今年の暑さはなんということでしょう!梅雨明けしたとたんに、連日の猛暑、いつもなら、埼玉県熊谷市、群馬県館林市と最高気温を競う地域の名が最初に挙がるのですが、今年は山梨県甲州市が39・3度を記録と、TV画面を賑わせ驚いてしまいました。葡萄畑の葡萄の房までも茶色く日焼けして、対応に苦慮していると農家の方が話されていました。熱中症患者も毎日のように増加しています。盆地育ちは暑さには強いと自負はしていても、油断は禁物です。暑すぎる気候は危険も伴います。それは動物たちも同じです、毎日が熱帯夜の様なアフリカの動物たちはどんな暮らしをしているのでしょうか。とはいえ動物たちの危険は暑さだけではなさそうです。
はげしかった雨のきせつがすぎると、くさはらの とりや、けものたちは いっせいに げんきをとりもどしはじめました。くさや木のめが ぐんぐんのび、赤やきいろの花がさき、みがなります。どうぶつたちのごちそうは そこらじゅうにあふれ、おひさまがしずむまで みんな たのしくて たまらないのです。
エルフは わかくて つよくて すばらしく 大きな だちょうです。ひといきで 千メートルも はしったこともあるので みんながエルフとよぶようになったのだそうです。エルフとは、アフリカのことばで、千のことなのです。エルフは子どもがすきでした。子どもたちを せなかにのせて、のはらをドライブしたり、くびをのばして、木のみをとっておべんとうにしてくばってくれたり、だから、エルフはみんなの にんきものでした。エルフがいるから、おかあさんたちもあんしんでした。
あるひ、ジャッカルがおそってきましたが、エルフはとくいのライオンのなきまねをして、おっぱらいました。また、へんなものおとが・・・またジャッカルかとおもったら、
こんどほんもののライオンがおそってきました。「みんな はやく にげるんだ、ライオンは ぼくが ひきうけるっ。」エルフはライオンのまえにたちはだかり、ついにライオンをけちらしました。「わーい、かった かった ぼくらのエルフ」みんなはおどりあがって よろこびましたが、エルフの足は いっぽん食いちぎられていたのです。かたあしでは こどもたちとはあそべません。みんなのおてつだいもできない、じぶんのえさをとることもできない。エルフは みんなから わすれられていきました。一日中 ひとところにたったまま、めをとじたままのエルフ いったいどうなってしまうのでしょうか・・・・・
作者の小野木学さんは、アフリカの草原に立つバオバブの大樹から『エルフ』を思ったそうです。その写真を見ているうちにダチョウが動き出し、そのまわりを様々な動物たちが動く姿が映像となって頭に中に浮かんできたと語っています。整理された躍動感のある物語もさることながら、版画の素晴らしさが目を見張ります。モノトーンに近い彩色にもかかわらず堂々としたエルフの風貌や動物たちの息遣い、太陽の熱気、吹きわたる風までもが伝わってきます。
エルフは、アフリカの草原でいつまでもみんなと平和に暮したかった、特に子どもたちの楽しい声を聴きながら生きている自分が好きでした。だから、みんなを守りたかったのです。たとえ かたあしになろうとも、皆から忘れ去られようとも エルフはみんなを守る事を選びました。それは、エルフの暮らしにみんながどれだけ関わっていたかということになります。かたあしになってしまったエルフに、最初はみんながえさを届けます、でもそれも長くは続きません。みなさんは、なんて薄情な、と思ったでしょうか・・でも仕方がありません。みんな自分の生活も守らなければならないからです。エルフはそんなみんなのことも全部わかっていました。そして最後の力を振り絞り、黒ひょうに立ち向かい子どもたちを守り続けました。
アフリカの大地で木になったエルフ、ダチョウとしての命は失ってもみんなを守り続ける木となって生まれ変わる・・・私はそこに、東日本大震災で津波に流され一本だけ残った、松の木を思いました。この松の木の映像を見たときにとっさにエルフみたいだと思いました。エルフが涙の池をたたえた木になって、灼熱のアフリカに風を送るように、松の木はみんなの新たない”希望の木”となって、いつまでも東北の地に新しい未来の風を送り続けることと思います。
(赤鬼こと山ア祐美子)
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