学校法人 聖愛幼稚園
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赤鬼からの手紙(2013年5月号)



『じめんのうえとじめんのした』

アーマE・ウエバー / ぶん・え
藤枝 零子 /  やく

福音館書店 / 刊

1,050円

   風薫る五月・・何と爽やかな響きでしょう!これほど情景と言葉がぴったりくる表現はないかも知れません。そういえば、短歌や俳句にもしばしば登場するような気がします。光をいっぱいに浴びた新緑の中を吹きわたる風が見えてくるようです。私たちの目には、そんな風の動きや輝く緑の葉や色鮮やかな花々ばかりが写りますが、その葉や花弁を支えている茎をたどっていくと、その先は土の中です。普段は目には見えないけれど、土の中はいったいどんな風になっているのでしょう、ちょっとのぞいてみましょうか・・・・

 じめんの うえには、いろいろな しゅるいの どうぶつが すんでいます。
 じめんの したに すむ どうぶつも います。
 あなをほって うえと したのりょうほうに くらす どうぶつも います。
 けれども しょくぶつは じめんのうえと したの りょうほうに のびていきます。
 ぽぷらみたいに うえのほうがせいたかのっぽで したのほうが
 よこにのびるものや
 ならみたいに うえのほうがよこにひろがって したのほうが 
 ながくのびるものもあります。
 にんじん とうもろこし たまねぎ じゃがいも ・・・
 かたちは ちがっても しょくぶつの うえにでているところは
 くうきが したのねのところは つちが とりまいています。
 にっこうに あたったしょくぶつは くうきとつちから えいようぶつを つくります。
 どうぶつには それは できません。
 どんなどうぶつも しょくぶつの おかげで いきているのです。                                                 

   「かがくのえほん」として出版されたのは、1968年でした。45年間の長きにわたって親しまれています。私たちの身近なところにある、植物、動物、土、太陽、空気、水など、自然界の循環を分かりやすく伝えてくれます。巻末の書評にもあるように「全体の構成と、むだのない、やさしい明快な文章、単純明瞭な楽しいさし絵」がより子供たちを深い理解へ誘う入口になっています。地面の上と下の様子を様々な形であらわしながら、太陽や空気の関係に至るまで関係が明らかにされていきます。植物は空気や土から栄養分を得る事ができるけれど、動物にはできないということ、それはその場に立つことで上下に伸びていく力がある植物の特有な能力です。絵本の最後は、「どうぶつは しょくぶつの おかげで いきているのです。」と結ばれています。ちょっとドキッとしました。植物があってこその動物の命、ひいては私たちの命であるという事に気づかされると、改めて植物ってすごいんだと思いました。

   「食育」という言葉が注目されて久しくなりました。子どもたちの好き嫌いやアレルギー問題など食に関する事はより複雑なものになってきています。野菜嫌いの子供たちが、種まきから水やりを経て収穫する喜びを知ると、嫌いな野菜が食べられるようになるといいます。自分たちの体を創ってくれる食べ物は、植物や、その植物を食べている動物なのです。絵本を通して、この自然界の循環する命を頂きながら私たちは生きているという事を子どもたちに伝えていきたいと思います。そして、この私たちも自然界の一部であり、頂く命をも互いに尊厳を持って守っていかねばならないという事を常に心にとめて、世界に目を向けていかれたらと願うばかりです。

(赤鬼こと山ア祐美子)

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