さわさわさわ・・・輝く緑の中、風のわたる声が聞こえてきます。小鳥たちのさえずりも賑やかさを増してきました。1年中で一番爽やかな季節が"五月"という人も沢山いるでしょう。五月は皐月(さつき)ともいいます。皐月の語源は「稲作の月」、早苗を植える月"早苗月"から"さつき"となったともいわれています。漢字の"皐(さ)"には、「神にささげる稲」という意味もあるそうです。青々と広がる水田が続く風景は、日本の最も美しい風景の一つでもあるような気がします。昔の人は、その日本の美しさをたった17文字に込めて表現しました。それが俳句です。しかも、今回は外国の絵本作家が、その素晴らしさを伝えてくれました。どんな風景が広がっているでしょうか、一緒に感じてみましょう。
朝やけが よろこばしいか 蝸牛 一茶
A red morning sky , For you, snail; Are you glad about it?
このあかく染まった朝の空 君のだよ かつむりくん うれしいかい?
春の日や 庭に雀の 砂あひて 鬼貫
A day of spring; In the garden, Sparrows bathing in the sand.
春の日 庭で すずめが 砂あそびしてる
稲妻に こぼるゝ音や 竹の露 蕪村
A Flash of lightning! The sound of dew , Dripping down the bamboos.
稲妻だ! 竹をすべりおちる 露の音
雲雀派と 蛙派と 歌の議論かな 子規
On how to sing, the flog school and the skylark school are arguing.
どっちが歌がうまいか かえるとひばりが はりあっている
キーツといえば、あの「ゆきのひ」や「ピーターのいす」を描いた人です。俳句に込められた世界を、素晴らしいコラージュで表現されました。17文字をキーツ自身が理解を深め、あらたにコラージュに組み立てていった作業過程が見えるような気がします。キーツはニューヨークの下町で生まれましたが、日本が大好きだったといわれています。1977年、キーツのファンだった、イシハラアキラ君という少年が事故で亡くなったのを知ると、キーツはわざわざ母親に会いに来日した、というエピソードがあります。そんなキーツの作品に、俳句の英文といぬいさんの訳も加わり、俳句がいまや「ハイク」としても海外の子供たちにも親しまれている事に誇りを感じます。昨今、日本の教育現場においても、改めて古典に目を向ける動きが出てきました。携帯電話やインターネットに普及によって通信手段は著しく変化していますが、この絵本によって、文字による日本人の持つ豊かな表現方法である俳句を今一度、改めて心に留めるきっかけになるやもしれません。ほら、なんだか一句詠んでみたくなってきませんか?
(赤鬼こと山ア祐美子)
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