学校法人 聖愛幼稚園
〒400-0071
山梨県甲府市羽黒町618(地図
TEL 055-253-7788
mail@seiai.net



赤鬼からの手紙(2011年11月号)



『ぼくを探しに』

シルヴァンスタイン / 作

倉橋由美子 / 訳

講談社 / 出版

1,575円(税込)

   あたりの山々も色づき始めました。どんな事があろうと季節は確実にめくって、私たちを迎えてくれます。決して忘れることのない春や夏を超えて秋の気配がやってきています。葉っぱは色づきながらやがて散ってしまうけれど、その後には実りがあります。失うものがあればその分、得られるものもあります。紅葉の山々と同じような色とりどりの果物が店頭に並ぶと、一粒の種から育て上げた農家の方々のご苦労を想います。果物の宝庫でもある日本、今いちばん美しい季節が始まります。

何かが足りない
それでぼくは楽しくない
足りないかけらを 探しに行く
ころがりながら ぼくは歌う
 「ぼくはかけらを探してる
  足りないかけらを探してる
  ラッタッタ さあ行くぞ
  足りないかけらを探しにね」
かんかん照りあれば 涼しい雨も降る
雪でこごえたかと思えば またぽかぽかのお日和
なにしろぼくの体はかけていて あんまり速くはころがれない
それで立ち止まっては みみずとお話する この花はいい香り
かぶとむしを追いこしたり かぶとむしに 追いこされたり
こんな愉快なことはない どんどん進む 海を渡り
 「ぼくはかけらを探してる
  野超え海越え
  ランランラン ロンロンロン
  ぼくのかけらを探してる」
・・・・・・・・・・・とうとうあるひのこと・・・


   2008年11月号に「おおきな木」という絵本を紹介しました。 そのとき今回の「ぼくを探しに」をいつかご紹介しますとお伝えしていました。 心にいつもあったのですが、 やっとその時がきました。気が付いたらまた11月・・・絵本の"ぼく"がころころ転がって、ここへたどりついてくれたような気がします。 独特な風貌のシルヴァスタインの描く世界も独特です。米国音楽界の最高位でもあるグラミー賞を受賞するほどのミュージシャンでもあった彼の音楽性も絵本の中に発揮されています。 リズムのある詞とシンプルな線画きのイラストが絡み合って私たちをぐんぐん引き込んでいきます。 「自分っていったい何だろう」言葉にするとちょっと重たい気もちになりますが、絵本の「ぼく」は軽やかに転がり続けていく。 完全な人間なんていないけれど、分かっているけれど完ぺきなものを求めていきたい。 じゃあ、完ぺきなものってなんだろう・・・次から次へと問いかけが膨らみます。 こういう絵本は子どもには向かないのではないか、という方もいるかも知れません。 でも、あなたが気に入ったなら、そばに置いてやって下さい、絵本の方から子供たちに近づいてくれると思います。 そしてきっと、子供たちはあなたと同じ気持ちに気づくはずです。そういう力のある絵本です。

(赤鬼こと山ア祐美子)


戻る



Copyright © 2011, SEIAI Yochien.
本ページと付随するページの内容の一部または全部について聖愛幼稚園の許諾を得ずに、
いかなる方法においても無断で複写、複製する事は禁じられています。
mail@seiai.net