃないんだから、かみさまにおかえししておこう。土の中にうずめて」
”ましろ”が かみさまにおかえししたたねは、春になって めをだしました。 それは もみのきでした。さて、もみのきは、どうなったでしょうか・・・

   1970年初版の絵本です。ご存知の方も沢山おられるでしょう。 クリスマスの絵本として、50年近く読み継がれてきた日本の代表的な作品です。 子どもなら誰しも思うかもしれない自然な感情を丁寧に描いています。 作者の佐々木たづさんは、1998年に亡くなられましたが、高校生の時に失明しその後童話作家の道を歩まれました。 英国に渡り、盲導犬ロバ―タと共に帰国なさいました。 いつも共にいた、その盲導犬ロバ―タを描いたお話もあります。

   あるお母さんが、この絵本を読んで、「うそにきづいて、なぜもっとはやく謝らなかったんでしょうか、なんだか釈然としない絵本です」と感想を語られたことがありました。 皆さんはどう思われるでしょうか。絵本の読み方はさまざまであっていいとは思います。 ただ、作者の真意にどうやって近づくかは大切な事だと思います。 確かに嘘をつくことはよくない事です。謝るということも大切な教えでしょう。 でも佐々木さんが”ましろ”を通して、伝えたかったのは、どんなことでしょうか・・・

   それは、許す気持ち、迎える気持ち、過ちに自ら気付かせること、 過ちを悔いる気持ち、過ちに立ち向かい自らを戒め正していく気持ち、 そして神様に近づこうとする気持ち、そんな沢山の想いが詰まっているような気がします。

   シンプルに描かれた線画の白い世界、こんなに温かい雪はない・・・と私は思います。 皆さんにとって、今年も良きクリスマスの日が迎えられますように。

(赤鬼こと山ア祐美子)


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