学校法人 聖愛幼稚園
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赤鬼からの手紙(2013年3月号)



『やまのぼり』
― ばばばあちゃんのおはなし ―


さとう わきこ/作・絵

福音館書店 / 発行

1,733円(税込)


   雪が沢山降って、冷たい風もぴゅーぴゅー吹き荒れた冬だけれど、足元を見ると雪の中から"ふきのとう"がちゃんと顔をのぞかせています。今年の春はのんびりゆっくりこちらに向かっています。空を見上げてお日様の光を確かめましょう、きっと温かさが変わってきているはずです。目を刺すほどに雪の白さを輝かせていた光も、ふんわりとまあるくなっていませんか?綿帽子を載せて厳しい寒さを耐えた山々を緑にしたり、花々を華やかに咲かせたり、春はお日様の力を改めて感じます。あらら、何だか賑やかな威勢のいい声が聞こえてきました。"やまのぼり"ですって、どんな山に登るのでしょうか・・・

「いよいよ はるだねえ。てんきもいいし やまのぼりでもするか」
こんな独り言を言ったのはばばばあちゃん。
これを聴いていた、こねことこいぬは
「さんせい さんせい」とさっそくお友達を呼びに行きました。
ばばばあちゃんが おべんとう もって、
すいとう もって、リュック しょって、おかしも少しと・・・
用意をはじめたら、つぎつぎにもりのみんながやってきました。
あめだま おもちゃ、えほんにたいこ、ボール、らっぱもいいな、
おなべに おさらに ばけつもいるぞ、テントもいるよ・・・・
あれあれ、何だか大変な事になってきました。
とうとう庭はみんなの持ってきた荷物の山ができてしまいました。
ばばばあちゃんは、あまりも荷物の多さにあきれてしまいましたが、
しばらく考えてパチンと手をたたきました。
ばばばちゃんは名案を思いついたのです。
「とおくに いかなくたって やまを こっちに つくっちゃえば いいじゃないか」
ええっ、どうやって・・・・みんなはびっくり!
でも、ばばばあちゃんは、平気な顔でみんなに家じゅうのカーテンを 持っておいでって・・・
いったい何がはじまるのでしょうか

   おなじみのばばばあちゃんシリーズの一冊です。作者のさとうわきこさんは「あたまをつかったちいさなおばあさん」という本を読んでとても楽しい気分になったそうです。負けず嫌いのさとうさんは、もっと元気なおばあさんを描いてみたいと思われてばばばあちゃんは誕生しました。"わたしのえがきあげたおばあさんは、殺しても死にそうもないようなフィーバーしたおばあさんだった。ハイカラなんてものじゃない。下町の落語長屋に出てくるかみさんを少々洋風にした、モダンババアモドキのがらっぱちばあちゃんが、ガキ大将になったような話になってしまったのである。"と福音館書店の紹介の中で語っておられるのを見つけて、なるほどなるほどって思いました。ばばばあちゃんの名前の由来も特別な意味があるわけではなく、宮沢賢治の童話に出てくる独特な繰り返し言葉の響きに魅せられていたさとうさんの中から、自然にわきあがってきたのがばばばあちゃんだったそうです。今では知らない人がいないくらいのおばあさんの代表になりました。ばばばあちゃんに出会うと、何だか勇気が湧いてくる、毎日が元気で楽しくなってくる、エネルギーの塊のようなばばばあちゃんです。 先だって世界最高齢の女性に大阪の大川ミサヲさんが認定されました。京都の男性木村次郎右衛門さんともども、男女ともに日本人が世界最高齢保持者になりました。日本はこんな誇り高いおじいさんおばあさんがいっぱいの長寿国です。「自分のことは何でも自分でする」がモットーだという114歳の大川さんもばばばあちゃんの一人なのかもしれません。私の母も、ちょっと似ていたような気がします。独りで車を運転して孫たちをあちこちに連れ出しては一緒に遊んでいました。楽しい事を考えるのが得意な人でした。私も母のようなばばばあちゃんになれたらいいなって思いながら、絵本を読み返しています。とはいえ、最後のページだけは真似したくはないですけどね!

(赤鬼こと山ア祐美子)


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