学校法人 聖愛幼稚園
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赤鬼からの手紙(2012年7月号)



『おとなしいめんどり』

ポール・ガルドン / 作
谷川 俊太郎 / 訳
1,365円(税込) 童話館出版 / 発行


   梅雨に打たれ、色鮮やかに咲き誇った紫陽花が散ってしまうと、夏本番です。日ごとに強くなってくる陽射しを受けて、あちこちで朝顔が顔を出します。あら?!こんなところに朝顔ってあったかしら・・・いつの間にか庭先や路地裏につるが伸び始めていたりして、驚く事があります。コロコロとはじけた種を小鳥がここまで運んできたかしら・・お陰で夏の朝が、元気になるような気がします。鳥たちは元来働きものなのでしょうか、今回の主人公は、それはそれは働き者の"めんどり"のお話です。

むかしむかし ねこと いぬと ねずみと おとなしいあかいめんどりが
いごこちのいい ちいさないえに すんでいた。
ねこは いちにちじゅう ふわふわの そふぁーで ごろごろ。
いぬは いちにちじゅう ひあたりのいい うらのぽーちで うとうと。
ねずみは いちにちじゅう だんろのそばの あったかい いすで ぐうぐう。
うちのなかの しごとをするのは おとなしいあかいめんどり。
ごはんをつくり おさらをあらい べっどをととのえ
ゆかをはき まどをみがき ふくをつくろう。
おちばをあつめ しばをかり ざっそうをぬく。
あるひ ざっそうを ぬいていると こむぎの たねが みつかった。
"だれか このこむぎを まいてくれる?"おとなしいめんどりは さけんだ。
"いやだね"と ねこが いった。
"いやだよ"と いぬが いった。
"いやだな"と ねずみが いった。
"じゃ わたしが するわ"と おとなしいあかいめんどり。
こむぎが みのると おとなしいあかいめんどりは たずねた。
"だれか このこむぎを かりとってくれる?"
"いやだね"と ねこが いった。
"いやだよ"と いぬが いった。
"いやだな"と ねずみが いった。
かりとったこむぎをこなにして、さとうとみるくとたまごとばたーをまぜあわせて、
おーぶんへ・・・おとなしいあかいめんどりはぜんぶをひとりでやった。
おーぶんからおいしそうなにおいが・・・

さてさて、ねこといぬとねずみはどうなったでしょう・・・・

   絵本の原題は「Little Red Hen」となっています。谷川俊太郎さんは、「おとなしいめんどり」と訳されました。 「おとなしい」の言葉に、谷川さんの愛すべきめんどりへの敬意を感じます。 この絵本は、子供たちにお手伝いを促す意味合いで、多少教訓めいた意図で読み聞かせなどでも紹介される事が多いようですが、私の理解は少し異なります。 確かに−働かざる者食うべからず−は当然のことわざの内容もあるかと思います。でも、私は、谷川さんが「おとなしい」とあらわされた言葉の意味合いに、めんどりの日常の困難さを想います。 絵本の冒頭に「いごこちのいいいえ」とあります。めんどりは、自分の事は後回しにして、日々家族のために「いごこちのいいいえ」を目指して暮らしてきたのです。 ねこ、いぬ、ねずみはおかしを食べられることではなくて、めんどりの日常に想いを馳せなければなりません。 今の居心地の良さは、どこからきているのでしょう。 おかあさん、頑張り過ぎてはいませんか? 夏休みはお母さんも休みを取って下さいな。

(赤鬼こと山ア祐美子)

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