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赤鬼からの手紙(2013年7月号)



『やどかりのおひっこし』

エリック・カール /作
もり ひさし /訳
偕成社 / 発行

1,470円

   今年のひまわりはどんなかしら・・・太陽いっぱいのこの季節になるといつも思い描きます。陽射しを受けてニコニコ笑うひまわりを見ていると元気になってきます。夏の太陽は花々をより色鮮やかに、山々の緑をより色濃くさせます。そして海の中にもちゃんと届いて、波間をキラキラと輝かせます。だって、お日様がない日の海は真っ黒になってしまうでしょう?海底でも光を受けた生き物たちが生き生きと生活しています。あら、とても賑やかな貝がこちらに向かってきます。背中に、なにやらいっぱいしょっていますよ。よく見ると、どうやらヤドカリさんのようです、何をしているのでしょうか・・・そっと、海の中を覗いてみましょう。

1月のある日、「そろそろ おひっこししなくちゃ。」とやどかりはいいました。 このかいがらは とてもいごこちはよかったけれど、きゅうくつになってしまったのです。 やどかりは いえから はいだして 海のそこに たちました。 海のそこは こわくてたまりません。 「もし、大きな さかなが おそってきたら どうしよう。 はやく あたらしい いえを みつけなくちゃ」

2月のはじめころ、やどかりは じょうぶそうな かいがらを みつけました。なかに はいって からだをくねらせたり ゆすったりしながら、ようすをみると からだにぴったり。「ぼくのいえに しよう!だけど ちょっと じみで さびしいな」
3月、やどかりは いそぎんちゃくに であいまいた。「きれいだねえ きみたち。だれか ぼくの いえのうえに すんでくれないか。やどかりは はさみで いそぎんちゃくを そっと つまんで、いえにのせました。
4月、5月、6月、7月・・・ひとで、さんご、まきがい、うに・・ みんな やどかりのともだちになりました。8月、9月、10月、やどかりは みんなといっしょに、海のなかで たすけあいながら たのしくくらしました。11月、やどかりの いえは きゅうくつになってきました。1ねんのあいだに やどかりは またおおきくなったのです。さあ、べつの いえをみつけなくては なりません。 うまくみつかるでしょうか・・・・

   「はらぺこあおむし」でお馴染のエリック・カールさんの絵本です。これほどに、人気のある絵本作家はいないというほど、子供たちの目をくぎ付けにする絵本の数々。何といっても、その独特な手法に秘密があります。あの鮮やかな色彩はどうやって生まれるのでしょうか。以前から原画を見てみたいと思っていたら、ここのところ、カールさんの展覧会があちこちで開催され、原画を目にする機会に恵まれました。コラージュ(貼り絵)によるものであることは分かっていましたが、使われている色紙に驚いてしまいました。"ティッシュペイパー"と言われていましたから、てっきり私たちが日常使うあの柔らかなものを想像していましたが、全く違いました。いわばパラフィン紙のような、トレーシングペーパーの様な、洋服などを箱詰めにした時に包むような、あの薄紙です。会場内に流されたカールさんの作業場の映像では、様々に色づけされた薄紙が引き出し一段ごとに、色分けされて詰まっていました。それを一枚一枚取り出しては思う形に切りだして、丁寧に張り付ける、柔らかなお髭の笑顔をしたカールさんの指先に見入ってしまいました。展覧会では、その紙を使って子どもたちにコラージュ体験をさせるプログラムを設けていました。用意されていた色とりどりの紙だけでもカールさんの世界が伝わってきて、ワクワクしながら作業する子供たちの熱心な表情が印象的でした。

   その手法もさることながら、絵本に表現されるカールさんの想いは、生き物賛歌です。動物も植物も彼の手にかかると、美しい命に生まれかわり、共に生きていく術を語ってくれます。このヤドカリのお引っ越しも、実は命がけです。不安でいっぱいの中、みんなの協力を得て思い通りの素敵な住まいを創っていきます。共に生きていくって、楽しいなって思わせてくれます。

   この夏、海に潜る事があったら、きれいに着飾ったヤドカリさんと出会えるといいですね。そして、親子でティッシュペーパーコラージュにも挑戦してみませんか?

(赤鬼こと山ア祐美子)

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