学校法人 聖愛幼稚園
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赤鬼からの手紙(2013年2月号)



『かみなりむすめ』

斉藤 隆介 / 作
滝平 二郎 / 画

岩崎書店 / 刊

1,260円

   今年の冬は、雪の降り出しが早めに来たような気がします。都会が雪に見舞われると交通網が遮断したり、慣れない足元に転んでしまう人など困難なニュースばかりが目についてしまいます。備えのある雪国でも多すぎる雪は危険を招くこともありますが、季節の確かなしるしを迎えられるのは喜ばしい事でもあります。ゴロゴロッ・・冬の雷を聴いた事がありますか?太平洋側に住む人にとって雷は夏の風物詩ですが、日本海側に住む人にとって、雷は「雪起こし」と呼ばれ、大雪が降る前兆としてなじみ深いものです。四季を持つ日本の空模様は、雲の上でかみなりさまがいろんな相談をしているのかもしれませんね。あら、雲の上からじっとこちらを見つめているかみなりの女の子がいます、何だか哀しそう・・・何があったのでしょうか。

 セッセッセ
 一に たちばな  ニに たつしぱて
 三に さがり藤  四に ししぼたん
 かみなりむすめの おシカが雲のざしきで
 雲のはしらを あいてに ひとりで セッセッセをしています。
 「たつしぱて」というのはなんのことかわかりません。
 雲のうえから村の女の子たちがあそんでいるのをみて
 まねておぼえただけだから「かきつばた」という花の名をまちがって
 おぼえてしまったのです。
 五つお山の 千本ざくら  六つむらさき ききょうにそめて
 「おら、村の子たちと、セッセッセを したァーい、
  セッセッセをしてあそびたァーい!」
 おシカはいつも、おっかあを困らせます。
 「いいか、いつも いってきかせてるとおり、おまえはかみなりの子だから
  下界の子とは おそべねえだ」
 ツノのあるおシカは下界の子どもらはこわがるからと、おっかあはいいます。
 それでもおシカは子どもらとあそびたくてたまりません。
 おシカは、みじかい髪をうえへかきあげるとツノをつつんでひもでしばりました。
 おっかあにきづかれないように にわの水まき台にのぼりました。
 そして、水まき台にあるジョーロの取っ手を下界へ傾け、
 雨の細引きをつたい下界に下りました。
 下界では「雨だ、雨だ!」と村の女の子たちはわいわい・・・
 「おらも、セッセッセのなかまいり させてくろ!」
 でも、女の子たちは誰も仲間に入れてくれません。
 おシカの目から涙あふれそうになった時、一人の男の子が声をかけてくれました。
 おシカはセッセッセができたのでしょうか・・・・


   2月は鬼の季節、今年はこの絵本にしました。 一目見たら忘れられない絵、それが滝平二郎さんの切り絵です。 日本の叙情を映し出す代表的な切り絵作家です。 ことに斎藤隆介さんとのコンビでは、数多くの作品を生み出し、民話を彷彿させる懐かしい内容は親しみやすく「モチモチの木」など教科書にも選択されました。 この「かみなりむすめ」は、娘を大切に育てる父と母の想いと心やさしい男の子、茂助の勇気とが、斎藤さんの丁寧な言葉で温かく伝わります。 おシカが「セッセッセ」にこだわったのはなんだろうかと思いながら読んでいます。 斎藤さんが「セッセッセ」に込めたのは、心を合わせるということではないでしょうか。 掌をちゃんと合わせるには相手の気持ちを想いながら合わせねばなりません。 ♪セッセッセ〜と声を合わせながら掌を合わせることで相手の掌の温かさも伝わってきて、優しい気もちになるような気がします。 おシカのほしかった遊びの中には日ごろ私たちが失いがちなものが潜んでいるように思います。 あらためて「セッセッセ」は素敵な遊びだと思いました。 言葉遊びとしても、日本中に、いや世界中にもいろんな「セッセッセ」があることでしょう。 あなたの「セッセッセ」はどんなですか?

(赤鬼こと山ア祐美子)

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