学校法人 聖愛幼稚園
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赤鬼からの手紙(2012年4月号)



『じいじのさくら山』

松成真理子 / 作・絵
1,365円(税込) 白泉社 / 発行


   「はーるよ、こい、はーやく、こい・・・」空に向かって、歌いかけたくなるような日々が続いています。我が家の白モクレンも、昨年の今頃はもう満開でした。今年はやっと蕾がはじけ始めたところです。いつもなら順序良く咲き始める花々も、もしかしたら一気に咲き競うのかもしれません。息をひそめて春一番の風を待ちながら準備をしている花たち、きっとめったにない賑やかな春の訪れになることでしょう。

ぽっかりと はれた あおぞらのひ  じいじは いつも おれにいう
「ちびすけ さくらを みにいこう」  おれは いつも「うん」という
山のみちを ゆっくりあるく  さくら山まで もうすこし
さくら山の さくらの木
うれしいことが あるたびに  じいじは さくらを こっそり うえた
  おおきく そだった さくらの えだは もう そらにまで とどきそう
「こんなになるとは おもわんかった」
「じいじは すごいな」 おれがいう「なんも なんも」じいじが わらう
ひとつひとつの 木に さわり 木に あいさつをする じいじ・・・
くさや はなや むしのこと じいじは なんでも しっている
「じいじは すごいな」おれがいう 「なんも なんも」じいじが わらう
ぽたぽた 雪のふったひに じいじが びょうきに なりました
山のみちを ひとりで あるいて さくら山に ついた
「じいじを げんきに してください」 さくらの木に たのんだ
なんべんも なんべんも・・・・・・じいじは さくらにあえるでしょうか


   "桜並木プロジェクト"というのをご存じでしょうか。東日本大震災で起こった未曽有の大津波を決して忘れる事のない様に、津波到達最高地点に桜を植樹するという運動です。100年に1度は起こるかもしれないといわれる大津波、桜が満開の並木になるまでには沢山の時間を要するかもしれませんが、万が一の100年後の大津波の避難経路としても、子供たち、孫たちへと受け継がれ桜の花の力で人々の思いを繋げていきます。このお話を耳にしながら、桜の絵本を探していました。出会ったのが「じいじのさくら山」です。じいじは、うれしいことがあるたびに桜を植えてきました。でも、うれしい事ばかりではなかったかもしれないと、じいじの人生の中にある出来事を想いました。一つ一つの桜にじいじの日々が重なります。ちびすけの「じいじは すごいな」という言葉がそのことを物語っています。桜を守り続けていくじいじの生き方は、ちびすけにうけつがれて、やがて満開に咲き誇っていくことでしょう。じいじが目を細めて、ちびすけを見守る姿が目に浮かびます。松成さんの描く満開の桜の見事な事、見開きの桜のページに涙が出そうになりました。・・・「おみごと」じいじがいうので 「おみごと」おれもいう・・・私も「おみごと!!」と思わず叫んでいました。



(赤鬼こと山ア祐美子)

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