学校法人 聖愛幼稚園
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赤鬼からの手紙(2012年11月号)



『どろんこようちえん』

長崎源之助 / 文
梅田俊作 / 絵

童心社 / 出版

現在品切・あんぱんくらぶにあります。

   すっかり秋の真ん中です。空は高く澄みきって、あたりの山々も紅葉の化粧を始めました。何をするのも気持ちいのいい季節ですが、部屋の中にいるより外に出て体を動かすのが一番!散歩の時間もいつの間にか伸びているかもしれませんね。そうそう、遠足も待っています。今年はどんなところにいくのでしょう、体中がわくわくしてきますね。園の中からも、元気いっぱいの声がこだましています。あらら・・子供たちの笑い声にまじって、叫び声や泣き声、それにメエメエ、コケコッコー、ガアガア・・いろいろ聞こえてきますよ、どうも元気すぎるお友達がいるみたい・・・いったい何があったのでしょう・・・ 

やすしくんったら、ほんとうに らんぼうなんですよ。
くりのきの えだを ゆっさ ゆっさ ゆさぶったんです、
いがぐりが あたまにおちて、「いたたた・・・・」
みんな あたまを かかえちゃいました。
「ほんとに、もう・・・・」まさえちゃんが おこって いしを なげました。
みんなも まねして いしを なげました。
でも、やすしくんは へいちゃらです。やすしくんは さくらのきに とびうつって ターザンのまねをしながら、とびおりました。
あめあがりだったから、たまりません。
つるりとすべって しりもちついて、がけをころがっちゃった・・・
あれ、あれ、シャツもズボンもどろだらけ。
ゆりこせんせいは、「だいじょうぶ? けが なかった? つめたくない?」と声をかけました。
やすしくんは「なんの これしき へのかっぱ」です。
やすしくんは はなしがいになってる にわとりのあいだをかけぬけて、にわとりたちをおどろかせたり、やぎをつぎつぎにとびこえたり、いつもこんなふう。
なにがあってもないたりしません。せんせいが、すなばに みずをながしこんで どろんこをつくると、 まことくんはおだんごやさん、ともくんはハンバーガーやさん、やすしくんはトンネルづくり。
みんなそれぞれにどろんこあそびにむちゅうです。
こんどは やすしくんが あひるをつかまえようとしました。
やすしくんのらんぼうが わかっているかのように、あひるは ちっとも つかまりません。
そこへ のんこちゃんが あひるを ひょいとだきあげてしまいました。
やすしくんは「この あひる なまいきだ」と のんこちゃんのてから、あひるをとろうとしました。
あひるがギャア!となきました。
そして、あひるのくびが がくんと たれてしまったんです。
「ぎゃあ~~~ あ~~ あ~~」と のんこちゃんが ものすごいこえで なきだしました。
さて、あひるは、やすしくんは、いったい どうなってしまったんでしょうか・・・

   このお話は、横浜にある『安部幼稚園』を舞台に描かれました。現在も3千坪の敷地を有する自然豊かな環境の中で子供たちが園生活を過ごしています。作者の長崎源之助さんは昨年2011年4月3日に亡くなられました。87歳でした。今年4月の一周忌には、お仲間の作家の方々が集まり、幼稚園の側にあるお墓に集い、子供たちの賑やかな声が聞こえるなかで、長崎さんをしのばれたとのことでした。

   長崎さんの目は、いつも子供たちの一番近いところにあったように思います、作品の中で、子供たちが生き生きとありのままの姿で駆け回っています。長崎さんは、普段気付けないような子供たち一人ひとりの心根に迫り、作品を通して子供たちの真実を伝えて下さいました。いかに子供たちと同じ場所におられたかという事でもあります。私たちは、見ているようで見えていないことが沢山あります。私自身も何度も絵本の中にヒントを見つけながら、子供たちと接する事が出来ました。「どろんこようちえん」のやすしくんを見守るゆりこ先生が素敵です。らんぼうものとみんなから思われていても、ほかの子供たちを見るのと変わらぬ目線でやすしくんをあたたかく包みます。こういうなかで、やすしくんも他のお友達も人への想いを学ぶ事が出来ます。そして、絵本としては梅田さんの絵が、よりいっそう、お話に躍動感を与えてくれます。絵本の中で、子供たちは確かに笑って、泣いて、走って、生きています。【文・長崎源之助&絵・梅田俊作】は最強のコンビでした。コンビの新しい作品が2度と生まれないことが残念です。

   今回「どろんこようちえん」が、2001年3月から休版となっていることをはじめて知りました。改めて、出版社に確認しましたが再版の予定は未だにないようです。絵本は時として、何の前触れもなく、世に出回らなくなってしまう事があります。休版の理由はわかりませんが、「どろんこようちえん」が何とか再版される事を願うばかりです。

(赤鬼こと山ア祐美子)

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